小林陵侑の2大会連続金メダルの可能性は? ドイツ人ジャーナリストによる日本ジャンプ陣のリアル評

トム・バーテルス

今季の小林は現時点でW杯ランキング2位。ジャンプに精通するドイツ人ジャーナリストの目に、日本のエースはどう映っているのか 【写真は共同】

 ミラノ・コルティナ冬季五輪のスキージャンプは、現地2月7日(日本時間8日)の女子ノーマルヒルを皮切りに全6種目が行われる。いずれも日本勢のメダル獲得が期待されるが、特に注目されるのが2大会連続の金メダルがかかる小林陵侑だろう。

 では、この男子エース、そして日本チームのことをライバル国の識者はどう見ているのか。分析をお願いしたのは、強豪国の一つであるドイツ出身のスポーツジャーナリスト、トム・バーテルス氏。長年、母国のTV各局でジャンプ中継のコメンテーターを務め、現在はARD(ドイツ公共第1放送)で五輪金メダリストのスヴェン・ハンナバルトとタッグを組む。同氏のリアルな日本の評価は?(翻訳:円賀貴子)

「日本チームの見通しはこれ以上ないほど明るい」

 間もなく、今シーズン最も重要な大会が始まる。この数カ月、いや、もう何年も前から、世界トップクラスのジャンプ選手たちがその舞台であるプレダッツォ(イタリア北東部トレンティーノ・アルト・アディジェ州の町)の五輪施設「トランポリノ・ダル・ベン(で跳ぶこと)」を目指してきた。そして、日本チームの今大会での見通しはこれ以上ないほど明るい。

 私は25年以上、ドイツのTV局でスキージャンプの解説を担当している。最初の数年間は原田雅彦や船木和喜が出場していた。今でも彼らには、現役、OBを問わず他の選手たちが大きな敬意を払う。

 葛西紀明についても同様である。彼が2026年の現在もジャンプを続けているなんて、誰が予想できただろうか。葛西の成功、その風格、そして53歳という年齢でも鍛錬を続けてスキージャンプ選手として競争力を維持している事実が、彼を欧州で真のスター選手にしている。現在はコンチネンタルカップ(ワールドカップより1ランク下の大会)にしか出場していないにもかかわらず、彼が参加する全ての大会を今でも追っている人も少なくない。

 他の選手たちが優秀すぎるので、葛西にとって最後の大きな夢だった9回目の五輪出場は叶わなかったが、彼はヨーロッパで最も人気のあるスポーツ選手の一人だ。

 私自身、日本の選手たちと長年にわたって交流を持ち続け、良好な関係を築いてきた。もちろん、全員がドイツ語を話せるわけではないが、直接会話をすることもあり、手や腕などのジェスチャーも交えて意思疎通はできる。

 私が出会った日本のジャンプ選手たちは、みんな本当に礼儀正しく、親切だ。私が何か知りたいことがあると、できる限り取材に協力してくれる。中村直幹が数年前からドイツに住んでいて、英語がとても上手なのは大きな助けになっている。

リョウは基本技術が安定しているうえに精神力が非常に強い

確かな技術に加え、メンタルの強さも小林のストロングポイントだ 【写真は共同】

 小林陵侑が息を呑むような活躍でジャンプシーンを賑わすようになって以来、私は彼に何度もインタビューを行ってきたが、いつも通訳が同行していたのでコミュニケーションはスムーズだった。「リョウ」もまたスキージャンプ界で非常に人気がある。

 人気の理由は、選手としての成功もさることながら、その立ち居振る舞いにもある。クール(かっこいい)だからと、ソーシャルメディアで彼をフォローしている人も多い。リョウはファッションに敏感で、外向的でありながら、地に足がついていて、常に謙虚。自信に満ちてはいるが、スーパースター然とした気取ったところはなく、親しみやすい人物だ。

 スポンサーとの共同企画で打ち立てた291メートルという世界最長記録は、必見のスペクタクルだった。ARDのスキージャンプ・エキスパートであり、私と一緒に解説を行っているスヴェン・ハンナバルトにとっても、リョウはお気に入りの選手の一人で、その非常に正確なジャンプ技術が好きだと言っている。

 スヴェンは2001-02シーズン、スキージャンプ週間の4大会全てで優勝した最初の選手。当時、それは不可能と思われていた。同じくそれを達成したリョウに対して、スヴェンは最大限の敬意を払っている。

 私はリョウが、プレダッツォで優勝候補の一人だと見ている。彼は2022年の北京五輪で金メダルを獲得しているから、今大会で絶対勝たなければならないというプレッシャーはあまりないだろう。この点は他の選手との大きな違いである。

 リョウのテクニックは、基本的にあらゆるジャンプ台に対応できる。基本テクニックが安定しており、さらに精神力が非常に強い。プレダッツォはほとんどいつも追い風であり、これは飛行技術だけに頼った選手には不利である。夏の総合リハーサルでは追い風のなか、ノーマルヒル、ラージヒルどちらのジャンプ台でも、リョウがどれほど強かったことか。

1/2ページ

著者プロフィール

新着記事

コラムランキング