F1勢力図激変の予感? 今季初テストに勢揃いしたニューマシンから見えるものとは

柴田久仁夫

ほぼ順調にテストを終えて表情も明るい小松礼雄ハース代表(写真右)とオリバー・ベアマン 【©HaasF1】

異例づくめの”密室”テスト

 スペイン・バルセロナで行われたF1テストは、異例づくめのものだった。まず、1月という非常に早い時期に行われたこと。通常は3月の開幕戦に向けて、2、3週間前の2月に行われる。期間も、せいぜい3日間。それが今年は、まず1月に5日間、そして今月、バーレーンで3日間のテストが2回。計11日間が予定されている。さらに今回のバルセロナテストは、観客やメディアの立ち入りを完全シャットアウトしての非公開テストだった。

 なぜかといえば、F1の技術規約が大きく変わり、車体、エンジンを根本から設計し直すことになったから。開幕戦までに、できるだけ多くの周回数をこなして問題点を洗い出したい。さらに未知の実走テストであるだけに、トラブル多発が予想された。無様な姿を晒したくないと、非公開にしたわけだ。

 ところが新車の初テストは、意外なほどに順調だった。

二つのサプライズ

2014年のマクラーレンは、ヘレステスト初日でエンジンすらかけられなかった 【©柴田久仁夫】

 この予想外の順調さが、今回のテストでの最初のサプライズだった。たとえばターボハイブリッドが初めて導入された2014年の開幕前テストでは、エンジンを始動することすらできず、初日に1周もできないどころか、ガレージから出られないチームがあった。

 ところが今回は、確かにトラブルで満足に走れないチームもあったが、初日から100周以上の周回を重ねたチームがいくつもあった。

 中でも僕が最も驚いたのが、レッドブルだった。昨年限りでホンダとの契約を終了したレッドブルは、100%自前のPU(パワーユニット)開発に乗り出した。経験もノウハウも何もない、ゼロからの挑戦。ホンダやメルセデスなど、F1エンジン開発のプロたちは、「自動車メーカーでもない彼らが、うまくやれるとは思えない」と見ていた。

 ところがレッドブル・パワートレイン製PUを搭載したレッドブルRB22は3日間で303周、レーシングブルズVCARB03も319周を走破してみせた。PU由来の深刻なトラブルは皆無。もちろん最大パワーなどのパフォーマンスは、現時点ではまだわからない。とはいえ、新参者のF1エンジンがいきなりこれだけの高い信頼性を発揮したのは、十分に賞賛に値する。「速さ」ではなく、「壊れずに走り切った」という事実こそが、新規参入PUにとって最大の成果だった。

 そしてもう一つのサプライズが、「百花繚乱のマシンデザイン」だった。F1の技術規約は、近年は特に細部まで厳重に定められている。そのためカラーリングを施さなければ、どのマシンか特定できないほどに画一的だった。

 ところがバルセロナに登場した各チームのマシンは、フロントウィングやディフューザー形状、サイドポンツーンの絞り込みなどに、大きな違いが見られた。それぞれの設計思想に基づき、かなり自由に腕を奮ったということなのだろう。もしかするとこれは単に、新規約に対する最適解を各チームがまだ見つけられていないだけかもしれない。とはいえ新車のデザインが個性的なのは、眺めているだけでも楽しい。

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著者プロフィール

柴田久仁夫(しばたくにお) 1956年静岡県生まれ。共同通信記者を経て、1982年渡仏。パリ政治学院中退後、ひょんなことからTV制作会社に入り、ディレクターとして欧州、アフリカをフィールドに「世界まるごとHOWマッチ」、その他ドキュメンタリー番組を手がける。その傍ら、1987年からF1取材。500戦以上のGPに足を運ぶ。2016年に本帰国。現在はDAZNでのF1解説などを務める。趣味が高じてトレイルランニング雑誌にも寄稿。これまでのベストレースは1987年イギリスGP。ワーストレースは1994年サンマリノGP。

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