紆余曲折の「52試合」を終えた町田 残る課題と、手にした意外な収穫

大島和人

町田は今季最終戦となるACLE蔚山戦を3‐1の勝利で終えた 【写真は共同】

 FC町田ゼルビアの2025年が12月9日に終わった。AFCチャンピオンズリーグエリート(ACLE)第6節・蔚山HD FC戦は3-1の快勝で、チームは東地区2位で年明けの残り2試合に向かう。リーグ戦は6日の柏レイソル戦(0●1)で既に終了し、6位で終えている。

 町田にとって今季のハイライトは11月22日の天皇杯決勝(町田 3◯1 ヴィッセル神戸)で、クラブにとっては初めての主要タイトル獲得だった。

52試合で得た経験値

 町田は2023年に黒田剛監督が就任してからJ2優勝、J1の3位と躍進に成功していた。ただ2025年は過去2シーズンにない過密日程を経験している。ルヴァンカップ2試合、天皇杯6試合、ACLE6試合を加えると、年間の消化試合数は「52」にのぼった。キャプテン昌子源はこのうち50試合に出場し、味方の負傷による緊急出場などを含めて4450分もピッチに立った。

 警告は57回(リーグ4位)から51個(6位)に、ファウルの回数は542個(2位)から473個(4位)と少し減っている。セットプレーで時間を稼ぐと批判されがちな町田だが、2025年のアクチュアルプレーイングタイムは51.32分(13位)で柏レイソル以外の上位勢よりは長い。

 それ以上に大きな変化はメンバーと布陣だ。昨季途中に相馬勇紀、中山雄太が加入し、今季も岡村大八、菊池流帆、前寛之、西村拓真らが移籍してきた。[3-4-2-1]の布陣を取り入れ、消化していった。

 黒田監督はこう振り返る。

「就任から1年ずつ、テーマを変えつつ、やることを増やしてきています。今年は公式戦11連勝、リーグ戦は8連勝した一方で、3連敗の厳しい時期もありました。連勝を重ねて成長できたときもありましたし、大きく失点した川崎戦(8月31日/3●5)みたいな悲劇から成長できたところもあります。それはクラブの経験値として残っていくものだと思います」

紆余曲折と取りこぼし

8月31日の川崎戦は5失点を喫している 【(C)J.LEAGUE】

 町田にとってかなり「波」の高い、紆余曲折の激しいシーズンだった。J1は第9節の時点で首位に立っていたが、第10節・浦和レッズ戦(4月13日/0●2)から3連敗。その後も勝ち点を伸ばせず、第16節終了時点で鹿島アントラーズとの勝ち点差は「13」まで開いた。

 逆に6月11日の天皇杯2回戦(町田 2◯1 京都産業大)から8月20日のガンバ大阪戦(3◯1)まで公式戦11連勝も飾った。しかし第27節・横浜F・マリノス戦(8月23日/0△0)以後のリーグ戦11試合は2勝5分け4敗と苦しみ、首位を追撃できなかった。

 ACLEは現在12チーム中2位と悪くない戦果を残しているが、取りこぼした試合が6試合で2つある。第2節のジョホール・ダルル・タクジムFC戦は圧倒的に試合を支配しつつ、PK失敗もありスコアレスドローにとどまった。第4節のメルボルン・シティ戦は開始早々のオウンゴールで失点し、その後追いついたもののアディショナルタイムに勝ち越されて敗れた。

 蔚山戦後、昌子はこう語っていた。

「最初のジョホール戦もそうですし、僕のミスがあったメルボルン・シティ戦もそうでした。『このチームに引き分ける、負けるのはちょっとキツいよ』と思いつつ、勝負どころで上手さを発揮されて落とした、引き分けた試合です。そういうところも来季に向けてやっていく一つの反省材料かなと思います。メンバーの変わる可能性もある中で、そこから『強い町田』をもう一回築いていかないといません」

タイトルはつかんでも、満足は無し

西村は相馬とともに攻撃を引っ張った 【(C)J.LEAGUE】

 良いときは素晴らしく良かった。一方でどこかに脆さがあり、試合もシーズンも「悪い流れ」をすぐ断ち切れなかった。それが2025年の町田だった。

 負傷者、強行日程といったマイナス要素は確実にあった。ただ町田がJ1で毎年上位争いをするような存在を目指すなら「悪い条件下でも結果をもぎとる」したたかさが必要になる。試合をコントロールして「勝負の際」を制するーー。J2では発揮できていたある種の“老獪さ”だが、J1やACLEは話が違った。

 西村は2025年をこう振り返る。

「タイトルを目標に掲げていて、そこは一つ獲れましたけど、誰も満足していない雰囲気です。本当にまだまだ成長段階だと思っています。もっと強くなれると思うし、もっと強くしていかなくちゃいけない。ある程度のベースは自分の中でも見つかってきていますけど、もっと怖くなれると思っています」

 町田は「96年世代」に主力が集中している。2024年夏以降に獲得した西村、菊池、岡村、中山、相馬はいずれも1996年4月〜97年3月に生まれた同学年世代。2026年、27年にピークが来る編成をしているとも言える。

 原靖フットボールダイレクターは開幕前に「主力をある程度は固定して、阿吽(あうん)の呼吸が生まれるようにする」というテーマを口にしていた。そこはある程度まで果たされていると言っていい。例えば相馬と中山、林幸多郎の左サイドはポジションのローテーションなど、既にかなり高度な連携が築かれている。

 とはいえ精度、練度と「伸びしろ」は残っている。今季の町田は相馬が9得点10アシストと存在感を示し、西村も7得点と悪くない結果は残した。しかし21得点を挙げて鹿島の優勝に貢献したレオ・セアラのような「強烈な得点源」は出現しなかった。上を目指すなら得点に関わる精度、クオリティのもう一伸びが必要となる。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、バレーボール、五輪種目と幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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