堀島行真はなぜ金メダルに届かなかったのか? “大技”だけでは決まらないモーグルの採点基準

スポーツナビ

決勝2本目を終えた直後の堀島。大技を決めつつ銅メダルにとどまった 【写真は共同】

 ミラノ・コルティナ五輪のスキー男子モーグル決勝が、現地時間2月12日に行われた。堀島行真は2大会連続の銅メダルを獲得したが、金メダルにわずか「0.27」点届かなかった。銅メダルという結果を手にしながら、堀島に笑顔は見られなかった。

 今大会のモーグルは、前日の女子決勝に続き男子決勝でも“同点”が発生した。女子は銅メダルと4位、男子は金メダルと銀メダルの採点がコンマ二桁目まで同じで、勝敗を分けたのは“ターンスコア”だった。

 モーグルの採点はターンが全体の60%を占め、エア20%、タイム20%の合計100ポイントで争われる。派手な大技の成否だけではなく、ターンや滑走の完成度を含む“全体構成”が結果を左右する。そんな採点競技の特徴が、あらためて鮮明になった。

採点で重視される「フォールライン」

 堀島は決勝2本目、第2エアで出場選手の中でただ一人1440(4回転)に挑戦し着地までまとめた。しかし大技を成功させながらも結果は銅。銀メダル・カナダのミカエル・キングズベリーは1080(3回転)、金メダル・オーストラリアのクーパー・ウッズは720(2回転)だったこともあり、エアの回転数と最終順位が単純に比例しない結果となった。

 元モーグル日本代表の上村愛子さんに話を聞くことができた。上村さんは「1440のエア自体は悪くなかった」と見ている。差を生んだのは、回転数の大小ではなく、「1440の軌道がフォールライン(斜面の落下線)から逸れた点だった」という。

 さらに彼女はこう教えてくれた。

「モーグルは、フォールラインからはみ出さずに滑り降りることが求められていて、ランディングも“ピンポイント”に降りることで完成度が上がります。逆にフォールラインからズレて着地してフォールラインに戻るようなターンになると減点要素として見られてしまう。めちゃくちゃシビアなんです」

 観客の目には「着地したかどうか」が大きな判断材料になりやすい。ただ、実際は「どれだけ線を崩さずに降りたか」までが評価に影響する。堀島自身も「1440以外は完璧だった」と語った感触とも重なり、採点の核心が見えにくい競技であることを示している。

 観戦者にも、得点の内訳や評価のポイントが直感的に伝わりにくい。ファンの多くが、結果を受け止めきれないまま余韻を残す一日となった。

採点の“難しさ”と“疑問”が同時に残った決勝

上村愛子さん(右)も現地で堀島の滑走を見守った 【写真は共同】

 男女決勝で同点が発生し、順位を分けたのがターンスコアだったことは、モーグルが「何を最も重視するか」を象徴している。一方で、エアの回転数や着地の成否は目に見えやすいが、ターンの評価は採点基準を理解していても瞬時に判別しにくい。

 大技が成功していても空中での軌道や降りた位置がわずかに線を外れれば、ターンへ入る流れや滑走全体の“整い方”が変わり、結果として点の出方が変わる。採点競技の難しさは、こうした微細なズレが総合点の中に吸収され、順位として表面化する点にある。

 今回の決勝でも “見えにくい差”がメダルの色を左右した印象は否めない。

 試合後、堀島は銅メダルの意味を淡々と語った。

「まずは良かった。この銅メダルがなければ、4年間やってきたことが何だったのかと悔しい思いになるところだった。」

 決勝2本目で1440を選んだ背景には、1本目の得点を挙げた。

「決勝1本目で1080をやって『80』点という結果だったので。次は1440かなと思った」

 また、1本目を5位で通過し滑走間隔が短くなる状況についても、堀島は動揺していない。

「少し想定外だったが、良いイメージのまま(2本目は)スタートできた」

 採点競技では、成功率の高い技を選ぶことが常に最適解とは限らない。構成のどこで点を取り、どこで守るのか。選択は常に“結果論”になりやすく、選手はその不確実性を引き受けたうえで判断する。堀島もそこに言及している。

「1440の選択肢が悪かった可能性もあるし、1080にしていればとか、その時に選択肢になかったこととか…難しいところ」
「1440が銅メダルをつなぐための技だった」

 大技を決めたかどうかだけでなく、空中でフォールラインを外さず、ランディングを狙った位置に落とし込めるか。そこで生じたわずかなズレは、ターン重視の競技構造の中では“見えない減点”として積み重なる。モーグルの難しさは、その一点に集約される。

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