小林陵侑の2大会連続金メダルの可能性は? ドイツ人ジャーナリストによる日本ジャンプ陣のリアル評
では、この男子エース、そして日本チームのことをライバル国の識者はどう見ているのか。分析をお願いしたのは、強豪国の一つであるドイツ出身のスポーツジャーナリスト、トム・バーテルス氏。長年、母国のTV各局でジャンプ中継のコメンテーターを務め、現在はARD(ドイツ公共第1放送)で五輪金メダリストのスヴェン・ハンナバルトとタッグを組む。同氏のリアルな日本の評価は?(翻訳:円賀貴子)
「日本チームの見通しはこれ以上ないほど明るい」
私は25年以上、ドイツのTV局でスキージャンプの解説を担当している。最初の数年間は原田雅彦や船木和喜が出場していた。今でも彼らには、現役、OBを問わず他の選手たちが大きな敬意を払う。
葛西紀明についても同様である。彼が2026年の現在もジャンプを続けているなんて、誰が予想できただろうか。葛西の成功、その風格、そして53歳という年齢でも鍛錬を続けてスキージャンプ選手として競争力を維持している事実が、彼を欧州で真のスター選手にしている。現在はコンチネンタルカップ(ワールドカップより1ランク下の大会)にしか出場していないにもかかわらず、彼が参加する全ての大会を今でも追っている人も少なくない。
他の選手たちが優秀すぎるので、葛西にとって最後の大きな夢だった9回目の五輪出場は叶わなかったが、彼はヨーロッパで最も人気のあるスポーツ選手の一人だ。
私自身、日本の選手たちと長年にわたって交流を持ち続け、良好な関係を築いてきた。もちろん、全員がドイツ語を話せるわけではないが、直接会話をすることもあり、手や腕などのジェスチャーも交えて意思疎通はできる。
私が出会った日本のジャンプ選手たちは、みんな本当に礼儀正しく、親切だ。私が何か知りたいことがあると、できる限り取材に協力してくれる。中村直幹が数年前からドイツに住んでいて、英語がとても上手なのは大きな助けになっている。
リョウは基本技術が安定しているうえに精神力が非常に強い
人気の理由は、選手としての成功もさることながら、その立ち居振る舞いにもある。クール(かっこいい)だからと、ソーシャルメディアで彼をフォローしている人も多い。リョウはファッションに敏感で、外向的でありながら、地に足がついていて、常に謙虚。自信に満ちてはいるが、スーパースター然とした気取ったところはなく、親しみやすい人物だ。
スポンサーとの共同企画で打ち立てた291メートルという世界最長記録は、必見のスペクタクルだった。ARDのスキージャンプ・エキスパートであり、私と一緒に解説を行っているスヴェン・ハンナバルトにとっても、リョウはお気に入りの選手の一人で、その非常に正確なジャンプ技術が好きだと言っている。
スヴェンは2001-02シーズン、スキージャンプ週間の4大会全てで優勝した最初の選手。当時、それは不可能と思われていた。同じくそれを達成したリョウに対して、スヴェンは最大限の敬意を払っている。
私はリョウが、プレダッツォで優勝候補の一人だと見ている。彼は2022年の北京五輪で金メダルを獲得しているから、今大会で絶対勝たなければならないというプレッシャーはあまりないだろう。この点は他の選手との大きな違いである。
リョウのテクニックは、基本的にあらゆるジャンプ台に対応できる。基本テクニックが安定しており、さらに精神力が非常に強い。プレダッツォはほとんどいつも追い風であり、これは飛行技術だけに頼った選手には不利である。夏の総合リハーサルでは追い風のなか、ノーマルヒル、ラージヒルどちらのジャンプ台でも、リョウがどれほど強かったことか。