好調の二階堂、ラージヒルは悔しさの残る「銀」 肉眼では分からない“誤差”の明暗を竹内択が解説

田中凌平

小林陵侑のジャンプに見る、ラージヒルで距離を伸ばす鍵

2本目で138.5メートルを記録した小林。スーパーチームでのジャンプにも期待が高まる 【写真は共同】

 小林選手は周囲からのメダルの期待がとても高い中でのジャンプでした。1本目ではアプローチで少しお尻が下がって踏み切り時の力が逃げているように見えましたが、2本目はそれを払拭するかのような完成度でした。本人も手応えをつかんだようですし、重要な試合ほどパフォーマンスが上がる強心臓の持ち主なので、次のスーパーチームで最高のジャンプを期待したいところです。

 そんな小林選手のジャンプの特徴は、空中でV字になるまでの速さ。ノーマルヒルではテレマークが勝敗を分けるポイントになりましたが、滞空時間が長いラージヒルでは板の向きや脚の開き具合、手の位置などを調整する「空中でのテクニック」も距離を伸ばす鍵になります。

 そして、その空中につなげるためのアプローチも距離を大きく左右する要素と言えます。プレブツ選手のように上半身を起こさないで踏み切る選手もいれば、小林選手のように上半身を少し起こしつつ腰をやや前に入れる形でバランスを取る選手もいます。理想のアプローチ、理想の空中スタイルは人によってさまざま。そのため選手たちは、自身の骨格や体幹などに最適なやり方(=黄金比)を模索し続けているんです。

「安定」の日本代表、スーパーチームでは金メダルの有力候補

134.5メートルのジャンプを披露した2本目の直後、中継カメラに手を振る中村 【写真は共同】

 中村選手は16位でしたが、この五輪に向けて調整してきたことが発揮できていると感じました。公式トレーニングで飛ばないことを選択するケースもあることから、おそらく自分の中で良いイメージが固まっているのでしょう。五輪特有の緊張感からいつもの実力が発揮できない選手も多い中、安定したパフォーマンスを出せているのは中村選手の強さであり魅力です。

 特に今日は、1本目の開始前から雨が降っていました。雨によってレールの状態も変わってきますし、ゲートを出てからの初速にも違いがあります。視界が見えづらくなることも含め、練習時との感覚のズレが気になる選手もいるでしょう。そういった中で安定したパフォーマンスを披露できた点は価値があります。

 男子ラージヒルを見て、あらためてスーパーチームでは日本の金メダルの期待が高まりました。これは自国だからそう言っているわけではありません。客観的に見ても日本は有力候補です。二階堂選手にはラージヒルでの悔しさを晴らして金・銀・銅メダルを1つの大会でコンプリートしてほしいですし、小林選手には2本目で見せてくれたジャンプの勢いをそのまま保ってほしいですね。

 経験と実績のある小林選手はすでに自分のスタイルを確立していて、彼に憧れる人も多くいます。そこにキャラクターの違う二階堂選手が台頭してきたことで、スキージャンプ界にはまた違った層のファンが増えるでしょう。より幅広い人がスキージャンプに興味を持ってくれるのはとても良いことですし、この五輪をきっかけにジャンプ界がいっそう盛り上がることを期待します。

竹内択(たけうち・たく)

【© team taku】

1987年、長野県飯山市生まれ。10歳の時に見た長野五輪に衝撃を受け競技キャリアをスタート。中学卒業後に単身フィンランドへわたり、3年間ジャンプ留学を経験。19歳の時に全日本選手権で初優勝を飾ると、五輪にはバンクーバーから3大会連続で出場。2014年のソチ五輪団体で銅メダルを獲得した。最高飛行距離は240m。スキージャンプ界で初のプロアスリートチーム「team taku」を率いる。

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著者プロフィール

東京都出身。フリーライター。ラグジュアリーブランドでの5年間の接客経験と英語力を活かし、数多くの著名人や海外アスリートに取材を行う。野球とゴルフを中心にスポーツ領域を幅広く対応。明治大学在学中にはプロゴルフトーナメントの運営に携わり、海外の有名選手もサポートしてきた。野球では国内のみならず、MLBの注目選手を観るために現地へ赴くことも。大学の短期留学中に教授からの指示を守らず、ヤンキー・スタジアムにイチローを観に行って怒られたのはいい思い出。

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