高木美帆が悔しさの中に抱いた決意 1000mで銅メダル獲得も「このままでは終わらせない」

沢田聡子

銅メダルに感じた安堵と悔しさ

高木が背負っていた日の丸には、スタッフも含めスピードスケート日本選手団全員のサインが書き込まれていた 【写真は共同】

 女子1000mのレースが行われたミラノ・スピードスケートスタジアムの観客席は、オランダのスケートファンが身に着けるオレンジ色で埋まっていた。しかし、最終組で滑走した2022年北京五輪金メダリストの高木美帆は、その中に揺れる日の丸に注目していた。

「今日のレースは、すごくオレンジ色はあったんですけど、その中にもたくさんの日本の国旗が見えて、うれしさをとても強く感じました。4年前の北京の時や(2018年)平昌の時は、観客の人たちのことを見る余裕はなかったんですけど、北京の無観客というのを経験したからこそ、『こういう会場の中で滑れることは、当たり前じゃないんだな』ということは経験として持っていて。なので誇りというか、うれしかったなと思っています」

 すでに13組で滑走したフェムケ・コク(オランダ)が、北京五輪で高木が記録したオリンピックレコードを更新する1分12秒59というタイムをたたき出していた。さらに高木と同走のオランダ代表、ユッタ・レールダムは長身を駆使した力強い滑りでぐんぐんと加速し、1分12秒31で優勝。一方、高木は磨き上げた技術を感じさせる堅実な滑りをみせ、1分13秒95で銅メダルを獲得した。

 レースを終えた高木は「完敗だな」と感じていた。

「他の選手を称える気持ちと、あとは3番というのを見て、今シーズンはけっこう苦しいシーズンを過ごしていたので、ここまで来られたということに対する安堵というのも、少なからずありましたね」

 レース後に高木と抱き合ったヨハン・デビッドコーチは、「ブロンズだったけど、これがお前の8個目のメダルだ。それは決して簡単なことではない」と口にした。さらに2人は「まだ始まったばかり、ここからさらに上げていくぞ」という気持ちを確認し合ったという。

 表彰台に上った高木が自分のメダルを見て感じたのは「あー、銅メダルなんだ」という思いだった。

「すごく、悔しさというのがこみ上げてきて。幸い私、まだたくさんレースがあるので、『このままでは終わらせない』という決意と、あとは、自分のスケーティングが少しずつよくなっているという感覚はこっちに入ってきてからもあるので、『まだまだいける』と強く信じて進んでいきたいなと」

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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