マクラーレンに黄金時代は到来したのか? 強すぎるがゆえの危うさ

柴田久仁夫

黄金時代の再来か?

ノリスとマクラーレンは勝つべくして勝った。そんなシーズンだった 【©MclarenF1】

 2025年シーズンのF1は、マクラーレンの年だった。

 ランド・ノリスが悲願の初タイトルを獲得し、チームはコンストラクターズ選手権も制覇。ドライバーとチームのダブル戴冠は、ミカ・ハッキネンが王座に立った1998年以来、実に27年ぶりの快挙だった。

 今季のマクラーレンは、速さ、安定感、勝負強さ、そのすべてを兼ね備えていた。4連覇中だったマックス・フェルスタッペンがシーズン終盤に驚異的な追い上げを見せたものの、絶対王者をもってしてもその牙城を崩すことはできなかった。

 偶然でも、幸運でもない。マクラーレンが勝つべくして勝ったシーズンだった。しかも彼らの流儀を、最後まで貫いて。こうなると来季以降も、その優位は揺るぎないように見える。

 では今季のマクラーレンは、何がそれほど優れていたのか。

 「卓越したマシン戦闘力」「どちらもチャンピオンに相応しい優秀な二人のドライバー」「あくまで自流を貫いたチームマネージメント」。この3点が、彼らの強さの裏付けだった。

強さの理由

王者フェルスタッペンに3ワイドで襲いかかるマクラーレンの二人。今季を象徴するようなシーンだった 【©Redbull】

 まず「卓越したマシン戦闘力」だが、それを可能にしたのは何よりも、技術陣の層の厚さだった。実はマクラーレンの技術部門は、伝統的にスタッフの定着率が高い。あの第2期マクラーレン・ホンダ時代でさえ、それは変わらなかった。

 創設以来最悪の不振に喘ぎ、入賞すらままならなかったにもかかわらず、エンジニアたちの多くはチームに残って再起を期した。首脳陣の確執に嫌気がさして、上級エンジニアやマネジャーたちが次々に他チームへと去っていった最近のレッドブルとは対照的だ。

 ランド・ノリスとオスカー・ピアストリ、この二人も最高だった。シーズン開始時には、シャルル・ルクレール、ルイス・ハミルトンを擁するフェラーリが最強のドライバーラインナップと思われたが、期待外れの結果に終わった。レッドブルは、フェルスタッペンが孤軍奮闘。メルセデスはキミ・アントネッリが急成長したものの、調子の波が激しかった。マクラーレンの二人ほど、安定して好結果を出し続けたチームは他になかった。

 最後にチームマネジメントである。彼らの采配はシーズン中に多くの批判を受けた。実際、戦略ミスで落としたり、ドライバーが不満を抱えたレースもあった。それでもアンドレア・ステラ代表は、「ドライバー二人の扱いに差をつけず、公平に戦わせる」、いわゆる「パパイヤルール」に最後までこだわった。

 ただしこれらはいずれも、弱点にもなり得る不安要素を孕(はら)んでいる。

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著者プロフィール

柴田久仁夫(しばたくにお) 1956年静岡県生まれ。共同通信記者を経て、1982年渡仏。パリ政治学院中退後、ひょんなことからTV制作会社に入り、ディレクターとして欧州、アフリカをフィールドに「世界まるごとHOWマッチ」、その他ドキュメンタリー番組を手がける。その傍ら、1987年からF1取材。500戦以上のGPに足を運ぶ。2016年に本帰国。現在はDAZNでのF1解説などを務める。趣味が高じてトレイルランニング雑誌にも寄稿。これまでのベストレースは1987年イギリスGP。ワーストレースは1994年サンマリノGP。

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