J1・J2・J3の戦力を徹底分析 百年構想リーグの見どころは?

名古屋やG大阪など6クラブが監督交代で激動の予感 3人の識者によるJ1百年構想リーグ展望座談会【WEST編】

YOJI-GEN

ミシャの就任で攻撃サッカーに舵を切る名古屋と、ヴィッシング新体制でハイプレスサッカーに転じるG大阪。WESTでは監督交代に踏み切ったクラブが目立つ 【(C)J.LEAGUE】

 J1百年構想リーグを展望する座談会の後編は、WEST編だ。キャンプに密着した佐藤景、土屋雅史、池田タツの3人のエキスパートが感じ取ったのは、各チームを取り巻く空気の変化。広島、神戸、G大阪、清水、名古屋、福岡(暫定監督)と、全10クラブ中、実に6クラブで政権交代が起こったWESTの戦いには、先行き不透明感が漂う一方で楽しみも大きい。

ハードな筋トレがG大阪のスタンダードに

――ここからはウエストを見ていきましょう。それぞれ注目チームを挙げていただけますか?

佐藤 まずは名古屋グランパスですね。新監督のミシャ(・ペトロヴィッチ)は、「時間がかかる、簡単じゃない」と話す一方で、「ハマれば強くなる」と手応えも感じています。選手たちも少しずつミシャのやりたいことを理解しているようです。

 システムに関しては、基本は昨シーズンまでの3-4-2-1を踏襲するようですが、キャンプでは中盤が逆三角形の3-5-2や、トップ下を置く形なども試していました。これまでのやり方だけでは優勝争いに絡むのは難しいだろうと、ミシャ自身も感じているんでしょうね。

――24年シーズンまで6年間指揮を執った北海道コンサドーレ札幌は選手を「獲られる側」でしたが、今度は「獲る側」になりました。さっそく高嶺朋樹(←札幌)を獲得したように、今後ミシャのサッカーに合った選手が増えていけば、可能性はさらに広がっていくでしょうね。

佐藤 そうですね。あとは浦和レッズ時代の阿部勇樹、札幌時代の宮澤裕樹といったように、チームで抑えておくべき選手をしっかりと抑えるのもミシャ流のマネジメント。名古屋ではさっそく稲垣祥とコミュニケーションを取っているようですよ。何より前任者(長谷川健太)が守備的なマインドの強い監督だったので、攻撃サッカーを掲げるミシャの指導は新鮮なんじゃないですか。キャンプでは連日ゲーム形式のハードなトレーニングを行っていましたが、「楽しもう」という空気に包まれていました。

――土屋さんはどうですか?

土屋 もしかしたら、日本サッカー界のスタンダードを変える存在になるかもしれないのが、今年の清水エスパルスだと思うんです。何しろヴィッセル神戸から吉田孝行監督を筆頭に、7人のコーチングスタッフが一気に加わりましたからね。日本でも「監督+ヘッドコーチ」で動くケースはこれまでもありましたが、7人がセットで、というのはかなり異例。ヨーロッパ流のやり方を積極的に取り入れる、実にソリさん(反町康治GM)らしいチャレンジですよ。

 昨シーズンまでとは完全に別のチームになるはずで、今年のエスパルスは「チーム吉田」で戦うんだという決意表明でもある。果たしてこれが成功して、今後のモデルケースになるのかどうかという意味でも注目しています。

佐藤 ただ、ここまで大幅にスタッフを入れ替えることで、ハレーションが起こる危険性もあると思うんです。ソリさんがうまくコントロールできればいいけど、当然、前任の秋葉(忠宏)さんを慕っていた選手もいるでしょうし、ちょっと刺激が強すぎるような気もしますよね。

――なるほど。では、池田さんの注目チームは?

池田 すぐに結果が出るかどうかは分かりませんが、楽しみなのはガンバ大阪。ドイツ人のイェンス・ヴィッシング監督が就任して、めちゃめちゃ筋トレをやっていますよ(笑)。宇佐美貴史いわく「人生で1、2を争うくらい辛いキャンプ」だと。その反動なのか、トレーニングマッチのパフォーマンスはなかなか上がりませんけど、水谷尚人社長は「この筋トレをガンバのスタンダードにする」と話していましたね。

――ヴィッシング監督は、Jリーグインターナショナルの欧州拠点「J.LEAGUE Europe」が構築したデータをもとに推薦された、数人の監督候補の中の1人だそうですね。

池田 それもJリーグとのつながりが強い水谷社長だからこその施策でしょうね。こうして異例な形で招へいした監督が結果を出せるのかどうかも、この百年構想リーグの注目ポイントです。選手ではレンタル復帰組、なかでも中村仁郎(←FC岐阜)と中野伸哉(←湘南ベルマーレ)の2人がいい。特に左サイドバックの中野はキレキレで、退団した黒川圭介(→DCユナイテッド)の穴は問題なく埋まりそうです。一方の中村も、武者修行に出て人間的に一皮むけたというか、大人になった。右サイドでボールを持ったら、全部カットインしてシュートまで持ち込んでやろうっていうメラメラ感もいいですよ。

 心配だったキャプテンに就任した中谷進之介の怪我ですが、キャンプ最後のトレーニングマッチには出場していたので開幕には間に合うと思われます。キャンプでは新加入のルーキー、池谷銀姿郎(←筑波大)がアピールしていて、バックアップも厚くなっているなと。

土屋 ガンバのある主力選手に話を聞いたんですが、とにかくハイプレスで、縦の意識がかなり強いサッカーだって言っていましたね。ヴィッシング監督って、ロジャー・シュミット(前ベンフィカ監督)が駆け出しのころに、監督と選手としてドイツ4部のチームで一緒にやっていたんですね。その後、指導者になってからも、PSVやベンフィカでシュミットのアシスタントコーチを務めています。

――シュミットは今、Jリーグのグローバルフットボールアドバイザーを務めていますね。

土屋 だからたぶん、今回の監督就任はシュミットの推薦もあったかもしれません。シュミットもハイプレスで縦に速いサッカーを志向していますから。

佐藤 ヴィッシング監督は、練習中も前を意識したプレーをすごく褒めるんですよ。ただ、トレーニングマッチをやった後にもフィジカル的なメニューを入れるので、怪我をするんじゃないかっていう心配は常にありましたけど。そのあたりのバランスをうまく取れるかどうか。「これをやっていけば強くなるって、選手同士で言い合いながら頑張っています」と話していた新加入の植中朝日(←横浜F・マリノス)が、実際に怪我(左膝内側半月板損傷)をしてしまったのは残念ですが……。

スキッベが去った広島とスキッベ招へいの神戸

新たな働き場所を求めたスキッベ(左)と吉田の両監督。吉田体制に終止符を打った神戸はスキッベ招へいで練習の雰囲気がガラリと変わった 【(C)J.LEAGUE】

――イーストとは異なり、ウエストは監督を代えたチームが多いですよね。神戸とサンフレッチェ広島も新体制で百年構想リーグに臨みます。

佐藤 FC東京との練習試合しか見ていないんですが、広島がやっていたのはミヒャエル・スキッベ監督時代の延長線上のようなサッカーでした。ただ、後方からつなごうとする意識は少し強まっていましたね。

 バルトシュ・ガウル新監督は38歳という若さで、塩谷司の1つ上なんですけど、塩谷や佐々木翔のようなベテランに関しては、選手と相談しながら練習メニューを組むなど、彼らをやる気にさせるマネジメントを見せています。一方で塩谷のほうも「監督を支えたい」といった発言をしていて、今のところ両者のコミュニケーションはうまく取れているようですね。スキッベ時代は試合後に2日間のオフを与えるなど、かなり休養日が多かった印象ですが、それでも昨シーズンはルヴァンカップが獲れた。もう少し練習量を増やせば、もっと上に行けるんじゃないかと、もし選手たちにそういう感覚が生まれているなら、期待は持てそうです。

――補強に関してはどうですか?

佐藤 決定力不足の前線に鈴木章斗(←湘南)を加えられたのはかなり大きいですよ。ただ気掛かりは、田中聡(→フォルトゥナ・デュッセルドルフ)がいなくなったボランチ。浦和から松本泰志を獲りましたけど、田中とはタイプが違いますからね。練習試合ではセンターバックの山﨑大地をボランチで試していましたが、ボールを奪うという部分に関しては不安が残りますね。

池田 僕が見た練習試合だけかもしれませんが、スキッベ時代よりもつなぐイメージを持たせたいという意図なのか、なんと荒木隼人がセカンドチームに落ちていたんです。その1試合限りのことかもしれませんけど、現役の日本代表センターバックを外してまで、というのは強いメッセージですよ。

──では、そのスキッベを新監督に迎えた神戸の仕上がり具合は?

池田 吉田監督の時代は練習からとにかくピリピリしていて、見ているこちらがヒヤヒヤするくらいの緊張感がありました。それがスキッベを招へいして、さらに清水から秋葉さんをコーチとして迎えたのも大きいと思いますが、練習の雰囲気が変わりましたね。スキッベさんらしいのは、キャンプ初日からいきなり紅白戦をしていたこと。もともとスキッベさんって、基本的に練習ではミニゲームか紅白戦が多くて、そこで選手の実力を見極める監督ではあるんですけど、それが良いほうに出るのか、悪いほうに出るのか、注目したいですね。

 ただ神戸には、スキッベさんの志向するオールコート・マンツーマンにハマる人材がそろっていると思うんです。神戸の選手たちは総じて秩序レベルが高いですからね。さらに神戸では広島時代の3バックではなく4バックを採用しそうです。問題はスペインに渡った宮代大聖(→ラス・パルマス)の穴でしょう。ここをどう埋めるかですが、僕が期待しているのは郷家友太(←ベガルタ仙台)。在籍3年間で二桁得点を2回マークした仙台時代と同じ活躍ができれば、十分に宮代の代わりは務まるはずです。

――昨シーズンに3位と大躍進した京都サンガF.C.についてはどう見ていますか?

土屋 スタイル的に変化はないでしょうが、僕が一番大きいと思うのは、前徳島ヴォルティス監督の吉田達磨さんがヘッドコーチとして加わったこと。とにかく選手受けがいい指導者で、モチベーションを上げるのが本当にうまいから、選手も「この人の指導を受ければ成長できる」と思えるんです。曺貴裁監督とは、かつて日立製作所で一緒にプレーした仲で、あの2人が満を持してタッグを組むのも興味深い。

 残念なのは、マルコ・トゥーリオ、ラファエル・エリアスとともに強力3トップを形成していた原大智が、ザンクトパウリに移籍してしまうことです。ゴール数はラファエル・エリアスが圧倒的ですが、原は昨シーズンもチーム最多の8アシストと、周りを活かしながらゴールに関与できるアタッカーでしたからね。それでも、曺さんのサッカーに適した福田心之助、須貝英大という両サイドバックをはじめ、タレントはそろっています。今年も上位争いに加わってくると見ていますよ。

池田 京都の最大の懸念は、宮本優太(→浦和レッズ)が移籍したセンターバックですよ。平岡大陽(←湘南)と本田風智(←サガン鳥栖)を補強し、齊藤未月も完全移籍に移行して中盤の駒が豊富になった一方で、宮本の穴は埋め切れていない。新加入のエンリケ・トレヴィザン(←FC東京)も、ハイラインサッカーに向いているとは思えませんからね。

 そこで奮起を期待したいのが、走力のあるアピアタウィア久。伸び悩んでいますけど、曺さんにとっては流通経済大でコーチをやっていたころの教え子でもあるし、チャンスは与えると思うんです。昨年の鹿島アントラーズとの優勝争いの重要な一戦では、74分に足がつって交代になってしまうのですが、そこまではキャリア最高と言ってもいいようなパフォーマンスを披露しました。今年は彼が安定して結果を出せないと、京都はセンターバック問題で苦しむことになるかもしれません。

土屋 僕は宮本の代役として、いわきFCから加入した“デュエルキング”の石田侑資にすごく期待しています。左右両足を遜色なく使えて、サイドバックもできる器用な選手で、市立船橋では高2でキャプテンをやっていたくらいリーダーシップも備えている。いわきで鍛えられて体つきも逞しくなったし、京都のサッカーにも合うと思いますよ。

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