井上尚弥、中谷潤人とスパーリングを重ねた石井渡士也が知る2人の強さ 先輩・堤聖也を追いかけ、S・バンタム級の“台風の目”となるか

船橋真二郎

日本スーパーバンタム級王者の石井渡士也(左)は十代の頃から井上尚弥とスパーリングを重ね、成長してきた 【写真提供:RE:BOOTジム】

 史上最高の日本人対決へ――。いよいよファイナルカウントダウンが始まる。27日にサウジアラビア・リヤドで開催される「THE RING V:ナイト・オブ・ザ・サムライ」で、ともに31戦全勝の井上尚弥(大橋)と中谷潤人(M.T)が競演する。

 世界スーパーバンタム級4団体統一王者の井上がWBC同級2位で33戦無敗のアラン・デビッド・ピカソ(メキシコ)を退け、全4団体で同階級の最上位にランクされる中谷がWBC同級10位で20戦全勝のセバスチャン・エルナンデス・レイジェス(メキシコ)に勝利すれば、来年5月に東京ドームで激突することが濃厚になる。

 世界王者として年間4度の防衛戦という異例のハイペースで2025年を駆け抜けようとしている井上、新たな階級で初戦を迎える中谷がどんなパフォーマンスを見せるのか。

「27日の試合を見るファンの方は、来年5月の試合をイメージして、空想して、見ると思うので。試合内容で、どっちが勝つか、どっちが強いか、そういう楽しみ方、見方をしてもらえたら、盛り上がるんじゃないかと思います」

 13日に横浜の大橋ジムで行われた公開練習前の会見で井上自身が提示していたように、NTTドコモの映像配信サービス「Lemino」がペイ・パー・ビューで国内独占ライブ配信する“前哨戦”から目が離せない。

 その井上、中谷と十代のときからスパーリングで手合わせしてきた経験も糧にして、2025年の飛躍につなげたのが、日本スーパーバンタム級王者でWBC15位の石井渡士也(いしい・としや/RE:BOOT、24歳/10勝7KO1敗2分)だ。

バンタム級に続き、S・バンタム級が活況を呈するか

二人三脚で歩んできた射場哲也会長(右)とRE:BOOTジム初、石井自身初の“日本一”のタイトルをつかんだ(2025年4月22日) 【写真:船橋真二郎】

 両雄の決戦は次への“号砲”となる。3年前、バンタム級で日本人史上初の4団体統一を成し遂げた井上がすべての王座を手放した後、群雄割拠の様相から1年あまりで4団体を日本人王者が独占し、現在まで続く大きな盛り上がりを生んだ。

 スーパーバンタム級も同じような状況になる可能性がある。

 中谷との王座統一戦に敗れるも、果敢に戦った元IBF世界バンタム級王者の西田凌佑(六島)は来年2月15日、大阪・住吉スポーツセンターで32勝中26KOを誇るIBF6位のブライアン・メルカド・バスケス(メキシコ)とのIBF挑戦者決定戦が決まった。

 ラスベガスでのデビューから10戦全勝全KOのWBOアジアパシフィック王者・村田昴(帝拳)はすでに4団体でランク入りし、強打の東洋太平洋王者・中嶋一輝(大橋)はWBC6位につけている。元K-1王者で前WBO世界バンタム級王者の武居由樹(大橋)にも階級アップの選択肢はある。

 当然、今後の井上、中谷の動向次第で状況は変わってくるのだが、「今、このときに、この階級の日本チャンピオンでいるのは幸せなこと」という射場哲也・RE:BOOTジム会長の言葉に石井もうなずく。

 来年5月以降を虎視眈々と見据える西田、村田、中嶋らと比べると「まだ全然、名前の大きさは違いますけど、そこに自分も入っていきたい」と意気込む。

 年が明けた1月13日には、2026年の日本ボクシング界の先陣を切って後楽園ホールに登場。日本王者が最強挑戦者を迎え撃つチャンピオンカーニバルで、日本1位の池側純(角海老宝石)との2度目の防衛戦に臨む。

 池側とは日本ランカー時代に2度対戦。石井の1勝1分だが、いずれも「自分としては納得できる内容ではなかった」。懐深く待ち構え、カウンターが得意なサウスポーは、誰にとってもやりづらいものだが「チャンピオンになって、さらに進化した姿を見せるのがベスト。どんな相手にも対応できると他の選手たちにも見せつけたい」と力強い。

 リングサイドでは初防衛戦の後、射場会長が次期対戦候補として名前を出していた、あの辰吉丈一郎の次男・辰吉寿以輝(大阪帝拳)が見守る予定。ジム初となる主催興行のメイン。互いに手の内を知り尽くした難敵相手の防衛戦。少なからずプレッシャーがかかるが、石井は歓迎する。

「プレッシャーにつぶされる選手もいるけど、自分の力に変えるのが“プロの仕事”だと思うし、自分にプレッシャーを与えて、それを乗り越えることで、もっと強くなれると思うので」

 今年4月、大きなプレッシャーを乗り越え、2度目の挑戦で日本王座を奪取した。石井の支えのひとつになり、自信をもたらしたのが井上、中谷をはじめとした強豪たちとのスパーリングだった。

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著者プロフィール

1973年生まれ。東京都出身。『ボクシング・ビート』(フィットネススポーツ)、『ボクシング・マガジン』(ベースボールマガジン社=2022年7月休刊)など、ボクシングを取材し、執筆。文藝春秋Number第13回スポーツノンフィクション新人賞最終候補(2005年)。東日本ボクシング協会が選出する月間賞の選考委員も務める。

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