ぶつかり合った1年が結実──父子鷹・奈良岡功大がつかんだ全日本初優勝

平野貴也

全日本総合選手権を初優勝した奈良岡功大(左)と、父でコーチの浩さん 【平野貴也】

 父と息子は、衝突と協力の末、表彰台で喜びを分かち合った。2025年12月30日に閉幕した第79回全日本総合バドミントン選手権で、男子シングルスの奈良岡功大(NTT東日本)が初優勝を飾った。年間成績上位者のみが出場できるBWFワールドツアーファイナルズから2週連続の大会。コンディションが上がらず「身体が動かない」と繰り返す中、初戦からファイナルゲームを展開するなど苦しむ場面が多かった。決勝戦もファイナルゲームを6-11から15-14でひっくり返すまでリードされる展開だったが、長いラリーを我慢。ところどころで鋭いショットを繰り出し、終盤に差し切った。

 場内インタビューでは「今年は結構苦しい時期で、2回戦負けや1回戦負けが多くて苦しかったですけど、(シーズン終盤に)熊本マスターズ(ジャパン)で優勝して、全日本でも優勝できてすごく嬉しいです」と1年を振り返り、喜びを伝えたい相手として「僕の監督でもあり、父でもある奈良岡浩さん」と父の名を挙げた。

表彰式で示した父への感謝

 決勝戦の相手は、前回準優勝の武井凛生(NTT東日本)。同門対決のため、コーチ席には両者とも誰もつかなかった。ファイナルゲームは、精力的に動いてペースを上げてくる武井に振り回され、ついていく展開。1点を取るのが大変だった。そんな中、点が動く度、奈良岡はアリーナ席中央の最後列に視線を送った。そこに座っていたのは、父でありコーチでもある浩さんだった。表彰式のフォトセッションでは、カメラマンに紛れて写真を撮っていた浩さんを呼び寄せ、がっちりと握手。2人は並んで写真に収まった。喜びを共有したことへの思いを聞くと「この全日本で優勝した姿を見せられて、すごく良かったなと思いますし、素直にありがとうと伝えました」と話した。

 奈良岡は24歳。父・浩さんがコーチを務め、全国中学校大会では史上初の3連覇を飾るなど幼少期から父子鷹で活躍してきたエリートだ。全日本総合でも、中1で予選に出場して1勝を挙げ、高校1年生では本戦1回戦を突破するなど早くから存在感を示していた。2021年には初めて決勝に進出したが、優勝を逃しており、22年、23年は大会途中で棄権。24年も準決勝敗退だった。その間に、2023年世界選手権の銀メダル獲得や24年パリ五輪出場など国際大会で活躍を見せてきたが、国内ファンの評価基準の一つとなる、日本最強の証を手にするのには少し時間がかかった。

2025年は尻上がりの成績

 2025年のシーズン序盤は1、2回戦で負ける大会も多く、苦労した。しかし、11月の熊本マスターズジャパンで優勝すると、年間成績上位選手しか出場できないBWFワールドツアーファイナルズの出場権をギリギリで獲得。グループステージではパリ五輪3回戦を含めて5戦全敗の天敵だった周天成(台湾)を撃破して準決勝に進出。そして、2週連戦となった全日本総合でも初優勝を飾った。シーズン中盤まで伸び悩み、終盤になって尻上がりに調子を上げてきたシーズンの背景について、コーチであり父でもある浩さんは「いろいろあって、大変だった」とシーズン終盤になるまで、息子との折り合いがつかずに苦労したことを話し始めた。

年明けから始まった父と子の衝突

苦しかった決勝戦で闘争心を示した 【平野貴也】

 24年夏のパリ五輪を終え、25年シーズンを迎えるにあたり、奈良岡は競技を一度休みたいと言い出したという。しかし、28年ロサンゼルス五輪を目指すのであれば、戦い続けなければならない。その中で、モチベーションを生むために新鮮味を求める選手と、継続性を重視する指導者の間に歪みが生まれた。奈良岡は、課題だった攻撃力強化のため、身体強化に取り組み、強打を増やした。しかし、身体強化によるアタック力の向上は、いずれ自然と発揮されると考えていた浩さんには、ベースとする技術を生かした戦い方のバランスが崩れているように見えた。

 選手と指導者の捉え方の相違は、親子の意地の衝突となった。

「2時間の練習をやろうというときに、高品質で高強度、あるいは高品質で低強度の練習をしたい。でも、低品質で高強度の練習をやるのは違う。それじゃあ、そこら辺のプレーヤーになってしまう。スキルがあるのだから、スキルを磨こう。その中で心肺機能を鍛えるようなことをやらなければいけないだろうと言ったのだけど、だいぶぶつかった。意見を言っても、自分はやっている、それはオレにしか分からないと言われる。でも、誰よりもお前を見ているという話はしたんですけど」(浩さん)

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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