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幻のアシストをはじめ決定的なプレーを連発 完全復調した三笘が見られるのはもうすぐだ

森昌利

プレミア第23節のフラム戦。残念ながら試合には負けたが、三笘は何度も決定機を作り出した 【Photo by Mike Hewitt/Getty Images】

 三笘薫が1月24日(現地時間、以下同)のフラム戦で復調を強烈にアピールした。惜しくもゴールには結びつかなかったが、後半29分の“幻のアシスト”をはじめ決定的なプレーを連発。後半アディショナルタイムの逆転弾でチームが敗れ、本人にとっては悔しい限りだっただろう。それでもコンディションが戻ってきているのは確かで、次節以降の大活躍を予感させた。

そうそう見られない三笘の満面の笑み

後半29分、ウェルベックの一撃がゴールラインを越えたのを見届け、それを演出した三笘が喜びを爆発させる。復調を強く印象づける素晴らしいプレーだった 【Photo by Mike Hewitt/Getty Images】

 これほど素直に喜びを爆発させた三笘薫の姿は本当に珍しい。

 ブライトンが1点リードしていた後半27分。左サイドバックのオリビエ・ボスカーリがロングボールの落下点を見誤った。

 ボールがボスカーリの頭を越えた先に、フラムFWサムエル・チュクウェゼが走り込んだ。そこからGKとの1対1に持ち込まれ、左足でファーサイドに流し込まれて被弾。ミスが絡み、ブライトンにとってはがっくりの同点弾を決められた。

 三笘が歓喜したのはそのわずか2分後のことだった。

 同点にして意気上がるフラムが押し込む。必死に守るブライトン。ペナルティエリア内のこぼれ球を、中盤から最終ラインに下がっていたディエゴ・ゴメスが前方へ蹴り出した。

 その先にいたのがベテランFWダニー・ウェルベック。35歳FWは相手ゴールを背にした状態でゴメスのクリアボールをダイレクトで捌き、自分の左後ろにいた三笘に預けた。

 この時点で三笘とウェルベックの前にいたフラムの選手は2人。しかし後ろから猛然とデンマーク代表DFヨアキム・アンデルセンが追いかけ、挟み込むようにして三笘のスペースを消しにきた。

 ところが28歳日本代表MFはここで細かいフェイントを入れながら、これまた繊細なタッチのドリブルで相手を翻弄して20メートルほど進むと、ここしかないというコースを突いて、最終ラインをすっぱりと切り裂くスルーパスを放った。

 その先にウェルベックが走り込み、ものすごい勢いで競りかけてきたDFライアン・セセニョンのスライディングタックルをほんの一瞬早くすり抜け、ボールを左足でフラム・ゴールの右隅に流し込んだ。

 ボールがゴールラインを割ったことをウェルベックのすぐ後ろで確認した三笘は、すかさずブライトン・サポーターで埋まる右前方のアウェー席へ、右手の人差し指を突き出しながら脱兎のごとく走り寄った。

 その顔に満面の笑みが浮かんでいたのだ。

スタジアムにいた誰もがゴールだと確信

終了間際の逆転ゴールで敗れ、肩を落とす三笘。突き放すチャンスは何度もあっただけに…… 【Photo by Izzy Poles - AMA/Getty Images】

 三笘の晴々とした表情とは対照的に、フラム・イレブンはショックでうなだれていた。幸運なゴールで同点にしたばかりだというのに、日本代表MFとウェルベックの素晴らしいコンビネーションであっという間に勝ち越されたのだから、それも当然だろう。次のキックオフに備えて、とぼとぼとハーフウェーラインに向かっていた。

 両軍の選手をはじめ、スタジアムにいた誰もが間違いなくゴールだと信じていた。

 ところがこの2分後、VARにより、ウェルベックの右肩がわずかにオフサイドラインを越えていたことが発覚して、ブライトンの勝ち越し弾が取り消された。

「I hate VAR」(VARなんか大嫌いだ!)

 本当は「VAR」の前に放送禁止用語のFワードが入っていたが、ブライトン・サポーターがそうチャントしたのも無理はなかった。

 これで三笘の華麗なアシストも消滅した。

 しかもこの試合、後半アディショナルタイムの2分目に、元リバプールのウェールズ代表MFハリー・ウィルソンに25メートルのすさまじい直接FKを決められて、ブライトンは逆転負けを喫してしまった。

 19世紀後半のフラムFC創設以来のホームスタジアム、西ロンドンのテムズ川沿いにある伝統のクレイヴン・コテージの記者席からはピッチが目の前で、試合終了のホイッスルが鳴ると、筆者はガックリと肩を落として下を向いた三笘の失望をはっきりと見た。

 何かこの試合に欠けていたものがあったのだろうか? リーグ戦の1試合を落としたにしては、三笘の憔悴は大きすぎるように思った。

 できればこの疑問を試合後の取材エリアで本人にぶつけてみたかったが、残念ながら三笘が我々記者団の前に姿を現すことはなかった。

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著者プロフィール

1962年3月24日福岡県生まれ。1993年に英国人女性と結婚して英国に移住し、1998年からサッカーの取材を開始。2001年、日本代表FW西澤明訓がボルトンに移籍したことを契機にプレミアリーグの取材を始め、2025-26で25シーズン目。サッカーの母国イングランドの「フットボール」の興奮と情熱を在住歴トータル30年の現地感覚で伝える。大のビートルズ・ファンで、1960・70年代の英国ロックにも詳しい。

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