九州の無名大に潜む将来のバスケ日本代表 韓流コーチのユニークなスタイル、指導で開く未来

大島和人

大舘秀太(東海大九州)は日本代表入りを期待される大器 【撮影:石杜駿】

 Bリーグは関東大学バスケットボール連盟の出身選手が多い。その次が吉井裕鷹、川真田絋也を輩出している関西学生だろう。また日本代表レベルになると八村塁や渡邊雄太、富樫勇樹のようなアメリカ留学経験者の比率が上がる。2026年1月29日に開催される「Bリーグドラフト2026」の指名選手もNCAA組と関東勢が大半を占めるだろう。

 ただ現時点で大学バスケのトッププロスペクト(最注目選手)を何人か挙げるなら、東海大学九州キャンパスの大舘秀太は間違いなく入ってくる。彼は現在2年生で、今回のドラフトにはエントリーしていない。同チームは林翔太郎(ベルテックス静岡)、長野誠史(シーホース三河)といったBリーガーを過去に輩出している。もっとも関東、関西に比べて九州の大学は日の当たらぬ環境で、東海大九州も決して「有名校」ではない。

 大舘は2025年6月の西日本学生選手権で東海大九州の優勝に大きく貢献している、天理大との決勝戦(67◯64)は3ポイントシュートを11本中9本成功させ、46得点を挙げた。若手有望選手が参加する25年2月の「男子日本代表チーム ディベロップメントキャンプ」や、日本学生選抜にも参加している。200センチ・92キロのサイズと高いスキル、シュート力を持つオフェンシブな選手だ。

「日本にはいない」タイプの逸材

 東海大九州は秋の全九州大学バスケットボールリーグを制し、シード校として第77回全日本大学バスケットボール選手権大会(インカレ)に出場した。昨年はグループステージで天理大に敗れ、決勝トーナメントに参加できず敗退している。しかし今年は1回戦(12月3日/ラウンド32)で同志社大を90-77で退けている。2回戦(12月4日/ラウンド16)は大東文化大に69-83で敗れ、ベスト8入りは逃した。

 同志社大戦の大舘は3ポイントシュートを「11分の5」としっかり決め、合計41得点を挙げた。当然ながら3ポイントシュートは相手も警戒して消してくるが、そんな中で次の手を打てるのも彼の強みだ。同志社大戦はゴール下へのカッティング、ドライブを増やしてスコアにつなげた。相手はファウルで止めざるを得ず、大舘は1試合で16本のフリースローを獲得して10本決めた。

 元炳善(ウォン・ビョンソン)監督に「大舘は日本代表入りも目指せる選手だと思うけど」と尋ねると、「それはもちろん」という表情でこう語り始めた。

「5番(センター)じゃなくて、オールラウンドでできるようにしたい。走れて、スリーを打って、キャッチ&シュートがちゃんとできて、ミスマッチになったときはドライブができる選手です。日本代表には絶対必要な逸材だと思います」

 元監督は2012年の「FIBA ASIA U-18男子バスケットボール選手権大会」に、日本代表のアシスタントコーチとして参加している。そこで渡邊雄太、馬場雄大といった後の日本代表を間近に見た。

「(大舘は)彼らよりシュートタッチがすごくいい。それは生かしつつ、身体もちょっと強くなりました。あと彼のいいところは視野で、ものすごくビジョンが広いですね」

 大舘の最終到達点はどういうスタイル、どういうレベルなのだろう? 日本人選手の名前を我々が一人、二人挙げて元監督に尋ねると、こんな答えが返ってきた。

「今の日本には多分いません。僕がイメージしているのは長崎のイ・ヒョンジュン選手です」

 イ・ヒョンジュンは今季から長崎ヴェルカに加入した韓国代表選手。201センチのウイングプレイヤーで、11月29日のワールドカップ一次予選では中国代表から33得点を挙げている。ポジションと体格、スタイルは確かによく似ている。

強豪の徹底マークに苦しむ

田中流嘉州(左)とのマッチアップに大舘は苦しんだ 【撮影:石杜駿】

 もっとも2回戦は、大舘のシュート力を封じられてチームも敗れた。大東文化大は大舘に対して試合開始から田中流嘉州が「フェイスガード」で対応した。ボールを見ず、大舘にひたすら張り付く徹底したマンマークだった。

 田中は194センチ・94キロで手足の長さとパワー、機動力を兼ね備えた「3&D」(3ポイントシュートと守備を強みとする)系のフォワード。ドラフトにもエントリーしている今大会の注目選手だ。

 田中は試合後にこう説明していた。

「自分の役割は、大舘選手を止めることでした。最初からずっとフェイスガードでやりました。大舘選手にストレスを与えて、自分たちのブレイク(速攻)も出せました」

 田中は『ヒットファースト』で大舘に圧をかけた。

「身体を当てて削っていこうかなと思いました。あとボールをもらったときも前を向かせないようにして、シュートを消すことはずっと意識して守っていました」

 第1クォーターのスコアは9-26で、東海大九州は完全にオフェンスを壊されてしまった。それがそのまま最終スコア(69●83)に反映されたと言っていい。大舘は試合を通して3ポイントシュートを7本放ったが、すべて失敗だった。

 それでも大舘はドライブ、フリースローなどから25得点を奪っている。相手が詰めてきたら、その「逆」を突く動きができる。そういうプレーは生きていた。

 田中はこう分析する。

「セパレーションを作るのが上手な選手だと思うので、そこについていくのが今日はキツかったです。そこでスイッチしたら、もうすべてフィニッシュされたイメージがありました」

 大舘は試合後にこう語っていた。

「(相手のDFが)フェイスガードで来たとき、自分が逆にスクリーンを掛ける側になったり、そういう判断が抜けていたのかなと思います。昨日の試合だったら簡単にもらえたけど、1回バンプ(=進路と逆に押し込むコンタクト)を入れられたりして、自分の好きなようにさせてもらえなかった。そこは関東のチームのすごさで、徹底されているなと感じました」

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、バレーボール、五輪種目と幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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