鍵山、坂本らメダル候補の可能性をカナダ人記者が診断 男女シングルの気になるライバルは?
ここではトロントを拠点とするスポーツライターで、フィギュアスケート、ホッケー、サッカーなど幅広い競技を取材しているディラン・ナザレス氏に、日本人選手の実力を診断してもらうとともに、メダル争いのライバルとなりそうな選手の名前を挙げてもらった。(翻訳:杉浦大介)
2大会連続のメダルは現実的なターゲット
まず男子シングルには鍵山優真、佐藤駿、三浦佳生の3名が出場する。
現在22歳の鍵山は、4年前の北京五輪で銀メダルを獲得した、日本男子チーム唯一のオリンピアンだ。全日本選手権は24年、25年と2年連続優勝を果たしており、国内では圧倒的な強さを誇る。また国際舞台においても、過去5回の世界選手権では、怪我で出場を逃した2023年を除く4大会すべてで表彰台に上がっている。ただし銀メダルが3つで、昨シーズンも銅メダルと、まだ一度も表彰台の真ん中には立ったことがない。
鍵山の演技はジャンプの安定性とスピンの質の高さが特徴。特にトリプルアクセルや4回転ジャンプの成功率が高いが、そのジャンプを降りた後の着氷の美しさにも定評がある。昨年12月のグランプリ(GP)ファイナルでは2位に入るなど、今シーズンのパフォーマンスも安定しているだけに、五輪での2大会連続のメダル獲得は現実的なターゲットだ。
ミラノ・コルティナ五輪が開幕する2月6日に22歳の誕生日を迎える佐藤は、昨年12月の全日本選手権で鍵山に次ぐ2位に入り、初めてシニアの表彰台に立った伸び盛りだ。
今シーズンのGPシリーズでは第2戦で優勝、第4戦で2位と結果を残し、GPファイナルではパーソナルベストの292.08点をマークして3位に食い込んでいる。
ジャンプスキルが高いスケーターで、特に4回転ルッツやフリップといった難易度の高いジャンプを軽々と跳び、その着氷も安定している。まだ国際経験は鍵山ほど豊富ではないが伸びしろは大きく、初出場の五輪でも臆することなく勢いのある演技を披露できれば、表彰台も狙えるだろう。
ともに22歳の鍵山と佐藤よりも若い20歳の三浦佳生は、昨年12月の全日本選手権でシニア初の表彰台(3位)に立った。
四大陸選手権は史上最年少の17歳8カ月で制した23年に続き、今年1月にも二度目の優勝。国際舞台での経験も積んでいるが、世界選手権は24年の8位が最高でまだ表彰台には立っていない。
今シーズンはジャンプの乱れやコンビネーションのミスが散見されるだけに、ミラノでは安定した演技を取り戻すことが大前提となるが、スピード感や柔らかな表現力、ステップシークエンスでの評価点の高さは大きな武器。五輪では若者らしく攻めの姿勢を失わないことだ。
日本勢最大のライバルは“クワッドの神”
現時点で金メダルの最有力候補は、アメリカのイリヤ・マリニンだ。21歳の若さながら世界選手権2連覇(24、25年)、GPファイナル3連覇(23、24、25年)を達成している圧倒的な王者だ。
史上初の4回転アクセル成功者は“クワッドの神(Quad God)”の異名を取り、複数の4回転ジャンプを組み込んだ高度なプログラムで観客を魅了する。今シーズンのGPファイナルではフリースケーティング(FS)で238.24点をマーク。自らが持つ世界最高得点記録を9点以上も更新した。このジャンプの技術力と演技構成の完成度は、他の追随を許さない。
その他の注目選手としては、イタリアのダニエル・グラッスル(23歳)、フランスのアダム・シャオ・イム・ファ(25歳)、カザフスタンのミハイル・シャイドロフ(21歳)といった名前を挙げておく。
北京五輪7位のグラスルは、今シーズンのGPシリーズ第2戦で佐藤に次ぐ2位、GPファイナルでマリニン、鍵山、佐藤に次ぐ4位に入るなど、どんな大会でもコンスタントに上位につける。一方、シャオ・イム・ファは24年の世界選手権で3位、シャイドロフは昨年の世界選手権で2位に入った実力者だが、今シーズンはやや不安定な面が目立っている。
いずれにしても、日本勢にとって最大のライバルはマリニンで間違いない。高難度ジャンプをそろえてくるマリニンに対して、どこまで演技の美しさと安定感で対抗できるか。メダル獲得のポイントはそこに尽きるだろう。