「佑都は自分自身を疑っていない」「注目選手は…」 昨年202試合解説の林陵平が語る、2026年J1百年構想リーグの見どころ

元川悦子

圧倒的なサッカーIQと情熱で説得力ある解説が光る林陵平 ※3月のTHE国立DAYでのブランケット配布はございません 【スポーツナビ】

 2026年夏のシーズン移行を控え、2~6月に行われる明治安田J1百年構想リーグ。史上最速の2月6日開幕、しかもイースト(東)・ウエスト(西)の2グループのリーグ戦を経て最終順位を決める短期リーグということで、各クラブの動向が大いに気になるところだ。

 J1・全20チーム中、新監督を招聘したのは、J1初昇格の水戸ホーリーホック、2025年YBCルヴァンカップ優勝のサンフレッチェ広島など7チーム。特に東地区は昨季J1王者の鹿島アントラーズを筆頭に継続路線が中心。昨季築いたベースに上積みし、夏開幕の26-27シーズンにつなげていくことになりそうだ。

 その東地区の7チームが3月、立て続けに「THE国立DAY」を迎えるのも一つの見どころ。彼らを軸とした特別大会の注目点を、2025年・202試合解説という驚異的な数字を叩き出した元Jリーガー・林陵平さんにじっくりと伺った。

首都のクラブ・FC東京には自分たちのスタイルを明確に示してほしい!

長友佑都(左)・佐藤龍之介(右)の共闘するFC東京は躍進できるのか? 【写真:松尾/アフロスポーツ】

――今季のJ1百年構想リーグは関東勢結集となった東地区、西地区が清水エスパルスからアビスパ福岡までの広範囲の戦いになる西地区と、地域によってリーグの色合いが異なります。それを含めて、まず注目ポイントを教えていただけますか?

林 まず一番は降格がない点ですね。その分、さまざまなチャレンジができるシーズンになると思います。チームの戦術はもちろん、若手を重点的に起用するのか、ベテランも積極的に使っていくのかは監督次第でしょうけど、いろんなことができる場になりますね。

 百年構想リーグ自体は2~6月の4カ月間と短いですけど、どこも『1年半』という捉え方をしている。夏開幕の本番に向けて積み上げを図っていくことが最重要テーマになりますからね。東地区のクラブは動きが少なかったですが、この半年間でいろいろ見極めてから、必要に応じて夏に補強するという考え方なのかなと感じます。

――そういう中、積極的な動きが見られたのがFC東京です。松橋力蔵監督体制2年目の今季はアルビレックス新潟時代の教え子である稲村隼翔と橋本健人、2024年パリ五輪代表の山田楓喜ら即戦力を加えました。

林 そうですね。彼らも大きいですけど、ファジアーノ岡山にレンタル移籍していた佐藤龍之介の復帰は非常に大きい。彼は僕が今季一番注目している選手。昨年末に仕事で絡みがあって少し話をしましたけど、物凄く自信とモチベーションが感じられました。岡山での経験を踏まえ、FC東京でどういうプレーをするのかすごく気になります。

 岡山の3‐4‐2‐1、FC東京の4‐2‐3‐1とシステムも違いますし、彼がどこに入るのかは一つのポイント。2列目の真ん中かサイドでしょうけど、昨季浦和からレンタルで加入していた長倉(幹樹)が完全移籍し、トップ下に入るでしょうから、佐藤はサイドが中心になるのかなと。そこで大活躍できれば、2026年北中米ワールドカップ(W杯)の可能性もありますから、大いに期待したいですね。

――FC東京には林さんの明治大学時代の同期・長友佑都選手がいます。

林 佑都とは昨年末にも食事をしましたけど、メンタリティがずば抜けているなと再認識させられました(笑)。本人は『W杯には必ず行く』と公言していますけど、自分を全く疑っていないし、世界トップ基準に引き上げていけると自然に考えている。39歳という年齢になると『自分はベテランだから』という気持ちがどこかで出がちですけど、佑都にはそれが一切ない。超越した人間性にはリスペクトしかない。彼が半年間でどこまでパフォーマンスを上げられるかが本当に楽しみです。

――FC東京自体は昨季11位と苦しみました。

林 松橋さんも就任1年目でなかなか自分のやりたいことが出せずに苦しみましたけど、今季はセンターラインに新潟時代の選手が入りましたし、言い訳できない状況かなと。昨季はどういうフットボールをしたいのか少し不透明な部分があったので、方向性を明確に示してほしいと思います。近年のFC東京は中位が続いていますけど、首都のチームが優勝争いをすることで、リーグ全体がより盛り上がっていく。彼らにはその使命が託されていると感じますね。

城福浩監督率いる東京ヴェルディの課題は攻撃。誰が得点源になるのか?

林氏がゴール・アシスト合計10以上を期待する森田晃樹 【(C)J.LEAGUE】

――同じ東京のヴェルディは林さんがかつて所属したチームですが、どう見ていますか?

林 戦力補強が少なかった割に、谷口栄斗(川崎)という看板選手が抜けてしまったので、そこは痛いですね。ただ、全員がファイトして戦って失点をしないという城福(浩)監督のサッカーがハッキリしているのは強みです。その土台を生かしながら、攻撃をどう構築していくかが最重要テーマ。昨季のヴェルディは17位で、総得点がJ1最少の23。本当に点が取れない印象が強かったので、誰が得点源になるのかがすごく気になります。

――森田晃樹選手、染野唯月選手あたりがキーマンでしょうか?

林 そうですね。森田君とは現役の時に一緒にプレーしていますけど、数多くのオファーがある中、残留を決断したことは本人にとっても大きいこと。中盤なのでゴールという数字を残すのは難しいかもしれないけど、ゴール・アシストで10以上は取ってほしい。『うまい選手』から『怖い選手』に変貌してくれることを楽しみにしています。
 
 FWではやはり染野選手は重要です。昨季は5点ということで、もっと結果を残す必要がある。9番の意地を見せてほしいです。

「町田の注目選手は中村帆高。川崎のキーマンは谷口栄斗」

ケガから復帰した昨季は尻上がりに調子を上げた中村帆高。林氏が熱視線を送る男だ 【(C)J.LEAGUE】

――動きが少ないという意味では、昨季6位の町田ゼルビアも現状維持が目立ちます。

林 町田はオ・セフン(清水)やミッチェル・デューク(マッカーサーFC)が抜けましたけど、戦い方も明確ですし、非常に手堅いチームなので、現有戦力でも勝つ確率を十分に上げられます。そこに上積みが必要だとしたらやはり攻撃ですね。これまではロングスローやセットプレーで得点を取ってきたけど、ビルドアップからのオープンプレーでどう数字を増やしていくのか。全員が同じ絵を描いて崩していくのか。そこは改善が必要ですね。

――2022年カタールW杯日本代表の相馬勇紀選手が前線にいるのは心強い点です。

林 昨季の相馬は個人のパフォーマンスではJリーグで一番だったと僕は思っていて、最も目立っていた。彼もW杯を目指しているので、この半年で勝負をかけないといけない選手。シャドウでもウイングバック(WB)でもやれるし、違いを作り出せるので、すごく楽しみですね。最前線の藤尾(翔太)に相馬や西村(拓真)、ナ・サンホらをどう組み合わせるのか。同じ絵を描いた攻撃を完成させるためにも、前線のユニットを注視したいです。

――W杯予備軍という意味では望月ヘンリー海輝選手も注目すべき人材です。

林 ヘンリーは右WBに加えて3バックの右でもプレーする選手ですけど、昨季は日本代表に選ばれたことでより自信を持ってプレーできるようになったと感じます。ただ、まだまだ“優しさ”がにじみ出てしまう。もう一段階飛躍しようと思うなら、いい意味で悪い選手になってほしいというか、ずる賢いプレーヤーになることが大事。高さや身体能力含めて規格外のポテンシャルを持った選手なんで、頑張ってほしいですね。

 もう一人、注目しているのが中村帆高。ケガからの復帰以降、非常にいいプレーをしていたと思うので、ここから1年半継続して活躍してもらいたいです。彼が右WBに入ると、ヘンリーは3バックの右になってしまうけど、町田の場合はACLE(AFCチャンピオンズリーグ・エリート)との掛け持ちもありますし、うまく回していけるのかなと見ています。

――一方で、8位の川崎フロンターレは長谷部茂利監督体制2年目。「絶対に優勝してACLE出場権を取る」と意気込んでいます。

林 昨季の川崎は期待値をやや下回ったのかなと。失点が57と多かったですし、攻撃の爆発力も少し足りなかった。そういう中、伊藤達哉が非常に素晴らしいパフォーマンスを見せ、得点力を発揮した。彼は今季もチームを引っ張る原動力になるでしょう。

 そこに長谷部監督を熟知している紺野和也が入った。彼が攻撃面でどんな変化をつけるかは一つ楽しみな点。サイドには家長(昭博)もマルシーニョもいますから、どういう配置がベストなのかを探ることになります。トップ下の脇坂泰斗や大関友翔、ボランチの山本悠樹や河原創などMFの人材はとにかく豊富。最適解を早く見出したいところ。(中村)憲剛さんがコーチに入りましたし、その効果も楽しみな部分です。

 一方で守備は谷口にかかる部分が大。移籍組ですけどチームを引っ張っていかないといけない存在。本当にキーマンになりますね。

1/2ページ

著者プロフィール

1967年長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに。Jリーグ、日本代表、育成年代、海外まで幅広くフォロー。特に日本代表は非公開練習でもせっせと通って選手のコメントを取り、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは94年アメリカ大会から5回連続で現地へ赴いた。著書に「U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日」(小学館刊)、「蹴音」(主婦の友社)、「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年」(スキージャーナル)、「『いじらない』育て方 親とコーチが語る遠藤保仁」(日本放送出版協会)、「僕らがサッカーボーイズだった頃』(カンゼン刊)、「全国制覇12回より大切な清商サッカー部の教え」(ぱる出版)、「日本初の韓国代表フィジカルコーチ 池田誠剛の生きざま 日本人として韓国代表で戦う理由 」(カンゼン)など。「勝利の街に響け凱歌―松本山雅という奇跡のクラブ 」を15年4月に汐文社から上梓した

新着記事

お知らせ

編集部ピックアップ

菅楓華がただ一人のアンダーパーで6打差圧…

ゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント