「I LOVE IT…」会場が魅了された“マックツイスト” 男子HP銅メダル・山田琉聖インタビュー

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山田琉聖は独自のスタイルで銅メダルを獲得した 【写真は共同】

 史上最高レベルとも言える壮絶な接戦だった。完成度が高くても得点が伸びない場面があり、わずかな乱れが命取りにもなる。ミラノ五輪スノーボード男子ハーフパイプ決勝は、最後まで表彰台の行方が読めない緊張感に包まれていた。

 そのなかで、観客の視線を引きつけたのが、銅メダルを獲得した山田琉聖(19)だった。高回転一辺倒の流れとは異なる、これまでに“見たことのない”構成やスタイリッシュな技を次々と繰り出し、会場ではたびたび歓声が上がった。今回の彼の滑りをきっかけに、ファンになった人も少なくないだろう。

 決勝から2日後の現地時間2月15日、山田はスノーボードの会場だったリビーニョからミラノ市内へ夜行バスで移動した直後だった。十分な睡眠を取れていない状態にもかかわらず、単独インタビューに応じてくれた。

銅メダルの実感と“複雑”な感情

 まず、銅メダルを獲得した気持ちを尋ねると、山田は“複雑だった”と振り返った。

「表彰台に立った時は、嬉しい気持ちもありつつ、2本目と3本目のランが決められなかった悔しい気持ちがあって、複雑な感情でした。今は落ち着いてきて、いろんな方からメッセージをいただいて『本当にメダルをとってよかった』という気持ちになれました」

 この“複雑さ”の背景には、同じ日本勢で4位に終わった平野流佳の存在もあった。

 山田は銅メダル獲得後、平野について「自分は流佳くんが1位に立つんじゃないかと思っていた」と漏らしている。その言葉の真意を尋ねると、山田は静かに続けた。

「流佳くんのルーティンは、この五輪で1番2番を争えるルーティンだったと思います。たぶんみんなが『なんであんなに点数が伸びなかったのか?』と思ったはずです。流佳くんのこともあって、表彰台にあがるときに複雑な気持ちはありました」

 自分自身が“決めたい”ルーティンを決め切れなかった悔しさ。加えて、平野の完成度を思えばこそ湧き上がった感情。表彰台に立った瞬間の心境は、単純な喜びだけでは語り切れなかった。

 平野とは同部屋だった。

「なんて声をかけようかとずっと考えてたんですけど、部屋に帰って流佳くんに会ったら、流佳くんはいつも通りに接してくれました。特別な言葉はいらなかった。『今日どうだった?』とか、本当にいつも通りの会話ができました」

 山田の言葉からは、同じチームとしての距離感と、互いを理解する空気が伝わってきた。

“人と被らない”を貫く理由

 予選後、山田は「自分が大切にしている技は曲げたくない」と話していた。決勝でも、その姿勢は変わらなかった。象徴的なのがマックツイストで、会場MCも思わず「I LOVE IT…」と呟いた。なぜそこまで“自分のスタイル”にこだわるのか。

「“人と被らない”ルーティンを今までずっとやってきています。原点はスノーボードを本当に楽しい気持ちでやっていること。そのなかで、本当に自分が好きな技だったり、好きな構成を大会で出すということに、意味があると思っています」

「(スイッチ)マックツイストは回転自体は1回転半なんですけど、それを入れた構成で戦っていけることを考えることが一番のこだわりです。それが“独創性”と言われる自分のルーティンにつながっていると思います」

 一番好きな技を問うと、少し考えたあと、こう答えた。

「一番思い入れもあるので、マックツイストかな。初めて骨折したのもマックツイスト。北海道で育ってきて、先輩方のマックツイストを見てきて、やりたいと思ったんです。特別、この人のマックツイストが好きというのはなくて。いろんな人のマックツイストを見てきて、自分の形にしたのかなと思います」

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