23歳“新女王”が声を上げて泣いた夜 未勝利から一気に頂点へ…原点にあった「ゴルフ人生を変えた」教え
スタッツが物語る“新女王”の強み
今季の平均ストロークは70.0585でツアー1位、平均バーディ数も3.8987個で1位だ。バーディラッシュで一気に試合を支配するスタイルが数字に刻まれている。さらに平均パット数(パーオンホール)は1.7613の4位とグリーン上の精度はトップクラスだ。
本人も「今シーズン年間女王を獲れたのは本当にパッティングのおかげ」と言い切る。オフから「向きのチェック」を習慣化し、フェースの向きとラインの読みを一致させる作業を続けてきたことで、「自分自身、悩みながらのストロークをすることがなくなった」。機械的なルーティンではなく、試合のなかで迷いを消す“考え方”までセットで作り直したことが大きい。
もちろん、ショット力も一級品だ。ドライビングディスタンスは今季250.29ヤードの10位と、飛びすぎるタイプではないがパーオン率(72.4332%の13位)とのバランスがいい。
NOBUTA GROUPマスターズGCレディースでの完全優勝で見せたように、アライメントと距離感さえ噛み合えば4日間で25アンダーまで伸ばせる。派手なロングヒッターではなく、「総合力でスコアを作る」新世代の女王像を体現している。
他の選手も、その強さを認めている。
今季同組で回った原英莉花は「ソツがなくて、ピンを攻めていく姿もいい。自信を持って振れているし、気の強さがプレーに出ているのがすごくいい」と語っていた。また、ジャンボアカデミー時代からの先輩で小学校時代からの知り合いでもある西郷真央は、「負けず嫌いでストイック。攻めるタイプの性格」と、そのメンタルを高く評価している。
「人は人、私は私」神谷そらとの女王レースが変えたもの
その視線を、自分の内側に向け直したのが今季の大きな転機だった。
「人の結果は自分ではどうこうできないので、自分のプレーに集中しようというマインドになりました。前までは人と比べていたんですけど、“人は人、私は私”という気持ちで戦えるようになった」
メルセデス・ランキングで抜きつ抜かれつの構図が続いたからこそ、その切り替えが必要だったのだろう。その結果が4勝と年間女王という「見える強さ」として結実する一方で、今季37試合中36試合に出場した「折れないタフさ」も躍進の象徴だ。
大きな故障なくシーズンを走り切れたのも、腹圧トレーニングなど地道なフィジカル強化のおかげだという。
「今年はほとんどゴルフのことばかり考えていて、オフもトレーニングばかり入れていました。1週間休んでもどこかでゴルフをしてしまうと思うので、それなら試合で調整しながらやるほうがいいかなと」
トレーナーと二人三脚で体幹を鍛え、トップで“溜め”を作っても耐えられる体に仕上げたことで、切り返しのキレも増した。
ゴルフ人生を変えた1年の先に
それでも「課題があるのは伸びしろ」と言い切る。「昨年に比べたら優勝もできましたし、4勝もできて年間女王も獲れた。去年の自分には考えられない1年でした。メジャー勝ちたいし、平均ストロークも『69』にしたい。2週連続でも勝ってみたい」
さらに、気になる米女子ツアー挑戦については、こう語っている。
「(来年のQシリーズ挑戦は)『ない』とは断言しないと思いますが、海外メジャーは今年よりも行ける数は増えると思うので、そこで向こうの魅力をもっと感じたら挑戦する選択肢もあるかなと思います」
来季も日本を主戦場としながらも、心のどこかで世界への扉を意識している。
とはいえツアーの頂点に立ったからこそ、その先にある米女子ツアーは意識して当然だろう。腕を磨き、よりレベルの高い場所に身を置きたいとの思いを強くするのは、やはりジャンボ尾崎の存在が大きい。
「あそこ(ジャンボ邸)に行く選手たちは本当に練習もされますし、見えないところでも努力している人ばかり。そこに刺激を受けて、ジャンボさんにいい結果を報告したいという思いが、今年特に頑張る原動力になりました。私のゴルフ人生を変えてくれた人に、年間女王になれましたと伝えたかった」
そう語った新女王は、オフには米国のアリゾナ合宿でさらなる進化を目指す。腹圧で固めた体幹、アライメントを詰めたショット、迷いの消えたパッティング、そして「人は人、私は私」という揺るがないマインドを武器に――。
“最強未勝利”と呼ばれた23歳は、今や「1年を通して他の誰よりも強かった」という称号を手にした。その強さがどこまで更新されていくのか。来季の女子ゴルフツアーもまた、佐久間を中心に回っていくかもしれない。
(企画・編集/Creative2『THE ANSWER』)