怪我から復帰した鎌田大地の現在地 春の完全復活へ着実にステップを踏んで
チーム状況が厳しいなかダービーで復帰
昨年12月14日のマンチェスター・シティ戦で右足のハムストリングを負傷した鎌田大地が、約2カ月ぶりにプレミアリーグのピッチに帰ってきた。
チームシート(両軍のメンバー表)に彼の名前を見つけた時は心が躍った。それはクリスタルパレス・ファンも同じだったと思う。鎌田が不在だったこの間、チームは公式戦11試合で5分(リーグ杯でのPK戦負けを含む)6敗の未勝利。リーグ戦の順位は5位から15位まで転落していた。
チームの不調は中心選手の流出・離脱も影響していた。1月の移籍期間中に、主将だったイングランド代表DFマーク・グエイがマンチェスター・Cに移籍。メディカル検査で問題が発生してACミラン行きは消滅したが、膝の状態が悪いフランス人FWジャン=フィリップ・マテタは欠場。また夏には、イングランド代表FWエベレチ・エゼがユース時代を過ごしたアーセナルへの夢の移籍を果たしており、昨季のFA杯優勝を支えたセンターラインの大黒柱3選手が櫛の歯が欠けたようにいなくなった。
さらには指揮官のオリバー・グラスナーは今季限りで満了する契約の延長に応じず、すでに退任が決まっている。
クリスタルパレスにとっては、これだけネガティブな材料が重なった状況でブライトンとのアウェー戦を迎えたわけだ。ブライトン戦といえば、サポーターが最も負けたくないと思う激しいM23ダービーである。
それが鎌田の復帰戦だった。
速さも強度も全く見劣りせず、しかも冷静にプレー
それでも29歳日本代表MFは、約2カ月ぶりの実戦というハンデキャップを感じさせなかった。激烈な試合のなかで速さも強度も全く見劣りせず、しかも冷静にプレーした。
この試合のクリスタルパレスは、3バックとダブルボランチの守備の連携が素晴らしく、5人が組織的に動いてボール周辺のスペースをなくし、ブライトンの攻撃を弾き返し続けた。途中出場した鎌田もこの完璧な守り――クリーンシートを成し遂げたのだから“完璧”と形容しても許されるだろう――のクオリティを全く落とさず、結局はこの守備力が最大の要因となり、1-0での勝利を容易に果たした。
そんな頼もしいパフォーマンスを見せた鎌田を、試合直後のクールダウンのランニングを終えてミックスゾーンに戻ってきたところでつかまえた。復帰が嬉しくて、「おめでとう! 久しぶりのプレミアは楽しめたかな?」と声をかけた。
すると鎌田が苦笑したような表情で、冒頭のコメントをしたのだ。
開口一番の「それよりも」という言葉は“楽しむということより”という意味であり、それよりも気をつけなければならないことがあったということだ。
ハムストリングは、アスリートとしてのクオリティも求められる現代フットボーラーの泣きどころだ。筋力を上げた分、そのスピードが諸刃の剣となり、自らを傷つけることが増えた。
そんなデリケートな故障なのに、出場時間に制限があったとはいえ、鎌田のハイレベルのパフォーマンスを見て、もう100%の状態だと思ってしまった自分自身の判断の甘さを恥じた。
ただ29歳日本代表MFが最後に言ったように、彼は1-0での勝利をしっかりと意識して、プレミアリーグのダービーマッチで勝つために必要なパフォーマンスを見せた。だからそんな鎌田に騙されたのは仕方がないと自分を慰めた。