見えたバスケ界の“就職活動”が持つ厳しさ 「?」が多かったBリーグ初ドラフトの内幕

大島和人

招待選手が置かれた過酷な状況

武富楓太は「最後の1枠」をつかんだ 【(C)B.LEAGUE】

 3巡目3人目で最後に名前を呼ばれたのが武富楓太(東海大九州)だ。今回は11選手が指名を受けたが、武富は西日本の大学からの唯一の指名でもあった。

 彼は佐賀県出身で、ドラフト前から佐賀バルーナーズ入りを熱望していた。だからこそ、喜びもひとしおだった。

「地元でプレーすることが、小学校のときから思い描いてきた夢だったので、とても嬉しかったです。本当に指名されるかずっと不安でした。不安が9で、期待を1残すくらいの気持ちで来ていました。でも指名いただいた瞬間に安心しました」

 NPBのドラフトは「ドラフト候補の招待」をしない。有力候補の所属先にメディアが出向き、生中継をすることもある。しかしBリーグの認知度や取材するメディアの数を考えると、「候補を一カ所に集める」ほうが効率的・現実的だ。

 今回のドラフトは会場に18選手が招待された。客観的に見て、ドラフトにエントリーした108名の中でも実力者が集められていた。要は「最終面接」まで残った猛者たちだ。

 ただ今回のBリーグドラフトはそんな彼らの扱いが冷たく、「氷河期の就職活動」を彷彿とさせる内幕もあった。

 招待選手の交通費は「自腹」で、武富も熊本からの旅費を自己負担していた。無収入の大学生にとって、決して小さな金額ではない。息子からの相談を受けた家族が費用の提供を申し出て、武富はドラフト会場にやってきた。

 会場へ駆けつけたにも関わらず、指名されなかった選手は9名いる。そのうち3選手に話を聞いたが、塚本智裕(大東文化大)と月岡煕(日本体育大)の2人は「プレミア待ち内定」がなく、これからプレーする場を探す意思表示をしていた。

佐古竜誠(右)は「候補」の一人だったが指名を受けられず 【撮影:宮本將廣】

 佐古竜誠は12月の第77回全日本大学バスケットボール選手権大会(インカレ)で白鴎大の主将としてチームを優勝に導き、自身も優秀選手賞に輝いた有望選手だった。彼は不動産会社からの内定を得ていて、2月3日に面談を行う予定だ。

 佐古は複雑な心境について、こう語ってくれた。

「今はBリーグでやる方が強いのかなと思います。Bワン、Bネクストのどこになるか分からないですけど、とりあえずバスケを続けていければなと思っています」

 当然ながら内定先が「いつまで待てるか」という問題もある。話し合いの末に、辞退へ向かうことがあるのかもしれない。いずれにせよ、ドラフト開催時期の遅さは、今後も選手を苦しめるだろう。

 白鴎大のキャンパスがある小山から水道橋まで、新幹線を使えば往復7200円かかる。佐古は大学生にとって決して小さくないお金を負担して、2時間のストレスを味わった末に、落胆して寮に戻ったはずだ。

 SNSでは「なぜ指名されない選手まで会場に呼んだのか」という指摘を多く目にしたが、確かに残酷な様子がそこにはあった。経費の扱いも含めて「採ってやる」「呼んでやる」という傲慢さが透けて見えた。次回のドラフトは2027年1月の予定だが、招待選手の「交通費自腹」だけは避けてほしい。

想定される新人の「Bプレミア離れ」

待たされる選手たちは辛かったに違いない 【(C)B.LEAGUE】

 2027年1月に向けて「何が起こるか」を読むのは容易だ。Bワンは25クラブで、Bネクストは4クラブだから、「育成の受け皿」としてそこまでの広さがない。全クラブ合わせて20〜30名程度の「新人採用枠」はあるだろうが、とはいえBプレミアでプレータイムを取れない選手も下に降りてくる。

 日本の野球界でも、近年は有力高校生の大学進学、有力大学生が社会人入りする「ドラフト回避」のトレンドがある。引退年齢の低下も一つの背景で、10月のドラフトに先んじて大学、社会人の内定を確保する発想が選手側に強まっている。大学、社会人の「2027年」に向けたスカウトはまさに今(2026年1月)が佳境と聞く。

 Bリーグはアマチュア野球、Jリーグに比べると「内定の遅い」カテゴリーだった。ただ今回の結果は選手や親、学校側の焦りをより強めるだろう。

 Bワン、Bネクストはドラフトに参加せず、自由に選手を獲得できる。時期もBプレミアより先に動ける。報酬はBプレミアよりも安いが、日本人選手の出場枠が広いため、プレータイムは得やすい。下のカテゴリーで経験を積んで成長して、ステップアップするキャリアは当然ある。

 そう考えると「新人のBプレミア離れ」「内定の早期化」は不可避だ。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、バレーボール、五輪種目と幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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