小野光希、採点不安を越えて銅メダル ドラマが生まれたハーフパイプ女子決勝

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小野光希(右)は挫折を乗り越えて銅メダルを獲得 【写真は共同】

 現地時間2月12日行われたミラノ五輪のスノーボード女子ハーフパイプ決勝は、まさに「ドラマが生まれた試合」だった。1本目から3本目へと雪は次第に激しくなり、パイプのボトムに雪が溜まる不安もあった。それでも選手たちは1本ごとにコンディションを見極め、調整を施しながら滑走に臨んだ。

 韓国のチェ・ガオンは1本目で頭から落ちる大クラッシュを喫し、パイプ内で動けない時間が続いたため競技は一時中断。会場が静まり返り、観客席には緊張が走った。復帰は難しいと見られたなか、ガオンは滑走を続行し、最終3本目に完成度の高いルーティンを成功させて大逆転の金メダルを獲得した。

 滑走直後、場内にはこの日最大の歓声が響いた。しかし表彰台へ向かう際には手首にサポーターを着け、右足を引きずる様子もあり、満身創痍の状態がうかがえた。

 五輪3連覇が懸かっていたアメリカのクロエ・キムも、負傷を抱えながらの出場で万全とは言い切れない状態ながら銀メダル。競技後の表情が晴れやかだったのも印象的で、大舞台を滑り切った安堵がにじんでいた。

 銅メダルは前回北京五輪9位の小野光希。前日の予選は採点面で苦しむ場面があったが、決勝1本目の「85.0」点が最後まで順位を支え、表彰台に届いた。

 大クラッシュからの復活、連覇への挑戦、そして採点への不安を抱えながらの粘り――。異なる背景が交錯し、結果以上の余韻を残す決勝となった。

「予選で誰よりも苦しんだ」小野を支えた“戦い方”の確認

 決勝後、村上大輔コーチは小野の状態を「予選で誰よりも苦しんだ」と振り返った。いい滑りをしても順位が伸びず、小野自身も「決勝でいい滑りをしても、自分はいい点数が出ないのではないか」とコーチ陣に漏らしていたという。

 コーチ陣は「人の滑りとかじゃなくて、まず光希の滑りを絶対しよう」と伝え、周囲に引っ張られず、自分のやるべき滑りを出し切ることを優先した。決勝1本目でそれを体現した点を、村上コーチは「光希の強さ」と表現する。

「今年は苦しいシーズンだった中で、今年一番の滑りをした」

 そして後輩の清水さらや工藤璃星といった存在が台頭する状況にも触れながら、「この大舞台で決め切った。本当に感動しました。褒めたたえたい」と言葉を重ねていた。

 技術面では、予選からルーティンを大きく変更したという。「スイッチ(フロントサイド1080)からスイッチ(キャブ900)はすごく難しい」と、村上コーチは難度の高いつなぎを選択したことが勝負への意思表示だったことを示した。

 前日の予選後、小野は「1本目からちゃんと決めたい」「決勝はCAB900をしっかり決めて、スイッチバックの回転もやれば評価されるはず」と話していた。決勝ではその言葉通り、1本目で形にして「85.0」点が最後まで残った。予選で思うような点数が出ず苦しんだ小野が、決勝の舞台で状況をひっくり返し、表彰台に立った。

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