4拠点分散も心はつながっている 持続可能な五輪を目指すミラノ・コルティナ五輪開会式

沢田聡子

日本選手団の旗手は2カ所で行進

旗手を務めた森重は「会場の雰囲気を楽しみながら歩きました」とコメント 【写真は共同】

 五輪のマークを分散させた金色の輪を通り抜け、入場してくる選手がモニターに映る。しかし、ミラノにあるサンシーロ・オリンピックスタジアムに設置された輪に目を移すと、そこには誰もいない。ミラノ以外にもコルティナ・ダンペッツォ、リビーニョ、プレダッツォの計4会場で開会式が開催されており、ミラノ以外の都市で開会式に参加している選手の映像なのだ。広域分散型開催のミラノ・コルティナ五輪ならではの、新たな形式の開会式だった。日本選手団の旗手も、森重航(スピードスケート)はミラノで、冨田せな(スノーボード・ハーフパイプ)はリビーニョで、それぞれ行進している。

 地球温暖化の影響で今後の開催についての懸念が取り沙汰される冬季五輪だが、広域開催にすることで、各競技に適した気候の都市を選ぶことができる。また、既存の施設を使う選択もしやすい。冬季五輪がこれからも存続していくための一つの解決策として、今大会は広域開催を選択した。

 現地時間2月6日に行われた開会式の指針は、「ARMONIA」。「調和」を意味するイタリア語だ。選手が入場するときはDJによる現代的な音楽が流れたかと思うと、オペラ『トゥーランドット』の『誰も寝てはならぬ』が歌われ、新旧入り混じるイタリアの文化が表現された。

 2022年北京五輪はコロナ禍の中バブル方式で行われ、一般市民にとって参加しやすいものではなかった。しかし、今大会の開会式が行われた巨大なサンシーロ・オリンピックスタジアムは観客で埋まり、式の開始前にはウェーブが起こった。観客と入場してくる選手も、「調和」していたように思う。

坂本花織が語った持続可能な五輪

ミラノ(写真)とコルティナの聖火台に聖火が灯り17日間の戦いが幕を開けた 【写真は共同】

 1月18日に行われた日本選手団壮行会後の記者会見で、旗手代行を務めた坂本花織に、今大会が分散広域開催であることについて質問があった。坂本は「いつもは競技が違っても、開会式とか閉会式で会えるという、どこかしらでチャンスがあったんですけど、それすらも今回はないので、なかなかみんな集まるのは難しい」としつつ、解決策にも言及した。

「選手は若くデジタルに強い人が多いと思うので、プラットフォームとかを使って、みんなでいい成績が残せた時は共有して。それを見て、それぞれの競技が『頑張ろう』って思えるようにできたらいいなと思っていますし、離れていても熱量はみんな一緒だと思うので、そこは本当にチームジャパンとしてみんなで戦っていけたらと思っています」

 また、広域開催の意義についても語った。

「やっぱりオリンピックとなると、どうしてもかなり費用がかかるという印象がある。今ある(既存の)会場でそれぞれの競技をやるのは、やっぱり遠くの未来を考えた時、持続できるために必要だと思う。これが初めての経験ということで、いいことも悪いこともきっと発見できると思います。それを得て、次の4年後の(フランスアルプス)オリンピックでまた改善されて、いいオリンピックが開催されるんじゃないかなと思う」

 厳しい環境下でも、未来につながる道を見出す坂本の思いが感じられる答えだった。「離れていても熱量はみんな一緒」。サンシーロ・オリンピックスタジアムのスクリーンでそこにはいない選手の行進を見ながら、思い出されたのはその言葉だ。4カ所に分かれて、でも心はつながっている選手たちの、ミラノ・コルティナ五輪が始まった。
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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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