りくりゅうを金メダルに導いた「三位一体」 町田樹がフィギュア・ペアFSを解説

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りくりゅうペアはSP5位からの逆転で金メダルを獲得した 【写真は共同】

 ミラノ・コルティナ五輪のフィギュアスケートのペア・フリースケーティング(FS)が現地時間16日(日本時間17日)に行われ、 “りくりゅう”こと日本の三浦璃来/木原龍一組がFS歴代最高得点となる158.13点をマークし、合計231.24点で金メダルを獲得した。ジョージアのアナスタシア・メテルキナ/ルカ・ベルラワ組が221.75点で2位。ショートプログラム(SP)首位だった、ドイツのミネルヴァ・ファビアン・ハーゼ/ニキータ・ボロディン組が219.09点で3位となった。

 失意に落ちたSP5位から、りくりゅうが他を寄せ付けない圧巻の演技を見せた。ペア種目での金メダル獲得は、日本フィギュアスケート界初となる歴史的快挙。彼らはいかにしてこの偉業を成し遂げたのか。ソチ五輪の男子シングル5位入賞、現在は國學院大學准教授を務め、今大会の団体戦から男子シングルまでを現地ミラノで解説した町田樹さんに分析してもらった。

塗り替えられた複数の歴史

 今回のりくりゅうペアの金メダルは、単なる1勝以上の意味を持つ、複数の歴史を塗り替えるものでした。第一に、FSで記録した158.13点というスコアは、歴代最高得点を更新するもの。これは名だたるペアの、アナスタシヤ・ミーシナ/アレクサンドル・ガリャモフ組(157.46点)や隋文静/韓聡組(155.60点)をも上回る、まさに歴史的な数字です。

 第二に、言うまでもなく、日本のペア史上初となる五輪メダル、それも金メダルという点です。これまでシングル種目では多くのメダリストを輩出してきた日本フィギュアスケート界において、カップル競技は長年、世界の分厚い壁の前に阻まれ続けてきました。それをついに打ち破り、頂点に立ったことの意義は計り知れません。

 そして第三に、彼らはこの五輪タイトル獲得によって、競技キャリアを通じて主要国際大会をすべて制覇する「ゴールデンスラム」を達成したことになります。五輪、世界選手権、四大陸選手権、グランプリファイナル。これらすべてを制したスケーターは極めて少数であり、りくりゅうペアが世界のトップに君臨する存在であることをあらためて証明したと言えるでしょう。これら三つの偉業は、彼らが一夜にして成し遂げた単なる勝利ではなく、長年の努力と研鑽が結実した金字塔なのです。

「完全無欠」の演技を支えた技術的優位性

FSでは技の「出来栄え点」が大きく加算されていた 【写真は共同】

 りくりゅうペアがFSで歴代最高得点をたたき出せた要因は、その「完全無欠」と評される演技の質にあります。FSの上位陣の中で、ほぼ完璧な演技を披露したのは、りくりゅうペアと4位に入ったハンガリーのマリア・パブロワ/アレクセイ・スビアチェンコ組の2組だけでした。このノーミスの遂行能力こそが、大舞台で勝敗を分ける決定的な要素となったのです。

 りくりゅうペアの演技を技術的な側面から分析すると、まず「スケーティングの質」が群を抜いていることが挙げられます。他のペアと比較して、滑りの速度そのものが一段階違うだけでなく、高難度のリフトやスロージャンプといった技を実施する際にも、そのスピードがほとんど損なわれません。この驚異的な推進力と技のシームレスな連続性は、彼らのスケーティング技術が世界随一であることの証左です。

 その質の高さは、プロトコル(採点表)にも明確に表れています。技の基礎点であるベースバリューの62.50点に対し、出来栄え点(GOE)で実に20点以上もの加点を獲得しているのです。これは基礎点の30%以上を上乗せで稼ぎ出している計算になり、いかに一つひとつの技のクオリティが高く評価されたかを示しています。ジャッジ全員がプラスのGOEを付け、中には満点を与える者もいたという事実は、彼らの技術が疑いようのないレベルにあることを物語っています。

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