ボルシアMGで欧州での第一歩を記した高井幸大 トッテナムで思い知らされた“世界基準”と突きつけられた“実戦感覚の不足”
ブンデスデビュー戦で計21分間の実戦機会
1月11日(現地時間、以下同)、ボルシア・メンヘングラッドバッハがウインターブレイク明け初戦を迎えたボルシア=パルクは、雪こそ降ってはいなかったが空気は鋭く尖り、氷点下のベンチに座る者の指先を容赦なく奪っていく。
記者席でペンを走らせる手がかじかむほどの極寒。そんななかでボルシアMGは立ち上がりからアウクスブルクを相手にゴールラッシュを見せ、60分が過ぎる頃には4-0という決定的な点差を刻んでいた。震えるような寒さにもかかわらずスタジアムに足を運んだサポーターにとっては、心身ともに温まるような試合展開だったと言っていいだろう。
勝負は決した。その”消化試合”に近い空気感の中で、70分過ぎに身長192センチの恵まれた体躯を誇る若人がピッチサイドに立つ。高井幸大。トッテナムでの空白の半年を経て、ようやく欧州での第一歩を記した瞬間だった。
実戦から遠ざかっていた時間を考えれば、それは確かな一歩と言える。しかし、彼が直面したのは、手放しで喜べるような甘い現実ではなかった。
後半アディショナルタイムの3分を加え、計21分間、高井は久しぶりの実戦に臨んだ。大きな得点差が生まれていたこともあり、クラブとしても新加入選手を起用しやすかったのは間違いない。そうした状況下でどれほどのパフォーマンスを見せられるか。ある種のテストのような雰囲気が漂っていた。
高井らしい鋭い縦パスもほとんどなく……
相手の縦パスが入ったタイミングでアタックするもボールに触ることができず、連続したプレーではボールホルダーについていけずに前を向かれた。それが1回だけならまだしも、複数回にわたって止め切れないシーンが続いた。高井らしい鋭い縦パスもほとんどなく、強度面を含めても実戦感覚の欠如が目につく内容だった。
もちろん、ボルシアMGに加入して約1週間程度しかトレーニングをしておらず、まだチームに順応し切れていないことも影響しただろう。今後の日本代表の最終ラインを支える存在として期待値は高い21歳だが、まずは新天地で1つずつ結果を出さなければ、その上には行けない。そんな現実を突きつけられたようなデビュー戦だった。
高井自身も試合に出場できた喜びを口にしながらも、パフォーマンスについては言葉を濁した。
「(移籍して)1試合目に出られて良かったなとは思います。(感触は)ちょっと時間が短かったので……それでもプレーできたことは自信になるかなと思います」
Jリーグやパリ五輪代表、そして日本代表の舞台で見せていた堂々たるプレーはどこへ行ったのか。その答えは、昨夏に渡ったロンドンの地に隠されている。世界最高峰と称されるプレミアリーグの中でもビッグクラブの1つであるトッテナム。意気揚々と乗り込んだはずの新天地で、当時20歳の若武者はかつて経験したことのない沈黙の半年間を過ごすこととなった。
加入直後から負傷が続き、リハビリに費やす時間が長引いたのも不運だった。アルゼンチン代表のクリスティアン・ロメロやオランダ代表のミッキー・ファン・デ・フェンといったトップクラスのセンターバックを擁するチームにおいて、なかなか存在感をアピールできなかった。守備陣に故障者が重なった時期もあり、トレーニングで評価を上げていればベンチに入るチャンスは少なからずあったはずだ。しかし、結局はベンチ入りわずか1試合に終わり、レンタル移籍を余儀なくされている。
ブラジル代表FWリシャルリソンやフランス代表FWランダル・コロ・ムアニらワールドクラスのアタッカーが在籍するトッテナムの練習場で、高井は何を見たのか。
「(自身の)すべての能力基準が低かった」
誤魔化すことも、環境のせいにすることもせず、偽らざる心情を吐露した高井。その言葉にはロンドンで味わった苦悩と、それを直視した者だけが持つ静かな迫力が宿っていた。
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