“世界初”連発の激戦を制した戸塚優斗が金 新たな可能性も見えた男子ハーフパイプを野上大介が解説

田中凌平

男子ハーフパイプ決勝の3本目を終え、笑顔を見せる銅メダルの山田琉聖(左)と金メダルの戸塚優斗(右) 【写真は共同】

 現地時間2月13日夜(日本時間14日早朝)、スノーボード・男子ハーフパイプの決勝が行われた。ハイレベルなトリックの応酬を経て、戸塚優斗(ヨネックス)が金メダルを獲得。山田琉聖(JWSC)が銅メダルを手にし、2人の日本人選手が表彰台に立つ結果となった。2度目の五輪出場となる平野流佳(INPEX)は4位。前回の北京五輪で王者に輝いた平野歩夢(TOKIOインカラミ)は、骨折から27日という難しいコンディションの中で7位に入る滑りを見せた。

 この日は、1本目終了時点で上位3名を山田、戸塚、平野流佳の日本勢が独占する滑り出しとなった。その後、2本目で戸塚が95.00点と圧巻のパフォーマンスで首位に浮上。優勝候補のスコット・ジェームズ(オーストラリア)が93.50点の滑りを披露するもトップには手が届かず、戸塚が3度目の五輪で悲願の金メダルをつかみ取った。山田は高い独創性で1本目と3本目に92.00点をマークし、初出場の五輪で3位に輝いている。

 五輪直前に骨盤などを骨折、そのわずか27日後に決勝の舞台へ臨んだ平野歩夢は、2本目で86.50点をマーク。メダル獲得とはならなかったが、日本の男子スノーボード界を牽引する存在として多くの人に勇気を与える滑りを披露した。複数ブランドの契約ライダーとして活躍し、現在はスノーボード専門メディア「BACKSIDE」の編集長を務める野上大介さんに、見どころの多かった決勝での戦いを総括してもらった。

金メダルの戸塚優斗は、想像を絶する滑りを見せた

圧巻の滑りを披露した戸塚。ジェームズに勝つには、より高度なルーティンに変える必要があった 【写真は共同】

 私は五輪前から、「男子ハーフパイプでは世界初の技が複数出る」と予想していました。決勝では実際にそうなりましたが、それにしても想像以上でしたね。単体の技で世界初が出るだけでなく、ルーティン(技の構成)でも世界初が見られるという、非常にレベルの高い試合になりました。

 その中でも群を抜いて驚きだったのが、戸塚選手の滑りです。実は以前から、戸塚選手は「スイッチバックサイドで入るルーティンが一番好き」と言っていました。しかし、2026年1月のラークス・オープンでジェームズ選手がスイッチバックサイドダブルコーク1440(通常とは反対のスタンスで、進行方向に対して背中側に縦2回転、横4回転)を披露、X Gamesではさらにそこからバックサイドダブルコーク1440(通常のスタンスで、進行方向に対して背中側に縦2回転、横4回転)のトリックにつなげたこともあり、本大会でその彼に勝つにはルーティンを変える必要がありました。

 そこで戸塚選手は、おそらくこの1カ月以内に仕上げたであろう、今まで見たことのないルーティンを披露しました。95.00点をマークした2本目では、1ヒット目と2ヒット目でトリプルコーク1440(縦3回転、横4回転)を組み込み、見事に成功させています。トリプルコークの連続は、ラークス・オープンで平野流佳選手が挑戦したのがハーフパイプ史上初のこと。これほど難易度の高いルーティンを短期間で作り上げたなんて本当に信じられません。

 それにとどまらず、戸塚選手は2ヒット目のフロントサイドトリプルコーク1440(進行方向に対して腹側に縦3回転、横4回転)で通常とは反対のスタンスで着地した後、バックサイドアーリーウープ(進行方向と反対の背中側へ回転しながら着地する技)を入れました。アーリーウープは減速しやすいので、戸塚選手がこの技を入れたことも驚きです。

 しかし、そこから続けて4つの回転方向の中でも最高難度と言われるスイッチバックサイドダブルコーク1080(通常とは反対のスタンスで、進行方向に対して背中側に縦2回転、横3回転)を繰り出した。もはや、何と言っていいか分かりませんね。3本目ではここで4回転にも挑戦していて、我々の想像を超えたランを見せてくれました。

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著者プロフィール

東京都出身。フリーライター。ラグジュアリーブランドでの5年間の接客経験と英語力を活かし、数多くの著名人や海外アスリートに取材を行う。野球とゴルフを中心にスポーツ領域を幅広く対応。明治大学在学中にはプロゴルフトーナメントの運営に携わり、海外の有名選手もサポートしてきた。野球では国内のみならず、MLBの注目選手を観るために現地へ赴くことも。大学の短期留学中に教授からの指示を守らず、ヤンキー・スタジアムにイチローを観に行って怒られたのはいい思い出。

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