倒れても、なお跳ぶ――大怪我からの復活で銅をつかんだ丸山希 その“一瞬”を竹内択が称賛

田中凌平

銅メダルを掲げて笑顔を見せる丸山。本番での高い調整力と安定感が、表彰台につながった 【写真は共同】

 ミラノ・コルティナ冬季五輪のスキージャンプ・女子ノーマルヒルが現地時間2月7日に行われた。日本代表は丸山希(北野建設)が3位に入り、今大会の日本勢メダル第1号に。その他の日本勢は、高梨沙羅(クラレ)が13位、勢藤優花(オカモトグループ)が14位、伊藤有希(土屋ホーム)が17位となっている。

 1本目に97.0メートルのジャンプで3位につけた丸山は、2本目で100.0メートルのジャンプを披露した。これで2本の合計が261.8点となり、五輪初出場で見事銅メダルを獲得。2021年10月の全日本選手権で負った大怪我を乗り越えての復活劇となった。優勝をつかんだのは1本目・2本目ともに1位を記録したアンナオディネ・ストロム(ノルウェー)。今回の五輪で圧倒的な優勝候補と見られていたニカ・プレブツ(スロベニア)は、わずか1.1点差の2位に終わった。

 しかし上位陣のジャンプに差はほとんどなく、金メダルの可能性もあれば、メダルを逃す可能性もあった。その勝敗を分けた差はどこにあったのだろうか――。バンクーバー、ソチ、平昌と3度の冬季五輪出場を果たし、現在はスキージャンプ界で初の「プロアスリートチーム」を率いる竹内択さんに、スキージャンプ・女子ノーマルヒルを振り返ってもらった。

追い風に左右されない丸山希の調整力が銅メダルを引き寄せた

追い風が吹く難しい条件の中でも、流れのある美しいジャンプを披露した丸山。2本目は100メートルを記録 【写真は共同】

 丸山選手はミスのない安定したジャンプを揃え、見事に銅メダルを獲得しました。トレーニングラウンドの時点では少し不安を覚える部分もありましたが、直後の本番でしっかりと合わせてくる調整力とメンタルが際立っていたと思います。特に2本目のジャンプは完成度が高く、ワールドカップで6勝を挙げてきた選手らしさが表れたジャンプでした。

 昨年、私も同じジャンプ台を飛びましたが、この場所は追い風が吹きやすい傾向があります。無風時のイメージのまま飛び出してしまうと、前傾への移行が早くなり、頭から突っ込むような形になって失速しやすくなるんです。だからこそ、あえてやや「立ち気味」に飛び出すような微調整が求められます。多くの選手がそのアジャストに苦しんでいる中、丸山選手は非常にきれいな流れで飛べていましたね。

 ノーマルヒルはラージヒルに比べて飛距離差が出づらいため、着地でテレマークが決まったかどうかなどの飛型点が勝敗の鍵を握ります。丸山選手は3位でしたが、上位5人は誰が1位になってもおかしくないほどの僅差でした。

そんな中でも、今回のトップ2は私にとって意外な顔ぶれでした。優勝したストロム選手はラージヒルの印象が強くこちらでは大穴の存在でしたし、2位のプレブツ選手は圧倒的な優勝候補と見ていましたが、今回はジャンプに細かなミスが目立っていた。彼女の最大の強みは、他の選手と比べても抜群に整ったアプローチです。多少タイミングを外しても勝ててしまうほどで、いつも羨ましく感じています。

 そんなプレブツ選手でも1本目の着地で体勢を崩し、しゃがみ込む形になって飛型点を伸ばせませんでした。あれほどの実力者でものみ込まれてしまうのが五輪なのだと、あらためてその怖さを感じましたね。決して簡単な条件ではなかったですが、本番にしっかり合わせてきた丸山選手の技術と精神力は、やはりさすがの一言に尽きます。

1/2ページ

著者プロフィール

東京都出身。フリーライター。ラグジュアリーブランドでの5年間の接客経験と英語力を活かし、数多くの著名人や海外アスリートに取材を行う。野球とゴルフを中心にスポーツ領域を幅広く対応。明治大学在学中にはプロゴルフトーナメントの運営に携わり、海外の有名選手もサポートしてきた。野球では国内のみならず、MLBの注目選手を観るために現地へ赴くことも。大学の短期留学中に教授からの指示を守らず、ヤンキー・スタジアムにイチローを観に行って怒られたのはいい思い出。

新着記事

コラムランキング