フリーでの逆転へ、りくりゅう最大の武器と勝機 町田樹がフィギュア・ペアSPを解説
りくりゅうは得意とするリフトのミスが響いた。現世界王者としてFSでの巻き返しを狙うが、ソチ五輪の男子シングル5位入賞、現在は國學院大學准教授を務め、今大会の団体戦から男子シングルまでを現地ミラノで解説した町田樹さんは、彼らの演技をどう見たのか。日本勢への期待、FSの展望について解説してもらった。
「ミスした者が負ける」緊迫のSP
このようなハイレベルな戦いの中で、ほぼ完璧な演技を見せたドイツのハーゼ/ボロディン組が首位に立ったのは、必然的な結果だったのかもしれません。一方で、優勝候補の筆頭と目されていたりくりゅうペアや、ジョージアのアナスタシア・メテルキナ/ルカ・ベルラワ組といったトップ層に若干のミスが出たことが、順位を分ける結果となりました。
りくりゅう、得意のリフトで珍しいミス
放送の解説をしていた高橋成美さんの言葉を借りれば、木原選手がリフトで三浦選手を上げた瞬間の二人のタイミングが合わず、姿勢を変更する転換点でミスが生じ、三浦選手が落ちてきてしまったようです。リフトはジャンプやスロージャンプとは異なり、通常は安定して得点を稼ぐ要素です。私自身、彼らのリフトでのこのようなミスは初めて見ました。
このミスの代償は、得点という形で明確に表れました。団体戦のSPで彼らがリフトで獲得した点数は、高いGOE(出来栄え点)を含め9.90点でした。しかし今回は、レベルを取りこぼした上にGOEもマイナスとなり、3.90点にとどまっています。その差は実に6点。もしこの失点がなければ、首位のハーゼ/ボロディン組の点数に迫っていた計算になります。もちろん「たられば」の話ではありますが、この一つのミスがいかに大きな失点となったかが分かります。
キス・アンド・クライで木原選手がうなだれていた姿は、この一戦に懸ける並々ならぬ思いの表れでしょう。しかし、彼はチームジャパンを引っ張る頼れる兄貴分です。ペアという、時に脳振とうや救急車で運ばれるレベルのケガも起こりうるフィギュアスケートで最も危険な競技において、男性が精神的・肉体的に安定していることの重要性を、彼自身が誰よりも理解しているはずです。FSでは必ず気持ちを立て直して、再び最高の舞台に立ってくれると信じています。
アイスダンサーの雰囲気をまとうドイツペア
彼らは何か一つの要素が突出しているわけではありません。しかし、全ての要素がトップレベルであり、能力のバロメーターが綺麗な円を描くように、均整の取れたオールマイティーなカップルです。優勝候補の筆頭格として、その実力を遺憾なく発揮したと言えるでしょう。
また、3位に食い込んだカナダのリア・ペレイラ/トレント・ミショー組の躍進は、少し予想外の展開でした。しかし、その演技内容は賞賛に値します。彼らは今回、出場した全カップルの中で唯一、SPの全要素で最高のレベル4を獲得しました。トップレベルの戦いでは、0コンマ数点の差が順位を分けます。その差を確実にものにするためには、こうしたレベルの取りこぼしをしないという細かな部分が極めて重要になるのです。彼らはそれを完璧に遂行し、表彰台を狙える位置につけました。