【月1連載】ブンデス日本人選手の密着記

最下位マインツで孤軍奮闘する佐野海舟 W杯抽選会当日に語ったチームへの苦言と決意

林遼平

川﨑の加入によって得た落ち着きと刺激

12月7日、元ウニオン・ベルリンのウルス・フィッシャーがマインツの新監督に就任。僚友・川﨑(左)とともに、ここから逆襲へと向かいたい 【Photo by Alex Grimm/Getty Images】

 苦しむチームに対して、モヤモヤとした気持ちを抱いていないわけではない。それでも、誰よりも長い時間ピッチ立っているからこそ、自分が何かを変えなければいけないともがき続ける。

 縦横無尽に走り、ボールを奪い、ラストパスを出して、シュートを狙う。チームメイトとコミュニケーションを取ることももちろん意識しているが、何より自分の背中で周りを奮い立たそうと懸命に戦っているのだ。

「勝てない難しさはありますけど、どの試合も前向きな姿勢や勝ちたい気持ちを自分は出しているつもりなので、それが伝わっていなかったとしたらもっとやらないといけない。自分がそういうプレーでもっと引っ張って、周りにいい影響、勢いを与えないといけないなと思います」

 もし、この状況が加入1年目の昨季に起きていたら、まだ右も左も分からないなかで精神的にも厳しかっただろう。

 ただ、今年はドイツでの生活に慣れたことに加え、普段から会話ができる川﨑の加入によって、ピッチ内外で気持ちを落ち着かせられる場所が増えたのは大きいはずだ。なかなか出場機会を得られずに苦戦している川﨑だが、佐野は彼の日々の積み重ねを間近で見ることで刺激を受けているようだ。

「彼としては(今は)自分のやりたいポジションではないかもしれないですけど、練習から毎日頑張っている姿は見ていますし、その頑張りが試合に出ていると思う。自分が言うことは何もないですけど、本当に一番近くで見ているので、いい刺激になります。彼は性格的に全力で毎日積み重ねていくような人。これからもっとチャンスをつかんでいけると思います」

 一方で川﨑も、「まだ海舟くんみたいに、ここで確固たる信頼を得られてはいません。誰が見てようが、監督がいようがいまいが、やっぱり毎日の練習からやるべきことをやって、まずはチームメイトの信頼をつかんでいきたい」と、1つ上の先輩の背中を見ながら、自身の成長に目を向けている。

少しずつ、我慢強く、成長するしかない

日本代表でも中心的存在となった佐野だが、来年のW杯に向けても、今はマインツでの厳しい現状を打開していくことに集中している 【Photo by Koji Watanabe/Getty Images】

 マインツがボルシアMGに敗れた日、前述のように北中米W杯の抽選会が行われ、日本代表はグループFで、オランダ、チュニジア、そして欧州プレーオフB(ウクライナ、スウェーデン、ポーランド、アルバニア)の勝者と対戦することが決まった。

 代表でも日に日に存在感を高めている佐野は、「どこが相手でも自分がやるべきことをやらないといけないと思います」と抽選結果について触れつつ、そのためにもクラブでの結果が何より重要だと説いた。

「まずは自分がそこ(日本代表)に入っていかないと話にならない。そのためにはマインツでどれだけやれるか。そういった面も含めて勝利しないと評価は上がらないと思うし、今は厳しい状況ですけど、少しずつ、我慢強くやらないといけない。成長し続けるしかないかなと思います」

 苦しむチームを救うような選手になりたい。クラブでも代表でも目標は1つだ。目の前に立ちはだかるマインツの厳しい現状を、彼自身の強い意志とプレーで打開していくこと。それこそが、W杯へと続く唯一の証明となる。

(企画・編集/YOJI-GEN)

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著者プロフィール

1987年生まれ、埼玉県出身。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることに。帰国後、サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の川崎フロンターレ、湘南ベルマーレ、東京ヴェルディ担当を歴任。現在はフリーランスとして各社スポーツ媒体などに寄稿している。2023年5月からドイツ生活を開始

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