バドミントン日本代表、辞退者が相次ぐ背景とは? あえて「自費遠征」を選ぶ選手も

平野貴也

男子複の山下/緑川は組み替え示唆、日本代表だけでは決められないペアリング

 男子ダブルスの山下/緑川については、日本代表を率いる大堀均ヘッドコーチ(以下、大堀HC)が「ロサンゼルス五輪を目指す上で、今年は(五輪出場権獲得レースの大会で)シード権を獲得するために、来年の4月まで(世界)ランキングを上げる時期。選手たち、所属先が試行錯誤しながらペアリングを模索している。その辺を踏まえて、今回は選出しないという形」と説明し、組み替えの可能性を示唆した。3月の全英オープンには、山下が岡村洋輝(BIPROGY)とのペアでエントリーしている。

 2024年夏のパリ五輪後、日本代表主力の引退や種目転向によるペアの組み替えが活発になっている。緑川は、2025年の日本代表に2種目で選出されていたが、全日本総合選手権から混合ダブルスのパートナーを変更。パリ五輪の女子ダブルスで銅メダルを獲得した松山奈未(再春館製薬所)との新しいペアで活動を始めており、1種目に専念する可能性もある。

 日本代表の意思でペアを編成できない環境について、大堀ヘッドコーチは「日本代表チームだけですべてを決めて動かすことはできない仕組み。所属企業、所属チームがあり、選手たちがそこから吸い上げられて代表チームになる流れ。ペアリングについては、所属と共通理解を図る作業はできますけど、100%の主導権を握ってのコントロールは、できない。歯がゆさがないかと言われればゼロではないですが、企業、選手と話し合いながら進めていかなければいけない」と話した。日本代表でありながら、選ばなかったのではなく、選べなかった事情が存在している。

問われる、日本代表の存在意義とマネジメント能力

代表選考に関する質疑に応える大堀HC 【平野貴也】

 日本代表は、2004年のアテネ五輪で惨敗した後、前任の朴柱奉HCを招へい。所属チームでの強化から代表チームでの強化に変更し、五輪でメダルを獲得できるレベルまで飛躍的に成長した。現在は、当時の選手が各チームの指導者。世界での戦いを日本代表に一任する意識ではなく、それぞれが方針を持つ時代になった。ペアリングの問題は朴HC時代から存在するが、近年の日本協会の財政難により、代表活動でも自費参加など選手や所属先企業の自助努力を要し、以前よりも各々の意向に理解が必要な状況だ。選手や所属先が、自由度を増した部分もあるが、日本代表チームの強化は難度を増している。

 辞退者が増えれば、日本代表は存在意義を問われる。池田本部長は「海外で自由に活動したい選手に対して、何ができるか考えていかなければ。我々としてもパートナー企業で支えられている。企業に対しても、どういう提供価値ができるか、同時に考えなければいけない。選手、パートナー企業、協会の最適な着地点を一生懸命探さないといけない」と問題意識を示した。大堀ヘッドコーチは、渡辺の代表辞退に「私の立場からすると、やはり一緒にやりたい。これは、間違いなく根底にあります」と本音を吐露。山下/緑川についても「全日本総合で2連覇。年明けの(国際)大会でも決勝まで(進み)パフォーマンスも上がっている。本当に今が旬くらいのペア」と選出できなかった思いをにじませた。

 前任の朴HCが強化を始めた約20年前に比べれば、はるかに恵まれた戦力を有している。しかし、時代背景の変化により、当時はなかった新たな問題を抱えている。さらに言えば、次世代の強化が遅れており、積極的な若手の引き上げ策も必要としている。大堀HCが就任時に掲げた目標は、ロス五輪で過去最多3個のメダル獲得。代表チームでの一元化した強化が難しくなる中、選手やチームとのバランスを取ったかじ取りで目標を達成できるか。日本代表は、マネジメント能力が問われている。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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