初代王者を目指した日本勢、「風」に苦しみメダル逃す 竹内択が語る女子ラージヒル特有の難しさとは

田中凌平

競技後の取材対応中、北京五輪からの4年間を振り返って感謝の涙を流した高梨 【写真は共同】

 現地時間2月15日夜(日本時間16日早朝)、今大会で「五輪初採用」となったスキージャンプ・女子ラージヒルが行われた。初代王者を目指した日本勢では、ノーマルヒルで銅メダリストとなった丸山希(北野建設)が最上位の8位。伊藤有希(土屋ホーム)が14位でこれに続き、勢藤優花(オカモトグループ)は15位、高梨沙羅(クラレ)は16位となった。表彰台の中央に立ったのはアンナオディネ・ストロム(ノルウェー)で、今大会のノーマルヒルに続く個人2冠を達成している。

 やや強めの追い風というコンディションで行われた女子ラージヒル。その風に対応しきれず伸び悩んだ選手が多い中、ノルウェー勢は1本目から上位4人を占めるなど実力を発揮した。1本目で130.5メートルのジャンプを見せて2位につけたストロムは、2本目も132.0メートルをマークして金メダルをつかんだ。2位は同じくノルウェーのアイリンマリア・クバンダル。優勝候補と目されていたニカ・プレブツ(スロベニア)が3位でこれに続いた。日本勢は1本目から追い風に苦しみ、メダル争いに加わることができなかった。

 スキージャンプではテクニックだけでなく運も必要であり、常に変わる風との戦いも制した者がメダルをつかむことができる――。そう強く感じさせる、女子ラージヒルの試合だった。高梨が飛ぶ直前から急に追い風が強まった1本目を見て、環境に対応する難しさ感じた人も多かっただろう。バンクーバー、ソチ、平昌と3度の冬季五輪出場を果たし、現在はスキージャンプ界で初の「プロアスリートチーム」を率いる竹内択さんに、追い風の中での戦い方や、女子ラージヒルという種目の難しさを解説してもらった。

急な強風に苦しんだ高梨、ジャンプで勝つには運も必要

直前に強くなった向かい風の影響を受け、1本目は114メートルと不本意な結果に終わった高梨 【写真は共同】

 今日は追い風傾向なだけでなく、タイミングによって風の強弱にも変化が見られましたね。前日の公式トレーニングでは、今日とは違い向かい風でした。向かい風の場合、板に当たる風のプレッシャーが強くなるので、追い風よりも前傾姿勢を保ちやすくなります。逆に追い風の時に同じジャンプをすると体重が前にかかってしまい、うまくバランスを取れません。そのため今日は前日と飛ぶイメージを変えて臨む必要があり、まさにそこが勝敗を分けたポイントだったと思います。

 特に、高梨選手の1人前のニカ・ボダン選手(スロベニア)の順番あたりから急に風が強くなりました。10人くらい前の選手が飛んでいる時点であればモニターを見て数字でコンディションを確認できますが、直前だと選手は実際の風を把握できません。しかも「風速計がある位置」と「選手が実際に飛ぶ位置」では風に多少の違いがあり、局所的に突風が吹くケースもあります。

 経験豊富な高梨選手でさえ、1本目の記録を伸ばしきれなかった。このことからも、風に対応するのがいかに難しいか分かるでしょう。こういった日があることは本人としてもよく分かっているはずですが、そうは言っても4年に一度の五輪。悔しい気持ちはあったと思います。それでも2本目は1本目を払拭するような美しいジャンプでした。

 今日の1本目を除いて、高梨選手はワールドカップや公式トレーニングでも安定したジャンプを見せています。男子の小林陵侑選手と同じように、高梨選手も結果を強く求められる選手です。ワールドカップ通算63勝の実績がもたらす強い期待感とプレッシャーの中で、「自分らしいジャンプ」を披露できる点は彼女の強みと言えます。

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著者プロフィール

東京都出身。フリーライター。ラグジュアリーブランドでの5年間の接客経験と英語力を活かし、数多くの著名人や海外アスリートに取材を行う。野球とゴルフを中心にスポーツ領域を幅広く対応。明治大学在学中にはプロゴルフトーナメントの運営に携わり、海外の有名選手もサポートしてきた。野球では国内のみならず、MLBの注目選手を観るために現地へ赴くことも。大学の短期留学中に教授からの指示を守らず、ヤンキー・スタジアムにイチローを観に行って怒られたのはいい思い出。

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