「F1シート喪失」レッドブルが下した非情の決断 それでも角田裕毅は終わらない

柴田久仁夫

今年4月、レッドブル初戦となった日本GPに臨む角田(隣はフェルスタッペン) 【©Redbull】

受け入れるしかなかった決定

 レッドブルが来季のドライバーラインナップを発表し、角田裕毅のレースシート喪失が決まった。

 フェルスタッペンとのあまりに違いすぎる今季の結果を見れば、致し方ない決定ではあった。とはいえ5年前のF1デビューの際には「ついにF1を勝てる日本人が登場した」と、僕は大いに期待した。そう信じたファンも多かったことだろう。それだけに、今は本当に残念でならない。

 今季第2戦まで在籍していたレーシングブルズでの角田は、磐石のナンバー1ドライバーだった。その実力が買われたからこそ第3戦日本GPからレッドブルに昇格したわけだが、そこからは苦難の連続だった。角田自身が述懐しているように、第7戦エミリアロマーニャGPでのクラッシュがなければ、事態はここまで悪化しなかったかもしれない。そこで投入された新型フロアなどの改良パーツを壊してしまい、最新仕様で戦うフェルスタッペンとの差がいっそう開いてしまったからだ。

 その後はカタールGPスプリントのような光る走りを見せたこともあったが、首脳陣の評価を大きく上げるまでには至らなかった。何しろフェルスタッペンは角田加入以降の21戦だけでも、7回の優勝を含む13回の表彰台を獲得し、選手権2位につけている。一方の角田は7回の入賞で6位が最高。獲得ポイントは360ポイントに対し、10分の1以下の33ポイントに過ぎない。角田に代えて進境著しいイザック・アジャを昇格させるのは、その意味では当然の判断といえた。数字だけを見れば、そこに反論の余地はほとんどない。

なぜ、戻る場所は用意されなかったのか

来季は角田に代わりアジャ(右)がフェルスタッペンのチームメイトとなる 【©Redbull】

 ならば角田をレーシングブルズに戻し、再起を促す選択肢もあったはず。しかし、そうはならなかった。新人アービッド・リンドブラッドの抜擢は、早い段階からほぼ既成事項だった。そしてもう一人には、リアム・ローソンを残留させた。角田とローソンがレーシングブルズのチームメイトだった昨年終盤6戦、ローソンは予選もレースも角田に大きく負けていた。

 それでもチームは、ローソンを選んだ。今季前半こそ低迷が続いたが、中盤以降は安定して入賞を重ね、終盤にはアジャとほぼ互角の結果を出した。その辺りが評価されたのだろう。車体もパワーユニットも激変する来季は、角田のような、速さもありマシンセッティングにも長けた経験豊富なドライバーが適任と思うのだが、そこは考慮されなかったということか。

 昨シーズン終了時のレッドブルの第2ドライバー選択の際にも、選ばれたのは角田ではなくローソンだった。しかしローソンは今季開幕2戦で、悲惨な成績しか挙げられなかった(予選18、20位。決勝リタイア、12位)。だがそこですぐにレーシングブルズに降格されたことが、結果的に来季のシート確保に繋がったとすれば皮肉というほかない。逆に角田は、絶対王者フェルスタッペンと比較され続けたことで、F1ドライバーとしての価値を落とすことになった。

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著者プロフィール

柴田久仁夫(しばたくにお) 1956年静岡県生まれ。共同通信記者を経て、1982年渡仏。パリ政治学院中退後、ひょんなことからTV制作会社に入り、ディレクターとして欧州、アフリカをフィールドに「世界まるごとHOWマッチ」、その他ドキュメンタリー番組を手がける。その傍ら、1987年からF1取材。500戦以上のGPに足を運ぶ。2016年に本帰国。現在はDAZNでのF1解説などを務める。趣味が高じてトレイルランニング雑誌にも寄稿。これまでのベストレースは1987年イギリスGP。ワーストレースは1994年サンマリノGP。

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