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日本人の魂を揺さぶる三笘のスーパーゴール! マンチェスター・Cを畏怖させた同点弾の衝撃

森昌利

1月7日のマンチェスター・C戦に先発出場した三笘は、昨年9月13日のボーンマス戦以来となる今季2ゴール目を決めた 【Photo by Clive Mason/Getty Images】

 1月7日(現地時間、以下同)のマンチェスター・シティ戦で、三笘薫が復調を強烈にアピールした。怪我から復帰して、スタメン出場はこれが2試合目。劣勢のなか、後半15分に決めた起死回生の同点弾は、技術的にもハイレベルな素晴らしいゴールだった。約4カ月ぶりに得点を挙げ、強豪相手のアウェー戦でチームに貴重な勝ち点1をもたらしたエースは、これからぐんぐん調子を上げていくはずだ。

目で見たというより第六感で察知して放ったシュート

 三笘薫がゴールを奪う瞬間を現地で目撃する喜びを、どう表現すればいいだろうか。

 試合後の会見でファビアン・ヒュルツェラー監督が「彼こそゲーム・チェインジャー(試合の流れをガラッと変える力がある選手)だ」と言ったが、まさにその通りのゴールだった。

 指揮官のペップ・グアルディオラが試合直後のテレビインタビューで「今日のうちのプレーを心から喜んでいる」と語ったように、この1月7日夜のマンチェスター・シティは本当に素晴らしかった。首位を走るアーセナルに食らいつくという気合いに満ちていた。

 怪物FWアーリング・ハーランドを筆頭に、今季こそチームの中核になりそうなフィル・フォーデン、すさまじい馬力でジャック・グリーリッシュを追い出した(夏にエバートンへ移籍)ジェレミー・ドク、さらにはサウサンプトン時代の吉田麻也が「あいつがすごくて嫌になる」と言ったベルナルド・シウバも、ブライトンの最終ラインに“エグい”としか言いようのないハイプレスをかけ続け、ボールをブライトン陣内に閉じ込め続けた。

 試合のデータを見ても、マンチェスター・Cが圧倒していたことがよく分かる。ポゼッション6割とボールを支配し、ブライトンの6本に対して21本のシュートを放った。

 ブライトンがそんな劣勢の試合で前半のハーランドのPKによる1失点で乗り切ったのは僥倖(ぎょうこう)だった。正直、1点差が2点差、3点差と開いていく予感に満ちた状況だった。

 ところが!

 後半15分、三笘がやった。ヤシン・アヤリが放った強い横パスを左サイドの三笘が受けたとき、ゴールが生まれるイメージは全く浮かばなかった。“必勝の規律”がチームに深く刻まれるマンチェスター・Cが、6人でしっかりとゴール前を固めていたからだ。

 しかし三笘はそんな鉄壁の牙城を一瞬で打ち砕いた。

「相手の足が開くのが分かったので、うまく通すことができました」

 左から中央に切り込んだ三笘に対し、距離を詰めてきたニコ・ゴンサレスが右足を伸ばしてボールを奪おうとした瞬間、2024年バロンドール受賞者ロドリの後継者と言われるそのボランチの足が開いた。それを見て三笘は、右足を小さく、しかし鋭く振って、精密機械のようにその股にボールを通してゴール右隅に流し込んだ。

 この完璧なシュートは、相手の足が開くのが「分かった」という本人の言葉からもうかがえるように、目で見たというより第六感で察知して放ったものだった。

 三笘はさらに「ああいう形をもっと増やさなくてはいけないと思う。前の試合でもなかなかチャンスで決めきれなかったので。まあ、1個入ってよかったなと思います」と続けて、狙いすまして決めたゴールを振り返った。

 この言葉を聞いて、思った以上に時間がかかった故障もようやく癒えて、先発復帰2試合目で実戦感覚、いわゆるマッチフィットが戻ってきたと感じた。

 まさに「無」から生んだゴールだった。同点にしたというだけではなく、その魔術のようなスキルで試合を一変させた。

 マンチェスター・Cが震撼した。こんなゴールを決める奴が相手にいる。そうした恐怖感をマンチェスター・Cに植えつけたことが、結果的にブライトンに1-1ドローを呼び込んだのだ。

シティのサポーターが“御法度の雄叫び”を許容してくれたのは…

左からゴール正面に持ち込み、敵選手の足の間を通してネットを揺らした。まさにファンタスティックな一撃だった 【Photo by James Gill - Danehouse/Getty Images】

 筆者は三笘のゴールを見た瞬間、思わず「ウオォ!」と雄叫びを上げてしまった。

 これをアウェーのスタジアムでやるのは御法度だ。筆者が座る記者席は観客席から少し隔離された環境とはいえ、マンチェスター・Cのサポーターが陣取るメインスタンドのど真ん中にある。そんな場所で許されないと分かっていたが、思わず声が出てしまった。

 ただし、このエリアはVIP席であり、ゴール裏の過激なサポーターとの比較で自制心のある上品な客層だった。数人が振り返って、“どこのバカだ?”とでもいうように、雄叫びが上がったこちらをチラッと見て、そこに日本人記者がいるのを確認すると、仕方がないという表情をしてピッチのほうに向き直った。

 その「仕方がない」という表情には、あんなすごいゴールを同国人が決めたのを見たら、誰だって叫んでしまうだろうという了解が含まれていたと思う。

 フットボールの発祥国イングランドの1部リーグであるプレミアリーグで、日本人が素晴らしいゴールを決めた瞬間に立ち会うというのは、そういうこと――我をも忘れてしまうことである。 

 現在、世界最高峰と評されるリーグで、しかもそのトップを争う真の強豪チームを相手に、三笘はゴール前に6人の敵が立ち並ぶ状況からゴールを決めたのだ。こんなシーンを見たら、日本人として魂を揺さぶられてしまう。

 年代的に自虐的な歴史観の中で育った筆者の愛国心は、正直なところ強いとは言い難い。しかしこれがフットボールの魔力なのか。世界中から集められたトップレベルの選手の中で、自分と同じ国からやって来たフットボーラーがこんなゴールを決めると、「どうだ、見たか! 三笘は俺たち日本人の誇りだ!!」という気持ちになってしまうのである。

 今年はワールドカップがある。出場48か国の人間たちが母国代表のプレーに心を熱くするに違いないが、マンチェスター・Cのサポーターが筆者の雄叫びを見逃したのも、フットボールが呼び起こす愛国心の強烈さをよく知る英国人だからだろう。

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著者プロフィール

1962年3月24日福岡県生まれ。1993年に英国人女性と結婚して英国に移住し、1998年からサッカーの取材を開始。2001年、日本代表FW西澤明訓がボルトンに移籍したことを契機にプレミアリーグの取材を始め、2025-26で25シーズン目。サッカーの母国イングランドの「フットボール」の興奮と情熱を在住歴トータル30年の現地感覚で伝える。大のビートルズ・ファンで、1960・70年代の英国ロックにも詳しい。

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