見えたバスケ界の“就職活動”が持つ厳しさ 「?」が多かったBリーグ初ドラフトの内幕
さらに「1巡目」は23クラブのうち8クラブが参加を辞退した。1巡目1位(全体1位)を引き当てたサンロッカーズ渋谷は山﨑一渉(ノーザンコロラド大)を指名。全体2位の茨城ロボッツは東海大を2年で中退する赤間賢人を指名した。ただし全体3位の権利があった千葉ジェッツは1巡目の指名を避けた。
なお「指名回避」のアナウンスが23回も繰り返された。
指名が11名にとどまった背景
2025-26シーズンのB1には「仮にドラフトがあったらドラフト経由でないと契約できなかった新加入選手」が26チーム合計で31名いる。そう考えると、来季は新人が大幅に減ることになる。
島田慎二チェアマンはメディアから感想を求められ、こうコメントしている。
「基本ポジティブです。11名、そしてユース優先交渉枠が3名で、この世代から14名が(Bプレミアで)プレーできる挑戦権を得ました。二つ難しい要因があって、一つはサラリーキャップです。若い選手にどこまで投資するかの判断はクラブにとって難しかったと思います。あと今シーズンはシーズンインまでにプロ契約をすれば、ドラフトを回避できるルールがあったので、おそらく十数名、このドラフトにかかる選手が参加しない状況でした」
今季の開幕前に絞っても、佐藤涼成(広島ドラゴンフライズ)、小澤飛悠(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)、渡邉伶音(アルティーリ千葉)らは開幕前の大学中退を選択した。さらにアメリカの大学、プレップスクールでプレーする選手も多くが早期の帰国を選択している。
Bドラフトは新人の「基準報酬」が大幅に引き上げられている。それは選手にとって一見メリットだが、その金額に見合っていなければ指名をされないシビアな現実が裏腹だ。それを踏まえて、多くの選手は「駆け込みプロ入り」を選択した。
とはいえ、11名はやはり少ない。1巡目11位だった川崎ブレイブサンダースの北卓也ゼネラルマネジャー(GM)は、「指名ゼロ」の背景をこう説明する。
「(残っている)確率は少ないですけど、1巡目の候補が数名いて、その選手がダメなら……という感じでした。ウチには若い選手が今いるのでそれを育てるところと、あとは(登録の)枠が14名なので、そこも考えなければいけません」
日本のプロ野球ならば二軍があり、また球団側は最短でも7シーズンは選手をキープできる仕組みだ。だから即戦力でなくても、育てる猶予がある。Bリーグは選手との契約期間が最大4シーズン。しかしドラフト組はクラブが選手の移籍を抑えられる期間がわずか2シーズンで、「すぐチームに貢献できる」ことが獲得の前提となる。
北GMは続ける。
「なかなか即戦力の選手はいません。育成はやはり時間がかかるし、フリーエージェント(=他クラブと自由に交渉し、移籍できる状態)になってしまいます。その辺は難しいところでした」
どのようなイベントに?
仙台89ERSの志村雄彦社長は、選手として2008年のbjリーグドラフトで仙台から1巡目7位の指名を得ている。仙台も誰も指名しなかったクラブだが、彼はドラフトに対してポジティブな受け止めをしていた。
「bjのときよりも非常に夢のある状態で、みんなが憧れる金額設定をされていると思います。背景にはバスケット界の成長があります。そこを目指すことで、盛り上がっていくのではないでしょうか」
bjリーグのドラフトは1巡目の最低年俸が300万に設定されていたが、それでも「金額の高さ」故に途中から指名選手が減った。六本木のヴェルファーレで開催された2005年の第1回は別だが、次第に地味な進行、演出になった。
Bリーグドラフトはというと、派手すぎず地味すぎず、淡々と進んだ。指名された選手は島田チェアマンに名前を読み上げられ、ステージ中央に呼ばれる。(クラブでなく)Bリーグの白いキャップを被せられ、黒いボールを渡され、選手がスピーチをする進行だった。
各クラブの関係者はフロアの丸テーブルに座り、記者やカメラはその後方に陣取る。「3階席」では家族、エージェント、選手会関係者などが見守り、NPBドラフトのようなファンの観覧はなかった。映像設備はあったものの煽りVTR、選手のハイライト映像などもなく、場内が「沸く」場面はほぼ無かった。
長崎と滋賀がドラフト直後に「連携」を発表
「自分は不安の方が強かったですけど、こういう形で終われてとても嬉しいです。(家族は)叫んでいて、一緒に泣いてきました。一番大変だったのはスピーチですね(笑)メールで『スピーチがある』と来て、それからずっと練習していました。人生で一番と言えるくらい、緊張していました」
選手はフォーマルな服装を指定されていたため、全員が就職活動のような初々しいスーツ姿で出席していた。指名を受けた選手はクラブや家族、チームへの「感謝」を伝えていた。演出としては地味だったが、本人にとってはいい思い出になっただろう。
なお、田中は取材終了後に驚きの展開があった。田中の指名権を得た滋賀レイクスと、岩下准平(筑波大)の指名権を得た長崎ヴェルカが「連携合意」をしたという内容のリリースが流れてきた。それぞれの選手契約締結が前提だが、両クラブが育成契約選手制度に基づき期限付移籍するスキームだ。「育成契約選手制度」とは来季から、設けられる若手選手のトレード制度だ。
長崎ヴェルカの伊藤拓摩社長兼GMは岩下を「レンタル」する意図をこう説明する。
「岩下選手は何回も練習にも来てもらって、ポテンシャルある選手ですし、育てたい選手です。選手オプションも含めて3年、選手と一緒にいるってなったとき、来季のプレータイムを考えたとき、よりポイントガード(PG)が必要なクラブに行って、経験を積むことが大事だと考えました」
田中についてはこう口にする。
「ウチに限らず、(外国籍選手が増える)Bプレミアでどういう選手が必要かといったら、ルーカス選手のようなマルチなポジションのディフェンスができる選手です」
長崎は在籍3年目まで見越して「2年目以降」を踏まえた選択をした。長崎は1巡目6位で、滋賀は1巡目17位だった。岩下は事前の評価がかなり高いPGで、滋賀の指名までは残っていないことが想定されていた。
田中は194センチのウイングプレイヤーで、スイッチDFを多用する長崎との相性がよく、ロールプレイヤーとして使い勝手のいいタイプだ。二人にはメディア発表の少し前に「移籍構想」について伝えられたという。