マタラッツォ新体制のソシエダで久保建英が躍動 監督が惚れ込んだ20歳のCB喜多壱也はトップデビューも近い
私たちが見たかった久保が帰ってきた
この言い回しは、サッカー界でもよく用いられる。過去を一掃して心機一転、一から新たな人生をスタートする。人生にしても、サッカーにしても、気持ちの持ちよう次第でやり直しがきくのだから、という思いを込めて使われるフレーズだ。
それをまさしく地で行ったのが、昨年末にペレグリーノ・マタラッツォを新監督に迎え、2026年のスタートを切ったレアル・ソシエダである。システムが変わったわけでも、選手の顔ぶれが変わったわけでもない。しかし、チームから伝わってくるエネルギーが、これまでとはまったく異なっていた。
新年初戦となった本拠地アノエタでの4日(現地時間、以下同)のアトレティコ・マドリー戦(ラ・リーガ第18節)。変化はそこかしこに見受けられた。
例えば、キックオフ直後からベンチメンバーがピッチ脇でアップを始めていたが、こうした光景は以前には見られなかった。これも、おそらくは全員がいつでも戦闘態勢に入れるようにというマタラッツォ監督の指示なのだろう。
「監督が代わったばかりのチームは怖い。選手たちが新監督に良いところを見せようと気合十分でピッチに立つからだ」
A・マドリーのディエゴ・シメオネ監督も試合前に警戒心を強めていたが、確かにソシエダの選手たちからは熱い想いが伝わってきたし、スタジアム全体も「何かやってくれるのではないか」というサポーターの期待感で満たされていた。
そして、ついに私たちが見たかった久保建英が帰ってきた。昨年後半、怪我に苦しんでいたことなど微塵も感じさせず、軽やかにピッチを舞い、水を得た魚のように躍動したのだ。試合は結局1-1のドローに終わったが、久保自身は鋭いドリブルで再三見せ場を作り、55分には左足アウトサイドの鮮やかなラストパスで、ゴンサロ・ゲデスの同点弾をアシストしている。
マッチMVPに輝いた久保は試合後、「本当に惜しかった。僕らはアトレティコよりも勝利にふさわしかったから、勝てなくて本当に残念だ」と悔しさをにじませたが、それでも確実にチームが前進しているという好感触は得たに違いない。
「(マタラッツォ監督は)縦に速い攻撃的なチームを作っている」
久保の抱いた印象は、データも裏付けている。スペインでラ・リーガの放映権を持つDAZNによれば、シュート本数はA・マドリーの8本に対してソシエダは13本、枠内シュートはA・マドリーの2本に対してソシエダが7本、さらにチャンスメイク数、FK本数、ドリブル成功数など、多くの数字でソシエダが相手を上回っていた。
「僕自身について言えば……」
テレビカメラの前で、久保が自らそう切り出したところにも、自信が垣間見える。
「日々調子は良くなっているし、僕自身の最高バージョンを引き出そうとしている。2026年はもっといけると思っている」
その声には、先月までにはなかった張りがあった。
勝ち点3以上に大事なものを手に入れた
遠藤航がいた当時のシュツットガルトを1部昇格に導くなど、ブンデスリーガ時代の実績はそれなりに評価されていたものの、これがラ・リーガ初采配で、スペイン語も話せないマタラッツォに対しては当初、全幅の信頼を寄せられないという声が大多数を占めていた。
スペイン語力について記者から問われた指揮官は、「中学生のころにちょっとだけ勉強したことがあるよ」と冗談めかして返していたが、それでも年始の会見ではスペイン語とバスク語の両方で「新年おめでとう」とあいさつするなど、新しい環境になじもうとする姿勢を見せていた。
そして今回、強豪A・マドリーを相手にチームのハイパフォーマンスを引き出したことで、勝利こそつかめなかったとはいえ、マタラッツォは勝ち点3以上に大事なものを手に入れたのではないだろうか。なにしろ、15位に低迷したままクリスマス休暇を迎え、意気消沈していたチームとサポーターに、失いかけていた「希望」を取り戻したのだから。
もちろん、昨年12月22日の就任発表からまだ日が浅く、わずか1試合を指揮しただけで評価を下すのは時期尚早だ。メディアもいまだ半信半疑ではあるが、それでもA・マドリー戦を経て、マタラッツォへの期待感が急激に高まっているのは事実だ。
※フォローすると試合の情報などを受け取ることができます。(Yahoo! JAPAN IDでログインが必要です)
詳しくはこちら