J1・J2・J3の戦力を徹底分析 百年構想リーグの見どころは?

鹿島など継続路線クラブの優位性と“追試組”が問われる真価 3人の識者によるJ1百年構想リーグ展望座談会【EAST編】

YOJI-GEN

鹿島は小川(右)、柏は瀬川(左)などを昨季途中に補強。すでに十分な戦力を整えている継続路線の2チームが、EASTの優勝候補筆頭だろう 【(C)J.LEAGUE】

 2月6日のJ1百年構想リーグ開幕を前に、ジャーナリストによる展望座談会を実施。毎年恒例のこの企画だが、昇降格のないハーフシーズンの特別大会だけに、それぞれキャンプ取材では通常のシーズン前とは異なる印象を抱いたようだ。日頃から精力的にJリーグを追いかける佐藤景、土屋雅史、池田タツの3氏が語り合う座談会の前編では、EASTの10チームの仕上がり具合と、注目選手を見ていく。

降格がない特別大会で危機感が薄れている

――まずはEASTから見ていきたいと思いますが、注目ポイントはどのあたりになりますか?

池田 百年構想リーグという新たな試みは、楽しみである一方で、不安もけっこう大きいですよね。優勝チームには2026-27シーズンのAFCチャンピオンズリーグエリート(ACLエリート)出場権が与えられるとはいえ、昇格も降格もありませんから。最初につまずいたクラブはグダグダになってしまうのではないかと、すごく心配しています。序盤で負けがかさんだら、「もうテストでいいか」と割り切るチームも出てくるかもしれない。そうなったらJリーグの価値自体が下がってしまいかねません。

佐藤 本気で優勝を狙うのか、賞金を取りにいくのか、それとも8月から始まる26-27シーズンに向けて、このハーフシーズンはチームづくりのために使うのか、ですよね。

池田 キャンプを取材していて感じたのは、従来よりも開幕が早いにもかかわらず、ちょっと新しいことにチャレンジしすぎているというか、時間がかかりそうなことをやっているチームが多いなということ。降格がないことで、危機感が薄れている印象を受けました。

 そうした中で結果を出すのはどういうチームなのかと考えると、やっぱり鹿島アントラーズのような継続路線のチームなんですよね。開幕に必死で間に合わせようという感覚を持っているチームが少ないから、昨シーズンのチャンピオンが開幕ダッシュを決めて、そのまま最後まで走る可能性は高いと思います。

佐藤 昨シーズン、就任1年目だった鬼木(達)監督は、自分がやりたいサッカーではなく、現有戦力を生かしながら勝つサッカーを選択して、それで結果を出したと思います。ですがこの2年目は、例えばビルドアップの部分とか、自身がこれまでの監督キャリアで培ってきたものを示したいと思っているかもしれません。

 ただ、その割には大きくメンバーが変わっていないんですよね。現在の陣容でもそれができると思っているのか、あるいはこの百年構想リーグを使って、夏からの新シーズンに向けて仕込むつもりなのか。昨シーズンのスタイルのまま、現状維持では当然、連覇は難しいと思うので、そこにどういうやり方でプラスアルファをしていくのか。そのあたりが見どころだと思います。

土屋 鹿島は今年も強いと思います。主力がまったく流出していないし、各ポジションに2人以上のレギュラークラスがいますからね。だから、そもそも大きく変える必要がないんじゃないかなと。この戦力でブラッシュアップできるだろうと、鬼木さんもそう踏んでいると思いますよ。

 鹿島もそうですが、J1ではこのオフにまったく補強してないチームがけっこうあるんですね。そういうチームはこの半年を戦力の見極めに使い、夏にシーズンが始まるタイミングで大きく動こうとしているんじゃないかなと。鹿島に関して言うと、すでに十分な戦力が整っていますし、今回、ユースから高校2年生が2人昇格していますが、今、鹿島はユース年代で無双していますからね(笑)。鹿島ユースのスタメンはほとんどが年代別代表ですし、向こう5年くらいはアカデミーからどんどんいい選手がトップチームに供給されるんじゃないかと。そうした強みも鹿島にはあるんです。

池田 僕は毎回、この開幕前の座談会で言っていますけど、結局今のリーグ戦ってシーズン中にどれだけ効果的な補強ができるかどうかだと思うんですよね。昨シーズン、それが一番うまかったのが鹿島で、けが人はけっこう出たけれど、代表経験のある小川諒也を25年6月に獲得するなど、当意即妙で手当てをしてすぐに穴を埋めた。だからこそ選手層が厚くなって、現状では補強の必要がないんです。今年の鹿島もシーズン中にバシバシ補強をしてくると思いますよ。

土屋 それで言うと柏レイソルも同じですね。昨シーズン中に馬場晴也、小見洋太、小西雄大、瀬川祐輔、そしてゴールキーパーの永井堅梧を補強していますからね。さらに今回、“リカルドチルドレン”とも呼べる汰木康也(←ヴィッセル神戸)と大久保智明(←浦和レッズ)も加わった。鹿島や柏のように、昨年の補強がバシッとハマって、その選手たちを組み込んだ状態で戦える継続路線のチームは、この百年構想リーグでも上位に来るんじゃないかと思いますね。

池田 結局、昨年うまくいったチームが継続できるから有利なんですよ。逆にうまくいかなかったチームが一からつくり始めると、やっぱり百年構想リーグの開幕には間に合わない。

――ただ百年構想リーグには間に合わなくても、このハーフシーズンを使ってチームをつくり直してもいいわけですよね?

佐藤 ACLの出場権枠を狙っているチームばかりではないですからね。名古屋グランパスの新監督に就任したミシャ(・ペトロヴィッチ)も、「4月、5月までは選手を試しながら戦う」と話していましたけど、特に監督が代わったチームはそういう割り切った戦い方をしてもいいと思います。

水戸と千葉にとってはラッキーな猶予期間

昇格組の水戸と千葉は、おそらくこの百年構想リーグを強化のために充てるはずだ。約4カ月という期間を使ってJ1の強度に慣れたい 【(C)J.LEAGUE】

――EASTで鹿島、柏以外に興味深いチームはありますか?

佐藤 先日、FC東京の川岸(滋也)社長にお会いしたときに、「昨年はスポーツナビの予想で上位に挙げてもらったのに、まったく期待に応えられずにすみません」と言われたんですが(笑)、そのFC東京も継続路線なんですよね。ただ練習試合を見る限り、新しいことにチャレンジしようとしていて、簡単に言うともっとつなごうとしているんです。

――松橋(力蔵)監督が、アルビレックス新潟時代にやっていたようなサッカーを?

佐藤 そうなんですけど、コンセプトはあっても、チームとして消化するのには、まだまだ時間がかかりそうだなという印象を受けましたね。

――FC東京は、山田楓喜(←京都サンガF.C.)、橋本健人(←新潟)、稲村隼翔(←セルティック)と、このオフでは補強したほうですよね?

佐藤 稲村なんかはここでしっかり活躍しないと、キャリアが暗転してしまいかねませんから、頑張ってほしいですけどね。本人も「ここで頑張って高く飛びたい」と言っていたし。ただ、彼のように復活を期す選手や、才能をなかなか開花できずにいる若手にとっては、けっこうチャンスが多いんじゃないですか、百年構想リーグって。通常のシーズンよりも試すっていう要素が強いでしょうからね。若い選手をたくさん見られそうなのは楽しみです。

土屋 EASTでは水戸ホーリーホックとジェフユナイテッド千葉が昇格組ですが、例年だとJ2から上がってきたチームは前半戦はなかなかJ1のレベルとか強度になじめないんですよね。中盤戦くらいから良くなっても、結局前半戦の遅れが響いてまたすぐに降格してしまう。それが今年は2月から5月までJ1のレベルを体感した上で、8月からの新シーズンに臨めるわけです。それって昇格チームにとってはけっこうなプラス材料なんじゃないかと思っていて。

 実はEASTで監督が代わったのって、水戸だけなんですよね。とはいえその水戸も、新監督の樹森(大介)さんは水戸のユース監督を長くやって、10年以上クラブに関わってきた方ですからね。23年と24年はトップチームのコーチもやっていましたし、チームのことも選手のこともよく分かっている。それに前任の森(直樹)さんがフットボールダイレクターとして強化部門に入り、24年に引退したレジェンドの本間幸司さんがゼネラルマネジャーに就任したことも含めて、樹森さんをバックアップする体制は整っています。あとはJ1初体験の選手が多いので、逆に彼らがこの約4カ月間でJ1を知ったときの伸びしろみたいなものがプラスに作用すれば、けっこう面白いんじゃないかなと思いますね。

――夏からの26-27シーズンが楽しみ、ということですね?

土屋 そうです。正直、水戸や千葉が百年構想リーグで優勝を狙いにいくとは思えないし、おそらくこの期間は強化に使うって振り切るはずなので。昇格チームにとって、いわば4カ月間の猶予があるのはラッキーですよ。

池田 水戸は沖縄キャンプで、ゴールキックのときにサイドバックもハーフウェーラインより前に上げるビルドアップの練習に時間を割いていたんですけど、開幕には絶対に間に合わないなって。やっぱり水戸は守備のチームで、ローブロックからミドルブロックで相手をはね返すサッカーが特徴ですからね。樹森さんは「チームとしての幅をつくるために、とりあえずすべて教えます」と話していましたけど、だとすると百年構想リーグで結果を出すのは難しいでしょうね。

土屋 これは記事を読んで、なるほどなって納得したことなんですが、樹森さんは昨年、半年間とはいえ新潟でJ1を体感して、このステージで戦うにはある程度ボールを持てるようにならなきゃいけないと分かったようなんです。J1のチームって相手陣内ではほとんどがマンツーマンで来ますし、それに屈してロングボールを蹴っちゃうと、結局はね返されて拾われて、ずっと攻め続けられてしまう。だから、水戸でもこの時期に、最低限ボールをつなぐっていう意識を浸透させておかないと、昨年の新潟みたいなループにハマってしまうと考えているんでしょうね。

池田 だとすると、補強がちょっと心許なくないですかね。今の選手たちに仕込むのは時間がかかるし、だったらそれを体現できるような選手を1人でもいいから獲りたかった。

佐藤 僕は水戸と名古屋の練習試合を見たんですが、まだ選手が怖がってボールを受けないんですよね。だから自陣から出られない。結局試合は1-7で負けるんですけど、前向きにボールを出せないから下げて、それをかっさらわれて失点するシーンが何度かありました。ただ、それでもやろうとしているんです。今、土屋くんが言った通り、つないで前に行けないと、J1では本当に耐えきれませんから。

 試合後にJ1経験のある飯田貴敬が、「J1の強度にビビってる選手が多い」と話していましたが、この段階では樹森監督もあえてそう感じさせているような気もするんですよね。たぶん時間はかかるけど、ここでやっておかないとその先には行けないし、まして8月からの新シーズンで残留はできないと。

――そういう意味でも、水戸や千葉のようなチームにとってこの半年という期間は大きいし、いいタイミングで昇格できましたよね。

佐藤 本当にそう思います。J1仕様にするための時間がありますからね。

1/2ページ

著者プロフィール

新着記事

お知らせ

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント