見えたバスケ界の“就職活動”が持つ厳しさ 「?」が多かったBリーグ初ドラフトの内幕
招待選手が置かれた過酷な状況
彼は佐賀県出身で、ドラフト前から佐賀バルーナーズ入りを熱望していた。だからこそ、喜びもひとしおだった。
「地元でプレーすることが、小学校のときから思い描いてきた夢だったので、とても嬉しかったです。本当に指名されるかずっと不安でした。不安が9で、期待を1残すくらいの気持ちで来ていました。でも指名いただいた瞬間に安心しました」
NPBのドラフトは「ドラフト候補の招待」をしない。有力候補の所属先にメディアが出向き、生中継をすることもある。しかしBリーグの認知度や取材するメディアの数を考えると、「候補を一カ所に集める」ほうが効率的・現実的だ。
今回のドラフトは会場に18選手が招待された。客観的に見て、ドラフトにエントリーした108名の中でも実力者が集められていた。要は「最終面接」まで残った猛者たちだ。
ただ今回のBリーグドラフトはそんな彼らの扱いが冷たく、「氷河期の就職活動」を彷彿とさせる内幕もあった。
招待選手の交通費は「自腹」で、武富も熊本からの旅費を自己負担していた。無収入の大学生にとって、決して小さな金額ではない。息子からの相談を受けた家族が費用の提供を申し出て、武富はドラフト会場にやってきた。
会場へ駆けつけたにも関わらず、指名されなかった選手は9名いる。そのうち3選手に話を聞いたが、塚本智裕(大東文化大)と月岡煕(日本体育大)の2人は「プレミア待ち内定」がなく、これからプレーする場を探す意思表示をしていた。
佐古は複雑な心境について、こう語ってくれた。
「今はBリーグでやる方が強いのかなと思います。Bワン、Bネクストのどこになるか分からないですけど、とりあえずバスケを続けていければなと思っています」
当然ながら内定先が「いつまで待てるか」という問題もある。話し合いの末に、辞退へ向かうことがあるのかもしれない。いずれにせよ、ドラフト開催時期の遅さは、今後も選手を苦しめるだろう。
白鴎大のキャンパスがある小山から水道橋まで、新幹線を使えば往復7200円かかる。佐古は大学生にとって決して小さくないお金を負担して、2時間のストレスを味わった末に、落胆して寮に戻ったはずだ。
SNSでは「なぜ指名されない選手まで会場に呼んだのか」という指摘を多く目にしたが、確かに残酷な様子がそこにはあった。経費の扱いも含めて「採ってやる」「呼んでやる」という傲慢さが透けて見えた。次回のドラフトは2027年1月の予定だが、招待選手の「交通費自腹」だけは避けてほしい。
想定される新人の「Bプレミア離れ」
日本の野球界でも、近年は有力高校生の大学進学、有力大学生が社会人入りする「ドラフト回避」のトレンドがある。引退年齢の低下も一つの背景で、10月のドラフトに先んじて大学、社会人の内定を確保する発想が選手側に強まっている。大学、社会人の「2027年」に向けたスカウトはまさに今(2026年1月)が佳境と聞く。
Bリーグはアマチュア野球、Jリーグに比べると「内定の遅い」カテゴリーだった。ただ今回の結果は選手や親、学校側の焦りをより強めるだろう。
Bワン、Bネクストはドラフトに参加せず、自由に選手を獲得できる。時期もBプレミアより先に動ける。報酬はBプレミアよりも安いが、日本人選手の出場枠が広いため、プレータイムは得やすい。下のカテゴリーで経験を積んで成長して、ステップアップするキャリアは当然ある。
そう考えると「新人のBプレミア離れ」「内定の早期化」は不可避だ。