J1・J2・J3の戦力を徹底分析 百年構想リーグの見どころは?

Jリーグのトレンドと世界との差――反町康治GMが描く清水エスパルス再建と百年構想リーグの戦い方

元川悦子

GM就任から約2年、改革を推し進める反町GM(左)と、清水再建を託され新天地にやって来た吉田新監督(右) 【元川悦子、(c)J.LEAGUE/(c)VISSEL KOBE】

 北中米ワールドカップ直後の8月にシーズン移行を敢行する今季のJリーグ。2月6日に開幕するハーフシーズンの百年構想リーグは、その一大イベントに向けて重要な試金石となる大会だ。各クラブはこの4カ月間の短期リーグをどう位置づけ、どう戦うのか――。そこで、清水エスパルスの反町康治GMに話をうかがった。ヴィッセル神戸でJ1連覇を達成した吉田孝行監督を招へいした清水のビジョンはどのようなものなのか。かつて日本サッカー協会の技術委員長を務めた反町氏の目には今のJリーグのレベルがどう映っているのか。

吉田監督は実績に対して評価が伴っていない

――2月6日から百年構想リーグが開幕します。清水はJ1西地区に入ったわけですが、このグループ分けをどう見ていますか?

 われわれは西地区の東端なので、移動距離が非常に長くなります。関東のクラブが揃った東地区は全て日帰り圏内ですが、我々は九州や関西に遠征して試合をしなければいけない。ミッドウイークの試合が少ない分、まだましですが、大変なのは確かです。

 そういう中で、いかにして自分たちのスタイルを磨き上げるかにフォーカスしなければいけない。西地区は名古屋グランパス、ガンバ大阪、ヴィッセル神戸、サンフレッチェ広島、アビスパ福岡と監督交代に踏み切ったところが多いので、新たなチームと対戦しながらチーム力を引き上げることが重要になってきますね。

――清水も吉田孝行監督を招へいし、新たな段階に突入しました。

 吉田監督は神戸時代にJ1連覇を達成し、2024年は天皇杯も獲得している。しかも2025-26シーズンのACLE(AFCチャンピオンズリーグ・エリート)でもチームを東地区首位へと導いています。それだけの実績を残しているにもかかわらず、少し評価が伴っていないと感じていました。

 今季のチームを託す前に本人と面談しましたが、本当にサッカーの本質をよく理解している。インテンシティやデュエルの重要性というのは昨今のサッカー界では当たり前に認識されていますけど、清水の場合は技術的なところが重視されがちだった。吉田監督はこのクラブの長所・短所を把握したうえで、足りない部分を強化してくれると確信した。だからこそ、来ていただいたんです。

――反町さんはこれまで吉田監督とは面識があったんですか?

 彼は自分が横浜フリューゲルス(現横浜F・マリノス)からベルマーレ平塚(現湘南)に移籍したあとにフリューゲルスに加入した選手。だから直接的な接点はなくて、挨拶程度でした。年が明けて一緒に働くようになりましたけど、とにかく仕事が早い(笑)。補強に関して相談しても「この選手ですね」とすぐに回答をくれるし、映像処理も自分で手掛けてミーティングも迅速にやってくれる。年齢が若く、適応力も高いので、チーム全体に緊張感が生まれて甘えがないプロフェッショナルのクラブの雰囲気になってきたなと実感しています。

 人間性も真面目で、常に選手をフラットな目線で見ているところにも共感が持てます。「目利き」と「指導力」の両方を兼ね備えている指導者はそんなに多くいませんが、彼はそのどちらも兼ね備えているんです。彼は神戸時代に(アンドレス)イニエスタを外してタテに速いスタイルにシフトしたことがありましたけど、選手の名前や実績、経験値に左右されない毅然とした判断力も備えている。そこは私も監督をやっていた時に一番大事にしていた部分なので、すごく納得させられますよね。

“MNMトリオ”を擁してもCL制覇できなかったPSGが…

メッシ、ネイマール、エムバペの退団直後にCLを制したパリ・サンジェルマン。決勝ではハイプレスや流動的なポジショニングでインテルを圧倒した 【Photo by Matthias Hangst/Getty Images】

――吉田体制に移行して最初の大会となる百年構想リーグはどういった方針で挑むのでしょう?

 この特別大会に向けては2つの考え方があると思うんです。1つは、少しチーム力が低下するかもしれないけど、夏開幕のリーグ戦に向けて若手に経験を積ませる場にするというプラン。もう1つは、タイトルに手が届くように実力勝負で戦うというプランです。

 清水としては後者を選びました。現有戦力のスキルアップも大事だし、昨年足りなかった部分をリノベーションし、改革を進めながら、勝負にこだわっていくと。一番いいのは、「ホップ・ステップ」が一気にできて、夏開幕のリーグで「ジャンプ」まで行くこと。本当にそうなるか分かりませんけど、それを目指すのがチームにとってベストな選択。吉田監督やコーチングスタッフ、選手たちもそこは理解しています。

――2025年のJ1では14位・総得点41・総失点51という成績でした。

 昨季は折り返し以降、思うように勝てない時期が続きましたね。後半戦は記憶に残るような試合がほとんどない。「なんとなく残留できそうだ」という空気感が漂ってからチームとしての士気がやや低下し、チーム内のヒエラルキーもより生まれてしまった印象がありました。

 そういう中でも残留できたのは、アルビレックス新潟と湘南の戦績に助けられた部分があったから。サッカーは負けることもあるので、結果自体はやむを得ない部分がありますけど、その負け方がよくなかった。そこをしっかりと検証して、今季に生かしていくことが重要ですね。

――清水の場合、もともと伝統的にボール扱いに秀でる選手は多いですけど、強度や走力、激しさという部分を引き上げていくことがその近道ではないですか?

 そうですね。今のサッカーはうまい選手を集めたら勝てるという時代ではなくなった。私がよく例に挙げるのが、パリ・サンジェルマンです。数年前の彼らはリオネル・メッシ(現インテル・マイアミ)、ネイマール(現サントス)、キリアン・エムバペ(現レアル・マドリー)の“MNMトリオ”を擁するスター軍団でしたけど、UEFAチャンピオンズリーグでは優勝できなかった。

 でも、昨季はそうした選手がいなかったのに頂点に立ちましたよね。清水も「うまければいい」という価値観から脱却しなければいけないと感じています。それともう1つ、清水の課題としては「何事も中庸」という点。何でもアベレージという状況から脱皮するには相当なエネルギーが必要。それを強く認識しています。

――日本サッカー協会で技術委員長を務めた反町さんの目には、Jリーグの近年のトレンドと世界との差はどう映りますか?

 まず2019年に優勝したマリノスのアンジェ(ポステコグルー監督)が革新的なスタイルを体現しましたよね。関係者全員がインテンシティやデュエル、スプリントの重要性を感じたはず。加えて、サイドバックがボランチの位置に入ってプレーするような戦術的プレーも融合させた。それは特筆すべきことだと感じます。

 その後、川崎フロンターレが黄金期を迎えた。(三笘)薫(現ブライトン)を筆頭に圧倒的な個の力で敵を凌駕(りょうが)したあのスタイルは興味深かった。そこからは神戸、町田ゼルビア、サンフレッチェ広島、鹿島アントラーズといった強度を押し出すようなチームが勝つようになっている。昨年の京都サンガもそうですが、強度プラス個々のスキル、監督の視座やマネジメント、クラブの強化部門を含めた総合力の高いところが上位を占めているのは紛れもない事実ですね。

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著者プロフィール

1967年長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに。Jリーグ、日本代表、育成年代、海外まで幅広くフォロー。特に日本代表は非公開練習でもせっせと通って選手のコメントを取り、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは94年アメリカ大会から5回連続で現地へ赴いた。著書に「U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日」(小学館刊)、「蹴音」(主婦の友社)、「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年」(スキージャーナル)、「『いじらない』育て方 親とコーチが語る遠藤保仁」(日本放送出版協会)、「僕らがサッカーボーイズだった頃』(カンゼン刊)、「全国制覇12回より大切な清商サッカー部の教え」(ぱる出版)、「日本初の韓国代表フィジカルコーチ 池田誠剛の生きざま 日本人として韓国代表で戦う理由 」(カンゼン)など。「勝利の街に響け凱歌―松本山雅という奇跡のクラブ 」を15年4月に汐文社から上梓した

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