伝統のディフェンスに、磨きをかけたアタック 國學院栃木が満を持して目指す「花園初優勝」【全国高校ラグビー大会注目校】

斉藤健仁

108名いる部員の多くは栃木県外の出身。國栃で栄冠をつかむことを目標に集まってきた 【写真/斉藤健仁】

花園2連覇中の桐蔭学園(神奈川第1)を撃破した今シーズン。花園でも再現なるか

 12月27日から1月7日にかけて大阪・東大阪市花園ラグビー場を中心に開催される105回目の全国高校ラグビー大会・「花園」。今大会は大本命がおらず混戦になると予想されているが、そんな中で「花園で初の日本一に」と目標を掲げて臨むのが、前大会ベスト4の「國栃(コクトチ)」こと國學院栃木(栃木)だ。

 春の選抜大会は1回戦で佐賀工業(佐賀)に10-14で敗れたが、6月の関東大会ではその選抜大会で優勝し、花園2連覇中の桐蔭学園(神奈川第1)を50-7で下して4度目の優勝。夏の全国7人制大会でも決勝で大分東明(大分)を下して栃木県勢初の高校王者に輝いた。その実績が評価されて、今大会では2回戦から登場する8つのシード校のうちの1校に選ばれた。他のシード校はすべて、選抜大会のベスト8だ。

関東大会初優勝。春からの目標を達成して、涙を見せる選手も… 【写真/斉藤健仁】

創部から38年。「緩やかに右肩上がり。簡単に強くなってねぇから簡単に弱くもならない」

 毎試合、飾られる横断幕に「執念のタックル」と掲げているように、國栃の伝統的な武器はディフェンスだ。タックルのスキルはもちろんのこと、個々の起き上がりのスピードは早く、選手同士のコネクションも強固で、崩すことは容易ではない。前大会を見ても、3回戦で京都工学院(京都)に21-5、準々決勝でAシードの石見智翠館(島根)に12-0と守り勝ち、準決勝は優勝した桐蔭学園(神奈川)に前半リードしたが14-25で逆転負けを喫した。ただ、準優勝した101回大会以来、2度目のベスト4に進出を果たした。

「花園の第1グラウンドで3試合やり、準決勝で負けたが歴史的な試合ができた。県内だけでなく県外にも國栃ファンが増えてきたと聞いています」

 そう話すのが、まだ國栃高校ラグビー愛好会だった時代から部を見続けている吉岡肇監督(64歳)。1988年に自らラグビー部として立ち上げ、38年にわたり指導を続けている。自身は國學院久我山高、日体大、リコーでプレーした名WTBだった。

 しかし、創部当時は花園に出るどころか、部員にラグビー経験者はほとんどいなかった。その時代、ディフェンス、そしてFWのモールを強みとしたことが今も伝統となっているというわけだ。

國栃を率いてきた吉岡肇監督(写真左)と、2020年に就任した次男の航太郎コーチ(写真右) 【写真/斉藤健仁】

 吉岡監督は「38年間、指導してきて飛躍した時はなかった。5年で花園に初出場(1993年・第73回)したが出ると負け。やがて3回戦まで進んで年を越すようになったが、シード校に勝てない。それならば、と自分たちがシード校になった。そして花園で銀メダル(101回大会)、銅メダル(ベスト4:104回大会)を獲得した。継続的かつ緩やかに右肩上がりですが、簡単に強くなってねぇぜ!だから簡単に弱くもならない」と懐かしそうに振り返った。

ラグビーの精神論は吉岡肇監督、プレー理論は航太郎コーチ。「2人のバランスが良い感じ」

 近年、國栃は花園だけでなく、選抜大会でもベスト4常連になるなど全国的強豪へと成長してきた。以前にも元日本代表SO田村優(#横浜キヤノンイーグルス)と熙(浦安D-Rocks)の兄弟のように県外出身選手はいたが、HO武井日向(リコーブラックラムズ東京)のように県内出身選手が多かった。ただ現在は108人いる部員の7割ほどが県外出身となった。その背景には2018年にグラウンドが人工芝となって練習環境が整い、さらに男子寮(運動部で併用)ができたことがある。

 また2020年には吉岡監督の次男で、國栃3年時に高校日本代表に選ばれ、早稲田大でSHとして活躍、女子ラグビーのアルカス熊谷でコーチを務めていた吉岡航太郎氏(30歳)が体育教諭として國栃に赴任し、ラグビー部のコーチに就いたことも大きい。若い航太郎コーチは実際にアタックラインに入り、自ら手本を見せながら指導している。一方で、吉岡監督は現在はラグビー指導から一歩引いた形で、生徒管理、高体連・父母会・OB会などの仕事を担当。OBのFWコーチやS&Cコーチもいて、國栃ファミリー・親子鷹で部を運営することが好循環を生んだ。

 航太郎コーチが「ラグビーの理論的な部分は私が指導していますが、精神論的な部分は肇先生が指導しています。最初の頃は役割分担に関してよく話し合いをして、私の思いも聞いていただきました」と言えば、キャプテンを務めるCTB福田恒秀道(3年)も「学校生活や人間性の部分では監督がしっかり指導してくれて、ラグビーは航太郎コーチが見てくれています。2人のバランスが良い感じ」と話す。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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