鎮西・西原涼瑛が明かす決意と覚悟 “ゼロ”からのスタートも「今年一番」の選手に

田中夕子

優勝候補の筆頭と目される鎮西で“Wエース”以外の柱になっているミドルブロッカーの西原涼瑛 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 インターハイ、国スポで二冠を達成。間もなく始まる春高を制すれば、鎮西高が初の“三冠”を達成する。

 大会前から優勝候補の筆頭とされ、紛れもなく今大会の主役として名前が挙がる存在で、他の出場校の選手からは「日本一になるためには鎮西に勝たなければならない」と、越えるべき壁となる存在だ。春高に先立ち、25年12月に東京体育館で開催された天皇杯にも九州ブロック代表として出場し、Vリーグ西地区首位のヴィアティン三重に勝利するなど、高校のカテゴリーを越えてすでに強さを見せつけている。

 中心選手として取り上げられるのは2年生の一ノ瀬漣、3年生のオポジット岩下将大の“Wエース”だが、実は今季の鎮西で柱となる存在がもう1人いる。

 8月に松江で開催されたインターハイを4年ぶりに制した直後、囲み取材の輪の中心で、畑野久雄監督が絶賛したのは一ノ瀬でも岩下でもなく、ミドルブロッカーの西原涼瑛だった。

「今年のチームの中では、間違いなくあの子が一番。ミスも少ないし、よう打つし、決める。安心して見ていられる選手ですよ」

中3から憧れた鎮西バレー ゼロからのスタートも「今年一番」の選手へと成長

中学3年生の頃に魅せられた鎮西は西原に適した環境 【写真:田中夕子】

 黄色のユニフォームと、エースがつける背番号3。高校バレーボール界で圧倒的な存在感を放つ鎮西をイメージするとき、多くの人が脳裏に浮かべるのは宮浦健人や水町泰杜(ともにウルフドッグス名古屋)や舛本颯真(中大)のように、前衛からも後衛からも、どんなトスでもひたすら打って決める1枚エースの姿ではないだろうか。

 確かに、彼らのようにチームで最も多くのトスを託されながら、目の前にそびえ立つ壁を打ち破る。逃げずに強く戦うエースの姿に心惹かれる人は多い。現在はミドルの西原もアウトサイドヒッターとしてプレーした中学時代は、まさに鎮西の大エースに憧れる1人の少年だった。

 愛媛出身の西原が初めて鎮西と出会ったのは、中学3年生だった2022年のインターハイだ。香川で行われるインターハイに向け、愛媛の松山で合同合宿を行っていた。実は別のチームが勧誘を兼ねて「見に来ないか」と声をかけたのだが、西原が心惹かれたのはエース勝負を武器とする鎮西バレー。当時のチームで3番をつける舛本の姿が「とにかくカッコよかった」と笑顔で回想する。

「小学3年でバレーを始めて、春高を見るようになってからも水町さんをテレビで見て『かっけーなぁ』と思っていたんです。四国インターハイのときも舛本さんがめっちゃカッコよくて、そのとき、畑野先生とも初めて話をした。『うちでエースになってくれんか』と言われてすごく嬉しかったし、声をかけてくれた地元の学校には申し訳なかったですけど、その瞬間から、鎮西に行きたい、と思って(鎮西に)来ました」

 入学当初はアウトサイドヒッターやオポジットとしてプレーしたが、同学年には岩下もいる。より攻撃の厚みを出すために、7月にミドルブロッカーへ転向した。スパイクもブロックも、それまでとは勝手が違う。しかもミドルでのデビュー戦はインターハイ前に開催される九州大会で、鎮西のようなエースバレーとは異なる独自のスタイルを武器とするチームも多く、試合に出場しながらも「どうやって動けばいいかも全くわからなくて大変だった」と苦笑いを浮かべる。

「ミドルの先輩方のプレーを見て、最初は真似から始めたんですけどうまくいかない。しかも九州のチームは個性が強いので翻弄されるから本当に嫌で(笑)。1からのスタートじゃなく、ゼロからのスタートだったし、何をどうすればわからないところから始まったので、自分がどうしたいとか、こうしようとか周りに主張することもできなかった。とにかく難しかったです」

 うまくいかないときはできないことばかりに目が向くが、試合出場を重ねるうちに少しずつコツをつかみ、翻弄されるばかりだった相手にも対応できるようになった。もともとアウトサイドヒッターとしてプレーしていた経験もプラスに変え、新たな武器にする。映像を繰り返し見て、さまざまな選手の動きも研究し、自主練習ではスパイクのコンビを合わせることに加えてウェイトトレーニングも積極的に行った結果、動きのスピードもスパイクのパワーも増した。

 その結果、畑野監督も「今年一番」と信頼を寄せる選手へと成長を遂げたのだが、地道な練習に加えてもう1つ、西原を変えるきっかけがある。昨年、2年生で出場しセンターコート目前で夢破れた、春高での苦い敗戦の記憶だ。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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