春高バレー4連覇に挑んだ24歳の新監督 駿台学園が激闘の中で示した躍動と成長
大村工業、星城、東福岡、鎮西、洛南、東山、日本航空――。そのうち星城が13、14年に、東福岡が15、16年に連覇を達成した。
記憶や記録に残る強いチームや、大会を代表する選手が巣立っていった中、前人未踏の記録を打ち立ててきた、まさに春高の王者と呼ぶにふさわしいチームがある。東京代表として16年連続出場を誇る駿台学園。春高初優勝を三冠で飾ったのは17年。23年から昨年まで三連覇の偉業を達成していた。
周囲だけでなく本人も「驚き」だった監督就任
メンバーを見れば下級生が主軸を担い、チームの主将も2年生の落合康陽が務める。昨年まで三連覇を成し遂げた選手は抜けたが、やはり駿台学園は強い。その印象に間違いはない。だが振り返れば、三連覇からの一年は、まさに激動の日々だった。
強者の駿台学園が、もがき、苦しみながら這い上がってきた。その強さを最後の最後で見せつけたのが、チームで掲げた「春高優勝」という目標に向けてすべてを尽くした今年の春高だった。
4月から駿台学園の新監督に就任した高橋真輝にとって、そもそも“監督就任”など寝耳に水の出来事だった。駿台学園を全国屈指の強豪へと導いた梅川大介前監督が、大阪ブルテオンのアカデミーダイレクターへ就任すると発表されたのは昨年3月。わずか2カ月前に春高三連覇を成し遂げた高校界の名将の転身に驚く声が挙がったが、梅川監督の教え子で、コーチから引き継ぐことになった高橋監督にとってもまさに驚きの出来事でしかなかった、と笑う。
「先生の車に乗って移動している時に、次、監督頼む、と言われたんです。先生がブルテオンに入ると発表される2~3週間前、しかも助手席じゃなくて僕は後ろの席に座っていたので、ほんとに、え? という感じで。当然断る間もなく(笑)、でも『やります』といった記憶もない。ほんとですか? としか言えなかったです」
同期には伊藤吏玖(東京グレートベアーズ)や染野輝(ヴォレアス北海道)、SVリーグのチームに属する選手も多い。日大在学時から「自分もSVやVリーグで指導に携わりたい」と考えていたこともあり、梅川前監督から誘いを受け、コーチは経験してきたが、監督など想像もしていなかった。最初の大会は3月のさくらバレー。梅川前監督もベンチに入る中、「めちゃくちゃ緊張した」という新指揮官の初陣は準々決勝で敗れたが、真の意味で大変さを実感したのは梅川前監督が学校を去り、事務員として仕事もしながら監督業がスタートした4月から。
「体育館の予定を確認して、外の体育館を抑えることや練習試合や合宿の日程を組んだら、校長先生に届け出の書類をつくらないといけない。大会が始まってからも目の前の試合や練習だけでなく、選手のジャージを新調しなければならなかったり、学校の仕事もある。僕はまだ事務員なので定時が過ぎれば部活に専念できますが、先生は担任も持って授業もして、学年主任もしていたので、とんでもない仕事量だったんだ、と改めて実感しました」
8月のインターハイで得た自信
駿台学園の中で要とも言うべきポジションであるセッター、3年生の堀内晴翔もその一人だった。
「去年のチームは3年生が中心で、コートの中も3年生が多かった。そこで見せていた姿とかプレー、チームの引っ張り方。自分たちが同じようにはできないのはわかっているけど、やっていかないといけない。まずチームとしてどう進むか、と考えて動くことから大変でした」
インターハイや関東大会に向けて都大会も始まり、毎週のように練習試合も組まれる。そこで結果を得られて手ごたえもつかめれば自信に変わるが、思うような結果は得られずむしろ自信を失うばかり。特に5月の鎮西との練習試合では「完璧にやられた」と堀内は苦笑いで振り返る。
「真輝さんからも(梅川)先生からも『今年日本一を目指すなら常に鎮西をターゲットにしないといけない』と言われていたんですけど、実際は一つもセットを取れなかったし、20点取れたのも一つだけ、というレベル。結構ちゃんとやられました」
だが、8月に島根・松江で開催されたインターハイでは光明が差した。堀内が「まだコンビの面では全然できていなかった」という大会ではあったが、トーナメントの初戦で東山に勝利し、準々決勝で清風と対戦した。駿台学園と同様に下級生主体のチームだが豊富なキャリアを持つ選手が揃う。鎮西は頭一つ抜けていたが、対抗馬の一つとして挙げられる強豪相手に勝利した。
3セットマッチとはいえ、真夏の連戦が続く大会で春高と同じダブルヘッダー。あり得ない日程の中ではあったが、疲労が蓄積した清風に対し、駿台学園の守備力と、レシーブからの攻撃展開が光り、新チームになってからはベストゲームと呼ぶにふさわしい試合でベスト4進出。翌日の準決勝は市立尼崎に敗れたが、それでも「清風に勝った」という余韻はチームに力と自信を与えた。