福岡第一と福大大濠の指揮官が選ぶ “最大のライバル”歴代ベスト5
今年の高校タイトル最終戦となるウインターカップを前に、両校を指揮する福岡第一の井手口孝コーチと福大大濠の片峯聡太コーチに「互いの歴代ベスト5」を選出してもらった。過去の対戦や育成の現場で積み重ねてきた記憶をたどりながら、その理由と、相手校が選んだ5人に対する印象を、それぞれの言葉で語ってもらった。
PG 竹野明倫(2004年卒、元西宮ストークスほか)
SG 牧隼利(2016年卒、大阪エヴェッサ)
SF 酒井祐典(2007年卒、元九州電力)
PF 酒井泰滋(2003年卒、元日立サンロッカーズ)
C 井上宗一郎(2018年卒、仙台89ERS)
■片峯聡太コーチが選んだ福岡第一ベスト5
PG 並里成(2008年卒、ファイティングイーグルス名古屋)
PG 河村勇輝(2020年卒、NBA挑戦中)
SF 狩野祐介(2009年卒、ライジングゼファー福岡)
PF 松崎裕樹(2019年卒、横浜ビー・コルセアーズ)
C スティーブ・クベマ・ジョセフ(2020年卒、東京八王子ビートレインズ)
「最も厄介だった」福岡第一――片峯聡太コーチが選ぶベスト5
並里については、高校入学直後のインターハイ予選で受けた衝撃を今も覚えていると言い、「『なんだ、こいつ!』と思った」と振り返った。初めて見た試合では、ボールが体に吸い付いているかのようなプレーが印象的だったという。「まるで、マンガの『キャプテン翼』の大空翼くんのようにボールとの一体感が記憶に残っている。その後、第一といえばガードを育てるチームとなっていったが、その最初が並里だったのではないか」と語った。
この評価を聞いた井手口コーチも、「(並里が中学3年生で出場した)九州大会を見て衝撃だった」と当時を振り返る。「なんだ!」と驚きを隠せなかったという。
並里の特異性について、井手口コーチはこう分析する。
「お兄さんについて小学生のころから年上を相手にバスケをしていた。その環境の中で編み出されたシュート、ドリブル、パスは『オリジナル』だった」
可能性を確信した井手口コーチにとって、翌年4月のインターハイ予選で周囲が驚いた時には、すでに想定内だったという。
その並里に続くガードとして挙げたのが河村だ。現在NBA挑戦中の河村は、高校時代からスピード、シュート力、ゲームメイクを高い次元で兼ね備え、「誰もが認める選手」と評価する。並里がテンポを引き上げ、河村がハーフコートでもパスやシュートで攻撃の手を緩めないだけに、“厄介”という表現がピタリと来ると言えるだろう。
井手口コーチは、福岡第一が生んだ日本を代表する司令塔2人の最大の共通点を「バスケに対するストイックな姿勢」だと語る。河村は常に思考し続け、並里は実戦で揉まれるなど、形は違えど「24時間バスケ漬け」のような熱量で自らのプレーを極めてきた。だからこそ、教えられた型ではなく、自分で編み出した「オリジナル」の技術とパスセンスが備わっている。タイプは違うが、競技への飽くなき探究心が共通している。
3番シューターとして挙げた狩野は、「ボールを持ったらシュートが入る」存在として、ディフェンスに与える影響が大きかった。ガード陣が優位を作った後、その優位性を確実に得点へ変える役割を担い、「守る側の選択肢を一気に狭める存在」と振り返る。
4番の松崎については、「鍛えられているが洗練されている」と評した。サイズや派手さではなく、走力、ディフェンス、判断力のバランスを重視し、「自分が何をすべきかを分かっている選手」。「当時から“大濠や洛南タイプ”と言われることもあったが、それが第一の完成度を高めていた」と分析する。
5番に選んだスティーブは、献身性と役割理解が決め手だった。リムプロテクトとリバウンドに徹し、走れば必ずパスが来ることを理解した動きが、ガード陣の自由度を高めていた。「献身的に動いてくれるビッグマンがいると、ガードが思い切ってプレーできる」と語り、「(同期だった)河村からパスが来ることを信じて走っていた」と相性の良さにも触れた。
片峯コーチは、この5人について「個が強いというより、機能している」と表現する。並里がテンポを作り、河村が試合を整え、狩野が決め、松崎が支え、スティーブが締める。その役割分担が明確な点こそが、最も厄介だった理由である。