倒れても、なお跳ぶ――大怪我からの復活で銅をつかんだ丸山希 その“一瞬”を竹内択が称賛
1本目に97.0メートルのジャンプで3位につけた丸山は、2本目で100.0メートルのジャンプを披露した。これで2本の合計が261.8点となり、五輪初出場で見事銅メダルを獲得。2021年10月の全日本選手権で負った大怪我を乗り越えての復活劇となった。優勝をつかんだのは1本目・2本目ともに1位を記録したアンナオディネ・ストロム(ノルウェー)。今回の五輪で圧倒的な優勝候補と見られていたニカ・プレブツ(スロベニア)は、わずか1.1点差の2位に終わった。
しかし上位陣のジャンプに差はほとんどなく、金メダルの可能性もあれば、メダルを逃す可能性もあった。その勝敗を分けた差はどこにあったのだろうか――。バンクーバー、ソチ、平昌と3度の冬季五輪出場を果たし、現在はスキージャンプ界で初の「プロアスリートチーム」を率いる竹内択さんに、スキージャンプ・女子ノーマルヒルを振り返ってもらった。
追い風に左右されない丸山希の調整力が銅メダルを引き寄せた
昨年、私も同じジャンプ台を飛びましたが、この場所は追い風が吹きやすい傾向があります。無風時のイメージのまま飛び出してしまうと、前傾への移行が早くなり、頭から突っ込むような形になって失速しやすくなるんです。だからこそ、あえてやや「立ち気味」に飛び出すような微調整が求められます。多くの選手がそのアジャストに苦しんでいる中、丸山選手は非常にきれいな流れで飛べていましたね。
ノーマルヒルはラージヒルに比べて飛距離差が出づらいため、着地でテレマークが決まったかどうかなどの飛型点が勝敗の鍵を握ります。丸山選手は3位でしたが、上位5人は誰が1位になってもおかしくないほどの僅差でした。
そんな中でも、今回のトップ2は私にとって意外な顔ぶれでした。優勝したストロム選手はラージヒルの印象が強くこちらでは大穴の存在でしたし、2位のプレブツ選手は圧倒的な優勝候補と見ていましたが、今回はジャンプに細かなミスが目立っていた。彼女の最大の強みは、他の選手と比べても抜群に整ったアプローチです。多少タイミングを外しても勝ててしまうほどで、いつも羨ましく感じています。
そんなプレブツ選手でも1本目の着地で体勢を崩し、しゃがみ込む形になって飛型点を伸ばせませんでした。あれほどの実力者でものみ込まれてしまうのが五輪なのだと、あらためてその怖さを感じましたね。決して簡単な条件ではなかったですが、本番にしっかり合わせてきた丸山選手の技術と精神力は、やはりさすがの一言に尽きます。