どうなるBリーグ初ドラフト【応用編】 責任者が語る制度の狙いと背景、展望

大島和人

事前に行われた順位決めの抽選ではSR渋谷が全体1位を引き当てた 【(C)B.LEAGUE】

 Bリーグは「B.革新」と称するリーグの方向転換を進めている。2026年秋には現B1に変わる日本のプロバスケの最上位カテゴリーとして「Bプレミア」が発足する。サラリーキャップ(年俸総額上限制限)とサラリーフロア(年俸総額下限制限)が設けられた「戦力均衡」を目指すリーグだ。

 そんな改革の目玉として導入されるのが「ドラフト制度」だ。Bリーグドラフト2026は、1月29日に開催される。Bプレミアに参加する 26クラブのうち23チームが出席して開幕に8カ月先んじて行われるイベントだ。1巡目の全体1位は、2025年12月22日のロッタリー(順位決めの抽選)でサンロッカーズ渋谷が引き当てている。

 今回はBリーグドラフトの責任者でもある増田匡彦・常務理事に、制度に関する取材をお願いした。制度の内容は前編(入門編)でお伝えしたとおりだが、後編は「応用編」として制度導入の理由と背景、実際の運用、今後の展望についてお伝えしていく。(取材・構成:大島和人)

リーグ事務局が23年11月にクラブへ提案

――シンプルな質問ですが、ドラフトをやる理由についてご説明をお願いします。「戦力均衡」は当然あるでしょうが、少し広めにお話をいただけますか?

増田 ドラフトをやってよかったと感じる一つの理由は、例えばインカレ(全日本大学バスケットボール選手権)の注目度上昇です。現場に行きましたがB1の関係者も沢山いましたし、プロとアマの接続がドラフトからできるのではないか?と強く感じました。そのような副産物を狙っていたわけではないですけど、思った以上に注目されていました。

 その後もコンバイン、ロッタリーと沢山のメディアさんが来て、注目いただいています。Bリーグの価値を高める上で、ドラフトには事業的な意味があったなと感じます。

 もう一つ、現状はどうしても関東の大学が強く、指名されそうな選手も集中しています。遠くで活動しているクラブは、関東の大学生へのアプローチがなかなかしづらかったですから、機会均等の意味でもいい施策だと思います。

――戦力均衡というポイントに絞ると、サラリーキャップもあります、ドラフト単独が持つ影響はあまりないのではないでしょうか?

増田 短期的にはそんなに無いかもしれません。それでも選手が各地に散らばって、数年経つとその効果が徐々に出てくるという見方をしています。

――「スカウト体制」についてお尋ねします。専属のスカウトを置くクラブも出ていますが、総じて本格的な体制は整っていないように見えます。

増田 そこはまだ弱いですね。ドラフトとサラリーキャップが導入され、編成チームの力量が問われる時代になって、仕事も増えるはずです。なので「編成をGM(ゼネラルマネージャー)ひとりでやっている」「社長がGMを兼ねている」クラブは厳しくなるでしょう。強化部をGM補佐、もしくはアシスタントGMも含めた2名体制にして、スカウトのような人たちも抱えて「編成チーム」「スカウト部門」を作らないとなかなか勝てない時代が来るはずです。サラリーキャップができたことで、選手に投資する金額は抑えられます。その背景には「フロントスタッフを充実させてほしい」という意図もあります。

――「B.革新」「Bプレミア」を巡る制度の議論の中で、ドラフトはどう浮上して、どういう議論で決まったのですか?

増田 よく覚えていますけど、2023年11月1日に大きな案件をいくつか議論に入れました。都内のホテルに全クラブが集まったとき、ドラフト、サラリーキャップと言った「大玉」を入れて、そこから本格的な議論が始まりました。ドラフトについてはそこから6カ月で、6回くらい実行委員会をやったように記憶しています。「ユースはいらない」という意見が出たし、「ユースやっているのにドラフトをやるのか?」という懐疑論もありました。こちらがユース優先交渉権などを提案して、方向性を徐々にまとめました。

――リーグがたたき台を作って、クラブの意見を吸い上げて、修正をするプロセスですね。「早期導入」「環境が整ったら導入」「反対」といった温度感はどうでしたか?

増田 基本的にはみんな賛成で、島田(慎二チェアマン)を含めて「やろうよ」という方向性が事務局にありました。

 最終的には全体の総意として決めたことですが、数名「ユースをやっている以上ドラフトは成立しないのでは?」と疑問を呈する方はいらっしゃいました。それでも最初から「今すぐやろう」側のクラブが多かったと記憶しています。B.革新ということで「変化をアピールするためにも、ドラフトが必要」という意見が多かったと記憶しています。

「1月下旬開催」の理由と問題

25年12月18日にはドラフト本番に向けた合同テストも開催された 【(C)B.LEAGUE】

――プロ野球のドラフトは10月下旬の開催です。Bプレミアのドラフトは1月末の開催で、就職活動がもう完全に終わったタイミングです。これだけ遅い時期にした理由はどうですか?

増田 僕らは当初「9月」の開催を提案していました。正式契約は1年後になりますが、早く選手の進路を決めてあげたかったからです。対してチーム側は「ベストパフォーマンスの選手を見て、それから指名したい」という主張が強かったです。

――サッカーでも野球でも一般企業の内定を先に得てから「プロスポーツの就職活動」をする選手が結構います。1月末のドラフト後に内定を辞退したら企業は困るし、トラブルにつながるのでは?と心配です。

増田 私たちもそこは懸念して、一般企業の人事の方にヒアリングをしました。どの企業とは申し上げられませんが、皆さんがよく知っているような、堅い人事制度を設けていらっしゃるメーカーの方が相手です。その人事の方が言ったのは「そういうルール、条件を事前に分かっていれば別に内定を辞退しても対処は可能」という内容です。

――20年前は内定を辞退したら呼び出されてコーヒーをかけられる、監禁されて詰められるといった話も聞きましたが、今の就職活動は平和ですね……。

増田 なので、そのようなヒアリングもあったので、大きな懸念はないだろうと判断しました。そもそも日本の大学生についてはドラフトの前にコミュニケーションを取っていいし「指名する」「指名されれば行く」というやり取りもできます。それも含めて1月にしようとなりました。

――近年は各世代のトップ選手ほどアメリカに留学して、NCAAでプレーしています。ドラフト1巡目1位も「海外組」が占めることは増えると思います。彼らのドラフトにおける扱いはどうなりますか?

増田 1月はリーグ戦の最中で、3月からはNCAAトーナメントもあります。日本の高校大学に在籍する選手は交渉期間が「3月末」までですが、NCAA組は交渉期間を6月末まで伸ばしています。これでNBAドラフトの結果も待てます。

 NCAAのルールとして、事前にコミュニケーションを取ることまでは許容されています。しかしシーズン中の交渉、意思表示は認められていません。志望届も出せないので、NCAAに在籍する選手は志望届を不要にしています。

――NCAA組が指名されると「おめでとう」と言えない、インタビューが取れないといったエンターテインメントとしてのマイナス面が出ます。そこは時期の設定に当たって、考えませんでしたか?

増田 志望届を出す、プロ志望のリストに載せることさえ規定に引っかかるとは正直分かっていませんでした。NCAA側に問い合わせをして、打ち合わせもして、何度かメールの往復もありましたけど、答えは変わりませんでした。一方で「指名をいただいて光栄です」というような、儀礼的なコメントは出せると思います。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、バレーボール、五輪種目と幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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