世界一から一転し薄氷のWBC予選、自己ワースト打率も“挑戦”だった1年 台湾主将語るプレミア12のその後

加賀一輝

台湾代表主将の陳傑憲にインタビューを実施。日本でのトレーニングの合間に答えてくれた 【写真:加賀一輝】

 2026年はWBCイヤー。侍ジャパンの連覇に注目が集まる中、相手国の動向も見逃せないところだ。今回は台湾代表の主力選手のひとり、陳傑憲(チェン・ジェシェン/統一ライオンズ)を直撃。自身のことや代表についてはもちろん、台湾からNPBに参戦する選手たちに関しても語ってもらった。

 本稿では主に自身や所属チームのこと、台湾代表での活動について綴る。

2025年は“挑戦”の1年

 台湾リーグ(CPBL)を代表する安打製造機で、代表チームでは主将を務める陳傑憲。その甘いマスクとシュアな打撃で台湾では人気を博しており、特に一昨年のプレミア12優勝以降は「国民的英雄」として崇められている。

 日本にも縁が深く、高校は岡山県の岡山共生出身。1学年上には呉念庭(元西武・現台鋼ホークス)がいた。プレミア12の決勝で戸郷翔征(巨人)から試合を決める3ランを放った打者として思い出す方もいるかもしれない。

 まず、昨季のことを振り返ってもらおう。

「個人的には“挑戦”の1年でした」

 その心は?

「プレミア12で優勝した後、いろいろな方々に良くしてもらえた一方で、これまでにないプレッシャーを感じました。ただ、優勝のおかげで多くのファンの方に球場へ足を運んでもらったので、プレッシャーがある中でも挑戦しようと思える1年でした」

 現在の台湾は空前の野球ブームが訪れ、昨季はCPBL全体で歴代最多の300万人以上を動員。各地の球場は熱気に包まれた。

 そんな中で、陳傑憲は不振に陥っていた。右手首を痛めた影響もあり、10年目にして初の打率3割未満(.277)。「ケガで安定的に試合に出られなかったのは(不振の)要因の一つ」と本人は振り返る。右手首痛はヘッドスライディングの際に手をついたことがきっかけで、「もうヘッドスライディングはやらなくなりました」と苦笑いを見せる。

 チームの主力かつリーグの顔ゆえに、球場内だけでなく球場外での各種対応も増えたそうだ。そこのバランスをどう取るかに腐心したことも含め、“挑戦”の1年だったといえよう。今オフは野球に集中できる環境を求め、日本でのトレーニングも行っている。

日本人ピッチャー・髙塩将樹とのコミュニケーション

 陳傑憲の所属する統一ライオンズは、前期優勝を果たすもプレーオフで楽天に敗退。アドバンテージを含む2勝0敗から3連敗を喰らい、逆転での台湾シリーズ進出を許した。最終戦も9回3点リードを追いつかれ、延長戦の末に敗戦。バッドエンドを迎えてしまった。

「上半期は調子が良いのですが、下半期になると良いパフォーマンスを出せない。この3年間ぐらいはずっと同じ状況が続いています。チームが若手主体なのもありますが、やはり大事なのは“失敗”。どこが上手くいっていないのか、そこから改善してやっていかないといけない。私も失敗からどう成長していけるのか、何を学べるのかを大事にしています」

 オフには主力野手の流出があり、正捕手の林岱安(ベストナイン1度&ゴールデン・グラブ賞2度)が富邦ガーディアンズにFA移籍。主砲の林安可(昨季.318&23本塁打)はNPBの西武へ移籍した。それでも陳傑憲はチームリーダーとして前を向く。

「2人は中心選手でしたし、今季も若手を中心に戦っていかないといけない。私としてはプレー以外にも若い選手たちがいかにプレーに集中できるかを考えて、アプローチや心掛けを大切にします」

 チームには日本人投手の髙塩将樹がいる。NPBの所属経験はなく、独立リーグから台湾の社会人チームを経て、35歳でCPBL入りを果たした。昨季は勝ちパターンに入り、25ホールドをマーク。最優秀中継ぎ賞を獲得している。

「髙塩さんのキャリアは非常に良いモデルだと思います。若い投手はもちろん、私たち野手にも刺激になります。もっと真面目に、真剣に野球に取り組まないといけないと思わせる存在です。30歳を超えても投げられるのはすごいことですし、昨季の前半は一時的に抑え役もされていました。前期優勝は髙塩さんのおかげと言っても過言ではありません」

 その言葉からは髙塩が異国の地でリスペクトされている様子が伺える。ちなみに、陳傑憲と髙塩のコミュニケーション方法は「日本語と台湾語の半分半分」だという。

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著者プロフィール

1988年3月6日、愛知県生まれ。成蹊大学卒業後、一般企業を経て独立。ライティング、MCなど幅広く活動する。2016年〜23年まで『スポーツナビ』にて編集・編成を担当。在職中に五輪・パラリンピックへの派遣、『Number』『文春オンライン』等への寄稿を経験。趣味は草野球で、1週間で20イニング投げることも。

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