「J内定4名」にも劣らぬ異能と存在感 流経大柏の2年生MF古川蒼真が圧巻2得点

大島和人

2ゴールを決め、流経大柏の勝利に貢献した古川蒼真 【写真は共同】

 第104回全国高等学校サッカー選手権大会の2回戦は、4会場のチケットが完売する盛況だった。中でもフクダ電子アリーナは流通経済大柏、米子北、大津、青森山田と強豪が揃い、1万5千人を超す観客が大晦日の2試合を見守った。

 流経大柏は増田大空(磐田)、島谷義進、安藤晃希(いずれも水戸)、大藤颯太(東京V)と3年生4名がJクラブに内定しているタレント軍団。また2年生CBのメンディーサイモン友も2025年11月に開催されたU-17ワールドカップ(W杯)で活躍した有望株だ。

 しかし米子北との2回戦は、J内定組のうち2名が先発から外れていた。流経大柏は選手層が厚く、そのような下剋上も当たり前に起こる。

 そして、2回戦で誰よりも目立っていたのは2年生MFだった。古川蒼真は前半15分、21分の2得点で流れを大きく引き寄せ、3-0という快勝の立役者になった。プレーの質、万能性でも際立ったものを見せている。

2得点で勝利の立役者に

 榎本雅大監督はJ内定組の安藤、大藤をベンチからスタートさせた理由をこう説明する。

「Jリーグのチームから必要とされていても、流経に必要とされる選手でなければ試合には出られないと選手に話をしていました。戦術的な意図というより、今日はスタート地点だと思うので、そこにきっちり合わせてきた選手を使いました」

 断じて温存ではない。米子北は2025年のプリンスリーグ中国王者で、来年の「プレミアリーグWEST」昇格も決めている。初戦で当たることが理不尽に思えるレベルの難敵だった。

 45歳の指揮官はこう続ける。

「最初の点が大きかった。あれが相手に転がっていたら、逆の結果もあったと感じています」

 15分に古川が決めた先制点は、ちょっとしたスーパーゴールだった。米子北のGKがクリアしたボールはやや短く、右サイドの古川がこれに届く。彼は躊躇なくダイレクトで右足を振り抜き、右中間から約40メートルのロングシュートを打ち込んだ。

「試合の入りは『シュートで入る』と自分の中で決めていて、打ったら気持ちよくゴールに入りました。キーパーが少し前に出ていたので『これは行けるな』と思って、とりあえず打った感じです」

 21分のゴールは細かい技巧が冴えた。古川は前線で相手ボールを奪い、FWに預けてリターンパスを受けた。密集を細かいステップで打開し、右足でを流し込んだ。

「FWと縦関係になって『落とし』をもらうことを意識していました。渡辺瞳也選手が落としてくれて、あとドリブルがうまくいって、シュートを決められました。元々はダブルタッチをしたあと左足で打つ予定でしたが、相手が食いついているなと思って、カットインしたら(DFが)引っかかった感じです」

 榎本監督は2点目を振り返って、古川をこう評する。

「余裕がありますよね。ああいうところは3年生の中に入っても、抜けている部分です。ドリブルで入っていけて、パスも出せるし、シュートもうまい。技術的には非常に高いなと感じています」

神出鬼没のポジショニング

2点目は古川の前線守備、内への侵入から生まれた 【写真は共同】

 2得点は決めたものの、古川はそもそも「点取り屋」ではない。この試合は右サイドバック(SB)で先発し、先制点の直後に右サイドハーフに移った。中学時代は主にセンターバックで起用されていたが、175センチのサイズも考慮して今の位置に移っている。GK以外は全ポジションの経験があるという。

 この試合の彼はとにかく「神出鬼没」だった。右サイドに移ってからも2点目のように中へ流れてくる場面が多く、FWやボランチと近い距離感の連携を何度も出していた。少ないタッチでボールを動かし、自分も動いて再び受ける「リンクマン」の働きが抜群だった。

 古川は流動的な位置取りについて、こう説明する。

「エノさん(榎本監督)には『ポジションを色々な選手と入れ替わってやれば、自然に相手を外せる』『一瞬の隙があれば剥(は)がせる』と言われています。色々な選手と関わってボールを受ける狙いで、ポジション変わりながらやっています」

 キャプテンの島谷は後輩をこう称賛する。

「自分たちの攻撃は『自由にやっていい』というようになっています。入れ替わって出ていく選手がいたり、下でサポートする選手がいたり、それも一つのアイディアです。今日は古川のユーティリティ性が多く出た試合でした」

 古川は相手が捕まえにくい角度、タイミングで「隙間」に入っていた。そこは高校入学後に身につけた感覚だという。

大関友翔はU-20W杯で背番号10を背負った 【Photo by Cristian Soto Quiróz/Eurasia Sport Images/Getty Images】

 お手本は「FC多摩Jrユース」の4年先輩にあたる大関友翔(川崎フロンターレ)だ。ロサンゼルス五輪世代の「10番」を背負う技巧派MFで、既にA代表デビューも果たしている。

「エフタマ出身で(年代別の)代表でも10番なので、自分にとってはすごく影響力があります。U-20W杯を見ましたけど、大関さんは1タッチ2タッチでやるのがすごくうまい。常に『矢印の逆』を取っていて、自分も(同じように)相手の嫌なことを考えてやっていきたい」

 彼はこうやって学んだ。

「2年生になってボランチ、前のポジションをやる機会が多くなり、手こずったところもあります。でも1タッチ、2タッチでプレーしようとすると、常にパスコースを探すようになって、自然と身体の向きがいい方向になっていきます。そういう面では1タッチを意識してよかったと思います」

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、バレーボール、五輪種目と幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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