春高準Vの清風が演じた2時間28分の“ベストゲーム” チームの総力を結集した激闘と涙の誓い
「男子って、今はあんなにラリーが続くの? 永遠に終わらないんじゃないかっていうぐらい両チームともに上げるから、びっくりしたんだけど」
日本代表戦を除けば、おそらく最も多くの観客とメディアが集まるバレーボールの国内大会は春高だ。普段バレーボールを見たり、撮ったりする人ばかりではない。「びっくりした」と振り返るのは、前日の男子、清風対駿台学園の準決勝。フルセットに及んだ2時間28分の激闘を制し、清風が7年ぶりの決勝進出を果たした一戦は、戦術と技術、そして「絶対に負けない」という気迫と闘志と魂がぶつかり合う、近年の中でもベストゲームと呼ぶにふさわしい試合だった。
試合終了は19時48分、翌日の13時半から行われる決勝へ向けた時間は圧倒的に足りない。疲弊した身体でも懸命に戦った結果、決勝は東山に1対3で敗れたが、清風高を率いる山口誠監督は一切の言い訳をせず、ただ真っすぐに「悔しい」と言う。
「(ホテルに)帰った時点で21時、それから治療を終えたら0時過ぎて、8時に朝食を摂ってミーティング。選手もアナリストも時間がほぼない中で、目に見えて疲労の回復ができていなかったというのは正直なところですが、それは自分たちが(準決勝の)駿台戦を3対0で勝てるチャンスがある中でフルセットまで行ったからであり、取るべきところで取らないといけないのがトーナメント。だからそこはちゃんと受け入れなければいけないし、選手たちは振り絞って戦ったからこそ、負けた後、東山の選手が応援団と喜んでいるとき、彼らには『ちゃんと見とけ。来年はうちがこうなるぞ。絶対に忘れるな』と伝えました」
練習を重ねて求めてきた「1本」
負けた、という結果だけでなく、すべてを出し切れたかと言えばそうではない。集大成ともいえる春高ですべての力を発揮し、目指す目標を叶えるために。11月に大阪代表決定戦で春高出場を決めてから、さまざまな武器を磨いてきた。
特に重視したのが、オフェンス面だ。もともとブロックとレシーブが連動したディフェンス力には定評があったが、そこからいかに得点をもぎ取るか。セッターの森田陸(2年)を軸に、中心はエースの尾﨑亮太(3年)、西村海司(1年)だが、さらにもう1つの武器として練習を重ねてきたのがミドルブロッカーの田原璃晟(2年)のバックアタックだ。
バレーボールを始めた小学生の頃から器用で、ミドルブロッカーでありながらも練習ではバックアタックを打ち、清風高に入学後も1年時から春高でプレーした経験もある。これまでもやろうと思えばできたプレーではあるが、田原は「大事なところでの精度が足りなくて、打てるけど最終的に実践しようというレベルまでたどり着けなかった」と苦笑いを浮かべる。
だが、チームとして分厚い壁を乗り越えるためには、まず個々が目の前にある課題をクリアして、一歩先に進まなければならない。山口監督の根気強い指導のもと、森田とコンビの精度を磨き、昨年末の近畿私学大会から試合でも打ち始めた。春高でも、上位進出や優勝を視野に入れたチームの中には、序盤の1、2回戦では手の内を隠すチームも少なくないが、貴重な実践の場でもある試合で出さない選択肢はない。3回戦と準々決勝が同日行われるダブルヘッダーでも、森田の考えはシンプルだった。
「一番大事なのは勝つこと。自分たちがやるべきことをやって勝つために、何も隠す必要はないし、隠すつもりもないです」
タイミングや精度、決まった後の爽快感。準々決勝まではなかなか得られずにいたものが、完璧に近い形で披露されたのがセンターコートでの準決勝、駿台戦の第1セット中盤だ。18対13とリードを大きく広げた場面で2本続けてバックライトからのスパイクが鮮やかに決まる。田原も森田も、練習を重ねて求めてきた1本がやっと決まった、というだけでなく、一番大事な場面で決めた喜びを爆発させた。