「ピカチュウはケガをしない?」 なぜポケモンがメジャーリーガーらを魅了するのか

丹羽政善

カブスのジェームソン・タイヨンも大のポケモンファンだ 【Photo by Matt Dirksen/Chicago Cubs/Getty Images】

MLBに広がるポケモンネットワーク

 昨年の日本開幕戦(ドジャース対カブス)の期間中、アンソニー・バンダ、コナー・マクギネス投手コーチ補佐らと、東京・六本木のポケモン本社などを訪れことを紹介した。
 アメリカに戻ってきてから、割と早い段階で、カブス対ドジャースの試合がドジャー・スタジアムで行われたが、そのときジェームソン・タイヨンから声をかけられた。

「ポケモンの本社に行ったんだって? 俺も行きたかった」

 タイヨンも大のポケモンファンだという。

「ベン・ブラウンと一緒に秋葉原へポケモンカードを買いに行ったんだ。でも、SNSにバンダたちが本社に行った様子が流れてきて、そっちに行きたかったなって、話していたんだ(笑)」

 彼らがポケモンファンだというのは、日本にいる時点では知る由もなかったが、やがて、MLBにはポケモンネットワークのようなものがあって、誰々と誰々が集めている、という話が入ってくるようになった。

 いかついメジャーリーガーが、ポケモンに夢中になるイメージのギャップ。昨シーズン、そんな彼らと折に触れて接し、その一端をうかがい知ることができた。

 元々、メジャーリーガーにポケモンファンが多いという話を教えてくれたのは、ブレーブスのピアース・ジョンソン(このオフ、レッズに移籍)とディラン・リーだ。それは一昨年の半ばまでさかのぼるが、昨年5月、ドジャースの遠征に帯同してアトランタへ行ったとき、2人は口をそろえた。

「一番のコレクターは、クリス・セール。俺たちの比じゃない」

 セールのことは、タイヨンからも聞いていた。

「Dバックスのジョーダン・モンゴメリー(2025年7月にブリュワーズに移籍)もポケモンが大好きで、彼が『セールの熱量は、半端ではない』と言っていた」

 そのセールとも5月の遠征期間中に話をすることができた。

ディラン・リーがプレイヤーズ・ウィークエンドで着用したスパイク。左が25年。右が24年 【写真:本人提供】

 その日、クラブハウスに行くとまず、リーに捕まった。

「これを知ってるか?」

 見せられたのは、ポケモンとSuicaのコラボカード。初めて見た。

「どうしたの?」と聞くと、「彼にもらった」。その視線の先にセールがいて、ちょうどこちらに向かって歩いてくるところだった。

 セールももらったらしいが、こちらを見ながら会話の内容を察したのか、苦笑している。

「こんなのに夢中になるなんて、俺たち、ヤバイだろ? ちょっと問題を抱えている」

 そのままセールについて行くと、ロッカーの前に山積みになっている専用のカードケースの中から、いくつか珍しいカードを見せてくれた。バインダーではなく、すべてマグネットローダーに収められていて、カードの解説が始まると、他の選手が集まってきた。

「何か新しいカードを手に入れたのか?」

 それまでセールは、あまりメディアと話すタイプの選手ではない、という印象だった。いつ行っても、クラブハウスにはいない。あまりインタビュー映像も見たことがない。ところがこのときは、話が止まらなかった。それぞれのカードのうんちく。なぜ、価値があるのか。どう珍しいのか。

 聞けば、ポケモンカードを集め始めてから「まだ、3年ぐらい」だという。

「それまで興味がなかったけど、弟が好きで、あと、息子が興味を持ち始めた。それで少し買い始めたら、止まらなくなった。いまでは、フロリダの自宅に専用の部屋がある」

 その部屋の映像も見せてくれた。壁一面にゴールドカードが輝いていた。

「なっ? 俺たちヤバイだろ」

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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