悪夢の4分間も...演技後にマリニンが見せた風格 メダリストの鍵山・佐藤は敬意を示す
マリニン「オリンピックのプレッシャーは、本当に辛い」
「良い気持ちではありませんし、何が起こったのか正確に理解しようとしています。でも、もう終わってしまった。結果を変えることはできません。私の人生には浮き沈みがたくさんありましたが、あの瞬間、すべてが手に負えないほどでした。正直、どう対処すればいいのか分からなかったんです」
「オリンピックのプレッシャーは、本当に辛いです。オリンピックには呪いがあると言う人もいます。金メダル候補の選手は、オリンピックでいつも滑るのが下手になると。そういうことが起こるんです」
ショート首位で最終滑走者として登場したマリニンは、冒頭の4回転フリップを綺麗に決めた。しかし、次に予定していた彼にしか跳べない4回転アクセルは、回転が抜けて1回転になってしまう。続く4回転ルッツを成功させて立ち直ったようにみえたが、今度はマリニンにとっても難しい4回転であるループが2回転に。後半に入り、得意なはずの4回転ルッツで転倒。4回転トウループからの3連続ジャンプは決めて励ますような大歓声があがる中、4回転を予定していたサルコウは2回転になり2度目の転倒。演技を終えたマリニンは、今にも泣き出しそうに顔をゆがめた。
昨年12月に名古屋で行われたグランプリファイナルのフリーで、アクセルを含む6種類7本の4回転を成功させたマリニンの演技は、鳥肌が立つような迫力に満ちていた。「4回転の神」という呼び名通りの滑りを完遂したマリニンはそのまま五輪も制すると思われたが、ミラノでは誰も想像しなかった衝撃が待っていた。常に想像を超える挑戦をすることで新たなフィギュアスケートを見せてきたマリニンだが、初めての五輪で魔物の餌食になってしまった。
演技直後は21歳の若者らしい動揺を見せていたマリニンだが、その後は優勝したミハイル・シャイドロフ(カザフスタン)にハグを求めるなど、風格ある振る舞いをみせた。
「この出来事から学んだことを踏まえて、将来に向けて何をしたいのか、どのように物事に取り組むのかを変えたり、決めたりする必要がある」
ミラノでの悪夢のような4分間を、マリニンは自らの糧にしようとしている。
「夢なのかな」佐藤が無心でつかんだ銅メダル
「正直ものすごく悩んで、昨日もう全然寝られなくて『どうしよう、どうするべきか』って考えて。ただ、全く練習もしていないのもありますし、フリップでエッジの部分も気になる部分もあるということで。(日下匡力)先生とも相談して『駿の思った通りにやればそれが正解だ』と言ってくれたので、『もう、団体のいいイメージをそのまま持っていこう』と思って、今までの構成でいくことにしました」
構成を考える際、メダルのことは考えなかったという。
「正直、メダルよりも、自分が笑顔で、見に来てくださるファンの皆さんにいい演技を届けたいというような思いでやろうと思っていたので。本当にメダルのことは全く考えていなかったです」
今まで磨いてきた構成でフリーを滑ると決めた佐藤は、冒頭の4回転ルッツを皮切りに次々とジャンプを成功。最後の3回転ルッツを除くすべてのジャンプには加点がつき、総合3位で銅メダルを獲得した。
「ほんとに信じられない気持ちですし、夢なのかなというふうに思っています」
「マリニン選手の演技はどういう気持ちで見ていたか」と問われた佐藤は、「本当に珍しいなと思って見ていました。今シーズン、全くミスがなかったので」と答えた。
「やはり団体と個人、過密なスケジュールでやっているというのもあったのかなと思うんですけど、その中でもしっかりと4回転アクセルに挑もうとする部分は本当にすごいなと思いましたし、マリニン選手のおかげで自分たちもここまで来られているので、これからもマリニン選手に追いついていけるように頑張りたいと思います」