角田涼太朗が横浜FM復帰に込めた想い J1残留の救世主に「僕が帰ってきた意味はあった」

舩木渉

2025年夏に横浜F・マリノス復帰を果たした角田涼太朗は、守備の要としてJ1残留に大きく貢献した 【撮影:舩木渉】

SNSに投稿した言葉の意味

「苦しかったはずなのに楽しくて充実した毎日でした」

 横浜F・マリノスに復帰して最初のシーズンを終えた角田涼太朗は、自身のInstagram(インスタグラム)にそう投稿した。「あらためて心の底から帰ってきてよかった」とも書き添えている。

 2025シーズンは最終盤まで残留争いを強いられ、「苦しかったはずなのに」楽しいと振り返ることができたのはなぜなのか――。ずっと気になっていた疑問を角田本人にぶつけた。

「『楽しかった』というと聞こえがよくないかもしれないですが、本当に大きなものを懸けて戦っていた自負があるので、あのように書きました」

 クラブ史上初のJ2降格が現実味を帯び始めたタイミングで加入し、かつてなく厳しい逆境に真正面から立ち向かった経験は「本当に充実した時間」だったという。

「クラブの未来にかかわるような試合を何度も経験して、成長できた部分も多いです。もちろん苦しかったですが、そういう時間も含めて総合したら充実していて『楽しかった』となるだけであって、一瞬一瞬を『楽しい』と感じていたかというとまた別の話です。とはいえ、結果として昨年はJ1残留という最低限の目標を達成することができましたし、少なからず僕が帰ってきた意味はあったのではないかなと」

 2025年夏。期限付き移籍先のKVコルトレイクから所属元のカーディフ・シティFCに戻った角田は、プレシーズンのトレーニングに参加しながら自身の将来について熟考を重ねていた。

 カーディフはイングランド・チャンピオンシップ(2部相当)からリーグ1(3部相当)に降格となっており、コルトレイクも時を同じくしてベルギー2部に降格。「自分が今どこでプレーをするのが良いのかを考えた時に、より高いレベルでやりたかった」という角田は移籍を模索した。

 最初はヨーロッパ内での移籍を目指したものの、いくつかあった選択肢はどれも具体的な話には進展しない。「やはりヨーロッパの移籍市場は思ったようにはいかないな……」と考えていた中で「日本に帰るならF・マリノス一択」とJリーグ復帰の可能性も探り、仲介人にも「F・マリノスを最優先にしてほしい」と伝えて吉報を待った。

全てはマリノスのために

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 一方、F・マリノスは4月下旬から最下位を抜け出せず負傷者も続出。泥沼から抜け出すための救世主として、かつて共に戦った角田の獲得に乗り出した。アシスタントコーチから昇格していた大島秀夫監督も「力になってほしい」と直接ラブコールを送り、交渉を後押しした。

「秀夫さんは前橋育英高校の先輩でもありますし、プロになった時から一緒にやってきた監督だったので、F・マリノスへの復帰を決めた大きな要因の1つになりました」

 ヨーロッパでの挑戦に区切りをつけ、日本に帰る。それだけでも大きな決断だが、角田は愛するクラブを救うべく並々ならぬ覚悟を胸にF・マリノスへ戻ってきた。かつて中澤佑二が背負った「22番」を受け継いだことにも、想いの強さが表れていた。

「自分が帰ってきてJ2に降格したら本当に自分のせいだと考えていました。一方で、自分の力を見せてチームに対して何ができるかを証明するチャンスでもあると思っていました」

 ヨーロッパでは怪我との戦いを強いられ、左太ももと左膝の手術を受けて約10ヶ月にわたってピッチから遠ざかった。それでもカーディフからの期限付き移籍先だったコルトレイクでは「2度とも絶体絶命の状況」で、残留争いを生き残った経験を持っている。その中で「自分のプレーにも手応えはあった」と、成長を実感してもいた。

「もちろんメンタル面は鍛えられました。向こうで1年近くリハビリをすることになったのは本当に苦しかったですが、それを経験して日本に帰ってきたら、多少何かあっても全然苦しくないというか、動じなくなりました。プレー面で言ったら守備の強度は上がった実感がありますし、予測の部分、相手より一歩先に動く感覚が磨かれた感じはありますね」

 自らの変化とともに、チームに対する向き合い方も変わった。F・マリノス復帰当初の取材で「1対1で負ける回数が明らかに多い。ボールを奪い切れなかったり、簡単に奪われたり、チームとしても個人としても相手に負けている回数が多すぎる」とはっきり指摘した時に驚いたのをよく覚えている。若手の1人だった1年半前の角田とは別人のようなたくましさを感じた。

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著者プロフィール

1994年生まれ、神奈川県出身。早稲田大学スポーツ科学部卒業。大学1年次から取材・執筆を開始し、現在はフリーランスとして活動する。世界20カ国以上での取材を経験し、単なるスポーツにとどまらないサッカーの力を世間に伝えるべく、Jリーグや日本代表を中心に海外のマイナーリーグまで幅広くカバーする。

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