韓国はなぜショートトラックが強いのか 現地識者が「秘密」を解き明かす
韓国にとっては冬季五輪の「孝子種目」
シュートトラックが公開競技として初めて実施された1988年カルガリー五輪以降、伝統的に強さを誇ってきたカナダには、男子が2025年世界選手権3冠のウィリアム・ダンジヌ(500メートル、1000メートル)、女子が同じく2025年世界選手権で2つの銀メダルを手にしたコートニー・サロ(1500メートル、1000メートル)と、男女ともに確固たるエースがいる。両選手とも今シーズンのISUワールドツアー開幕戦でも優勝している実力者だ。
カナダと同じく伝統的な強豪国であるオランダにも、今季ISUワールドツアー第3戦で男子1000メートル優勝のイェンス・ファン・トバウトや、女子500メートルの世界記録保持者ミシェル・フェルシュブールのような中心選手がいて、なおかつ男女ともにリレーも強い。また前回大会開催国の中国も、その北京五輪でハンガリーに男子500メートルの金メダルをもたらしたリュウ・シャオアンを帰化させて迎えるなど、競争力がある。
一方、日本勢では今季ISUワールドツアー第2戦の男子1500メートルで銀メダルを手にした“日本ショートトラックのエース”宮⽥将吾や22歳の新星・中島未莉にもメダル獲得のチャンスはあるだろうし、今大会の舞台となるイタリアのピエトロ・シゲルなども、メダリスト候補だろう。
だが、ショートトラックの世界において絶対強者として各国からマークされるのは、韓国にほかならない。
韓国はこれまでに冬季五輪で獲得した金メダル33個のうち、実に26個をショートトラックで勝ち取っている。前回の2022年北京大会で手にした2つの金メダルも、同種目でのものだ。韓国ではメダルが確実視される種目を「国に孝行している」という意味で「孝子(ヒョジャ)種目」と呼ぶが、冬季五輪における「孝子種目」こそ、まさにショートトラックなのだ。
特徴的な走法や用具の工夫を他国に先んじて示してきた
国内の競技人口は突出して多いわけではなく、競技施設などインフラ面も充実しているとは言い難い。実業団などの受け皿も十分に確保されているとは言えず、たとえ代表チームで活躍した選手であっても、引退後に安定した仕事を見つけるのが難しいのが実情だ。
それでも韓国はショートトラックにマッチした特徴的な走法や用具の工夫を、国際舞台で他国に先んじて示してきた。
指先に樹脂を施し、コーナリングで手をついた際の摩擦を抑える「カエル手袋」、スピード維持のため片足でコーナーを回る「片足走法」、インコースで追い越して一度アウトコースに抜け、再びインコースに入る「ひょうたん走法」など、1秒でもタイムを縮めるために独自でさまざまな方法を編み出してきた。
またリンク外では、企業による継続的なバックアップが競技力強化と選手育成を下支え。ショートトラックやフィギュアスケートなど氷上競技を支援する金融大手・KB金融グループは、冬季スポーツの有望株発掘を目的に毎年奨学金を授与しており、さらに国際大会や代表選考会のタイトルスポンサーを務めるなど、選手の成長機会の提供を積極的に行ってきた。