好調の二階堂、ラージヒルは悔しさの残る「銀」 肉眼では分からない“誤差”の明暗を竹内択が解説

田中凌平

ノーマルヒルと混合団体の銅に続き、ラージヒルで銀メダルを獲得した二階堂。1本目を終えて優勝が見えていただけに、悔しい結果となった 【写真は共同】

 現地時間2月14日夜(日本時間15日早朝)、ミラノ・コルティナ五輪のスキージャンプ・男子ラージヒルが行われた。日本代表では二階堂蓮(日本ビール)が2位に入り、五輪初出場にして今大会3つ目のメダルを獲得。得意のラージヒルでメダルが期待された小林陵侑(チームROY)は6位、中村直幹(フライングラボラトリー)は16位となった。

 この日の二階堂は1本目から140.0メートルの大ジャンプを披露し、154.0点をマーク。優勝候補のドメン・プレブツ(スロベニア)が138.5メートルで147.0点だったため、1本目を終えた時点でトップに立った。しかし、2本目でプレブツが141.5メートルのジャンプで154.8点を記録。二階堂は直後に136.5メートルを記録したものの141.0点にとどまり、逆転優勝を許す結果となった。メダル獲得が期待された小林は1本目で11位と出遅れたが、2本目で138.5メートルのジャンプを見せ、最終的に6位まで順位を上げている。

 ノーマルヒル、そして混合団体と、日本代表のメダル獲得が続いているスキージャンプ男子。二階堂は1本目が高得点だっただけに直後のインタビューでは悔しさをにじませたが、次のスーパーチームへの期待感も高まる試合だったと言える。バンクーバー、ソチ、平昌と3度の冬季五輪出場を果たし、現在はスキージャンプ界で初の「プロアスリートチーム」を率いる竹内択さんに、男子ラージヒルで見られた「明暗」を振り返ってもらった。

「テクニックではない部分」で金と銀の差は生まれた

1本目のビッグジャンプ直後、興奮した表情を見せた二階堂 【写真は共同】

 二階堂選手はトレーニングから調子が良く、その勢いを本番でも見事に発揮してくれました。特に1本目は、他を寄せ付けない完璧に近いジャンプだったと思います。2本目が思ったほど伸びず、金メダルを逃してしまった印象はありますが、そうは言っても彼は五輪初出場。今大会で3つ目のメダル獲得はとても素晴らしい結果です。

 五輪期間中の二階堂選手を見ていて感じるのは、アプローチ(助走)の安定感です。スキージャンプでは、スタートゲートから降りて平らになるところで体重の半分ほどのG(重力)がかかるのですが、そこでバランスを崩すと踏み切り時に力が地面に伝わりません。二階堂選手はそこでのブレが非常に少ない選手。2本目についてはアプローチでミスがあった可能性もありますが、肉眼では分かりませんでした。もしかしたら、金メダルが“見えた”ことによる力みがあったのかもしれません。

 優勝したプレブツ選手は、五輪に入ってからワールドカップのような圧倒的なジャンプを見せられていませんでした。しかし、前日の公式トレーニングで明確に何かをつかんだのでしょう。特に今日の2本目は「これぞプレブツ」というほど圧倒的で、ジャンパーの私から見ても羨ましいくらいきれいなジャンプでした。

 プレブツ選手の特徴は、唯一無二の低い姿勢から繰り出される「長い踏み切り」。時間にするとほんの一瞬なのですが、彼の場合は他の選手よりも踏み切りの時間がわずかに長いんです。だから、地面に踏み込む力が伝わる。これは、トップレベルの選手でもなかなかできません。

 ここまでハイレベルになると、メダルの色を分けた要因はテクニックではなくメンタルなのだろうと思います。追いかけるしかないプレブツ選手の思考は極めてシンプル。それに対し、逃げる立場の二階堂選手には「7点」というアドバンテージがありました。そのせいで、少しだけ金メダルを意識しすぎてしまったのかもしれません。

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著者プロフィール

東京都出身。フリーライター。ラグジュアリーブランドでの5年間の接客経験と英語力を活かし、数多くの著名人や海外アスリートに取材を行う。野球とゴルフを中心にスポーツ領域を幅広く対応。明治大学在学中にはプロゴルフトーナメントの運営に携わり、海外の有名選手もサポートしてきた。野球では国内のみならず、MLBの注目選手を観るために現地へ赴くことも。大学の短期留学中に教授からの指示を守らず、ヤンキー・スタジアムにイチローを観に行って怒られたのはいい思い出。

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