「堀越のキャプテン」として負った重責と困難 前回得点王・三鴨奏太は何を経験したのか?

大島和人

三鴨キャプテン(中央)の率いる堀越はベスト16で敗退 【写真は共同】

 堀越(東京A代表)の第104回全国高等学校サッカー選手権大会はベスト16で終わった。昨年度はベスト8に進出し、2年生の三鴨奏太が5ゴールで得点王に輝いている。今年度の三鴨はキャプテンとなり、1回戦は2ゴールで勝利に貢献した。しかし鹿島学園との3回戦は1-4の完敗で、三鴨も不発だった。

 堀越のキャプテンは、他チーム以上に大変な役割だ。彼らは「ボトムアップ理論」に基づいたチーム作りを行っていて、メンバーの人選や戦術的な決断は選手に委ねられている。キャプテンは選手各々の考えに耳を傾けて取りまとめる立場だが、堀越では高校サッカーにおける監督の領域までキャプテンが担っている。練習メニューの組み立ても、三鴨の仕事だった。

「キャプテンを辞められる」

 試合後の三鴨は、まだ「戦闘モード」の気迫は漂わせつつ、どこか安心した表情で記者たちの前に現れた。試合については率直に劣勢を認めていた。

「前半はかなりいい形もあって、押し込めたと思いますが、後半は完全に相手の勢いが上でした。セカンドボールの回収も前半は耐えていましたが、後半は修正し切れず、自分たちのウィークを突かれました。PKのあと(1-2とされて)巻き返す余力はもう残っていなかったと思います」

 三鴨は堀越のエースで得点源だ。168センチ・68キロだから大柄ではないが、左右両足のクオリティ、ドリブルの打開力を兼備していて、今大会に出場するアタッカーの中でも屈指の実力者だろう。

 佐藤実監督は3回戦の展開をこう振り返る。

「三鴨に対するサポートは、相手も当然そこを抑えてきます。前半は周りでうまく打開できたと思いますが、後半はビルドアップができず、どうしても彼が単独で行くシチュエーションになってしまった。チーム構成で、ちょっともう少しいい形で使ってあげられたらなというところはありました」

 高校最後の試合を終えた三鴨の感想は、少し意外なものだった。

「正直、今は『キャプテンを辞められる』というそれだけが残って、すがすがしい気持ちです」

 「すがすがしい」の意味を記者が問うと、やや強い言葉が返ってきた。

「キツかったし、もう辞めたかったです。自分の持てる力を、準備から頭をフル回転させてすべて出したので……。本当に『やりきった』という、ただそれだけです」

何が大変だったのか?

 三鴨は「堀越のキャプテン」が置かれる状況をこう説明する。

「試合中も周りの状態や流れを読んで、交代をどうするかとか、全体を考えなければいけません。練習メニューも含めて、チームについて考えない瞬間はない1年間でした。自分のことに集中できない苦しさがあるし、それに対する周りのリアクションが薄かったり、自分の思っているものと違ったりすると、そこにもフラストレーションが溜まってしまいます」

 それは経験を積んだ大人にとっても、厳しく難しい作業だろう。

「聞いて決めるのは大変でした。色々な立場の選手から意見を聞くわけで、どういう理由で決定して対処するのか、本当に大変です。仲の良い人、そうでない選手がいても、そこのバランスは感情を一切排除して考えなければいけません。自分たちの型があるので、決めやすいのは決めやすいのですが、とはいえ色々な組み方があります。練習時間の調整も自分がやるので、きつかったです。高校、学校生活だからこその辛さもあって、クラブチームでボトムアップをやるときには無い大変さもありました」

 選手権予選が始まる前に9月には、キャプテンを降りる意思表示も佐藤監督にしていた。

「でも、やり切ると決めました。監督は『気楽にやればいいよ』と声をかけてくださったので、それが一番刺さったかなと思います」

 監督は三鴨の未来に対して、このような言葉をかける。

「成長とは、右肩上がりで順調には上がっていかないものです。壁にぶつかったり、色々な難しい状況があった中で、彼なりに成長していくところが見えました。大学、その先でサッカーをすると思いますけど、この経験を生かしてほしい。間違いなく成長曲線には乗っていると思うので、それを彼がしっかりつかみながら、先に進んでもらいたいです」

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、バレーボール、五輪種目と幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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