23歳“新女王”が声を上げて泣いた夜 未勝利から一気に頂点へ…原点にあった「ゴルフ人生を変えた」教え
メルセデス・ランキング2位の神谷そらが予選落ちし、残り2日を待たずして年間女王が確定した。自分のスコアボードよりも先に、観客の祝福がその事実を告げた形だった。
「まさか自分が獲れると思ってなかった年間女王を、今こうして獲ることができて嬉しいです」
会見場ではそう言いながらも、実感はまだ遠くにあるようだった。昨季は勝てずに苦しんだ23歳が、プロ5年目で一気に4勝を挙げて年間女王へ――その軌跡は、決して順風満帆ではなかった。
「ふさわしくないプレー」から始まった女王争いの終盤戦
優勝は16アンダーまで伸ばした脇元華。佐久間は18番で空を仰ぎ、「決められなかったっていう思いが一番にありました」と悔しさを隠さなかった。
「朝からショットもパッティングもなかなかいいフィーリングでスタートできなかった」「ちょっと右に滑って、思ったよりひと筋右に行ってしまったり、それを嫌がって左につかまえちゃったり……」。ショットの違和感はパターにも波及し、後半はチャンスを決めきれない。
それでも、女王争いの先頭にいる自覚は消えない。
「今日のプレー内容は年間女王にふさわしくないプレーだったので、逆に今日、年間女王が決まらなくてよかったんじゃないかっていうふうに思います」
あえて厳しい言葉で自分を戒めた後、「来週は、この人が年間女王になってふさわしいって思ってもらえるようなプレーをできたらいい」と前を向いた。
そして決戦の舞台は愛媛・エリエールGC松山へ移る。大王製紙エリエールレディス開幕前、本人は「先週から今週、あまり変わってないので、寒くなったな、くらいです」と笑ってみせた。だが内心には、前週の伊藤園レディスでこじらせた感情への反省があった。
「先週は結果を気にしすぎていたので、イライラしてしまいましたし、もったいないゴルフをしてしまったなって思います。今週はゴルフの内容を気にしながらプレーしたいです」
そのための修正ポイントは、パッティングの“タッチ”。パッティングコーチを呼び、「タッチのズレがあったので、そこを修正してもらっていて、今日も今から練習したいと思います」と、ストロークの感覚を一から整えた。
そしてもう一つ、女王レースの決着の“場所”にも強いこだわりがあった。「せめて最終日まではいたいです。テレビで決まったんだ、となるのは嫌なので現場にはいたいです。皆さんと直接話せるようには頑張ります」。ランク2位・神谷そらとの一騎打ちに、結果の行方だけでなく“決め方”へのプライドもかけていた。
マスターズGCレディースで見せた“異次元”のゴルフ
初優勝は4月のKKT杯バンテリンレディス。プロデビューから123試合、長く「最強ながら未勝利」と言われ続けてきた肩書きからようやく解放された。
「今年こそは勝てると思って開幕からプレーしていたので、ようやくつかめた初優勝って感じでした。本当にうれしい気持ちと、ホッとした気持ちが混じった優勝でした」
その勢いのまま、5月のブリヂストンレディス、6月のアース・モンダミンカップで優勝。夏にはすでにメルセデス・ランキング首位に立っていた。
圧巻だったのは10月のNOBUTA GROUPマスターズGCレディースだ。初日から首位を一度も譲らない完全優勝。4日間で2イーグル、23バーディ、ボギーはわずか2つ。通算25アンダー、2位に11打差という“歴史的”圧勝で今季4勝目を挙げ、女王レースをほぼ決定づけた。
「スイング自体は悪くないと思っていたんですけど、ピンに行かなかったり、こすってショートしたり。アライメントのズレを修正できたのが良かった。課題にフォーカスして、いい集中力でプレーできた」
小さな「向き」のズレを徹底的につぶした結果が、25アンダーの爆発力につながった。
この勝利の後、師匠・ジャンボ尾崎のもとを訪ねると、「強くなったな」という一言が待っていたという。後に年間女王決定の報を受けた夜、「朱莉 年間女王おめでとう。1年を通じてほかの誰よりも強かったという証」と届いたメッセージを何度も読み返し、「すごくうれしい。一番うれしい」と声を上げて泣いた。
佐久間は「ジャンボさんのおかげで年間女王を取ることができましたと報告に行きたい」と語り、その関係性の深さをにじませた。