「アイスの読み」のわずかな遅れが分けた明暗 カーリング女子の黒星発進を石崎琴美が解説
今大会、日本代表として出場しているのは、12年ぶりに五輪の切符をつかんだチーム「フォルティウス」。日本のカーリング女子は、藤澤五月がスキップを務める「ロコ・ソラーレ」が18年平昌で銅メダル、22年北京で銀メダルを獲得しており、3大会連続の日本女子のメダルが期待されている。
初戦のスウェーデン戦は滑り出しこそ良好だったものの、相手のビッグエンドやスチールで、4点ビハインドに。そのまま追いつくことができず、第9エンドでコンシード(相手の勝ちを認め、試合を終わらせること)となった。続くデンマーク戦も連続スチールを許すなど一時3点差をつけられたが、終盤の追い上げで延長戦に。しかし、相手のショットが上回り、初勝利を飾ることはできなかった。
初日で流れを引き寄せられなかった要因はどこにあったのか。また、今後の浮上のポイントはーー。3度の五輪出場、ロコ・ソラーレではフィフスとして北京銀メダルに貢献し、現在は解説者として活躍している石崎琴美さんに、フォルティウスの初日の出来やチームの雰囲気について話を聞いた。
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日本を翻弄した「氷の変化」勝負を分けた適応力
大舞台の初戦はどの競技でも難しいと思いますが、カーリングではまず「アイスをどれだけ読めるか」が立ち上がりの大きなポイントとなります。アイスの状態は常に一定ではなく、同じ会場でも日や時間によって違いますし、さらには試合中も刻一刻と状況が変わるんです。実際にストーンが滑ったところは速くなったり、そうでないところは重かったりします。スウェーデン戦の勝負の分かれ目のひとつは、「アイスの変化への対応の早さ」だったと思っています。
具体的には、スウェーデンが3点を奪った第4エンド。スキップの吉村紗也香選手の1投目で、相手のストーンの前に付けたいのに、ウェイトが少し強くなり、自分のストーンが外にずれて相手が動かせる位置になってしまった場面がありました。その隙を相手スキップが見逃さず、次のショットでワンツーを作りました。アイスの読みとラインコール、力加減、スイープのかけ方、全てがかみ合ってこそ生まれた、素晴らしいショットでしたね。
日本のショットの精度に注目している人もいるかもしれませんが、ビハインドが広がれば広がるほど、複数点を狙っていかなければならないので、ショットの難易度は難しくなります。逆に大量リードしているとシンプルなショットでよくなるので、さらに精度が高まるという傾向があるんです。
デンマーク戦も立ち上がりこそはよかったものの、その後はデンマークがゲームをコントロールしているような感じでしたね。相手スキップが吉村選手にプレッシャーを与えるようにしっかりとショットを決め切って、第3・第4エンドでは連続スチールを許す展開にもなりました。ただ、そのまま終わるのではなく延長戦に持ち込めたという意味で、粘り強く戦えたのは日本の良かった点とも言えそうです。
経験者と初出場組の「融合」大舞台で試されるチーム力
リードの近江谷杏菜選手は、バンクーバー以来の五輪カムバック。長くリードを担っていて、安定している選手です。最年長なので、チームメイトが作戦などで迷った時でもみんなが安心する一言を言える存在。「バンクーバーで力を出し切れなかった」というようなことを本人は言っていましたが、苦い経験があるからこそ、今回はどういうパフォーマンスをしていくのかをすごく本人の中で考えているでしょう。
セカンドの小谷優奈選手は五輪初出場ですが、大舞台に強い印象です。プレッシャーのかかる試合ほど、パフォーマンスを上げてくる選手。吉村選手が出産で不在の期間はスキップも務めていましたし、吉村選手に対して「こんな考えもあるよ」と意見をスッと言えるのは、彼女の魅力ですね。
サードの小野寺佳歩選手は、ソチ五輪でセカンドとして選ばれましたが、インフルエンザで試合に出られないというハプニングがありました。今はサードとして難しいショットを要求されることも多いですが、ひとこと返事で「OK!」みたいな感じで、パッと投げてしまう強さがあるんです。ソチからの12年間、本当に悔しい思いを秘めてきたと思うので、ミラノでは自分の持てるすべての力を発揮して臨みたいと思っているのではないでしょうか。
吉村選手は、産休育休から復帰してから、スキップとしてさらにメンタル面が強くなったような気がします。「覚悟を決めてカーリングをやっている」という空気が漂っていますよね。アイスの上での姿に、凛としたリーダーシップを一番に感じます。
こう考えてみると、フォルティウスは、五輪経験組と初出場組がうまく融合したバランス良いチームですね。